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第20話 ニート、男の子に話しかけられる

ゴクゴク・・・。

最後の一滴まで飲み干した俺は茜と合流しようと席を立とうとした。


「あ、あのぉ」

何かすごく細々とした声が聞こえてきた気がした。

だけど、俺を呼ぶ人なんてこの場所には茜ぐらいしかいないと

思っていたこともあり、他の誰かに対する呼びかけだと思い、

気にせずに歩き出した。

とはいえ、俺がこの瑠美さんの人間関係を知っているわけでもないので、

もしかしたら高校以前の知り合いがいるという可能性はあった。


「あの!!」

俺が席から立ってから5歩ぐらい歩いていると、今度は大きな声で声をかけられた。

一瞬、俺のことを呼んでたのか。と動揺したが、

ここはさっきの声は聞こえていなかったものだということにして振り返った。

おそらく声の感じから察するに、瑠美さんと茜と同い年か、それ以下。

でたぶんさっきの挙動を見る限り、あのパッとしない感じの男の子だろう。



振り返った先にいたのはやっぱり、あの男の子だった。

声をかけた当人であるというのに、なんとも情けなくもじもじしている。


それにしても一体、この男の子は俺に話しかけてきたんだ・・・。

さっきの視線と言い、もしかしたら彼は瑠美さんのことを知っている人物なのか。

そんな考えが頭を過る。


それか、学校での罰ゲームでナンパとかの類なのか。

2通りの考えがほぼ同時に頭を過った。


しかし、そのどちらもが俺の警戒心を強めるのには容易い要因となった。

もしも前者であれば、考えられる関係性は中学以前での同級生・

先輩後輩・幼馴染・恋人くらいなものだろう。

ただ恋人という線はなさそうな気がする。


そして後者であれば、問答無用で拒絶しなければいけない。

罰ゲームでさせられているのであれば可哀そうなことこの上ないが、

そんな彼の事情は瑠美さんの今後には何ら関係のない事情だ。

見ず知らずの男にナンパされてホイホイついていくという

汚点を付けるわけにはいかない。


(さぁ、どっちなんだ?)

俺は瞬時に身構えた。

彼が発するであろう言葉をシュミレートし、その最善解を準備した。


「あ、あの!!僕も一人でここに遊びに来てて・・・。

も、もしよければ一緒に遊びませんか?」

その言葉を聞いて納得した。


この男の子は俺、もとい瑠美さんをナンパしに来たのだと・・・。


ナンパだというのならば、答えは容易い。

「無理」か「いや」と言葉を発するだけでいいのだから。


俺は考えていた通りに行動に移そうと彼と視線を合わせた。

しかし、その選択は間違っていた。


目を合わさずに言えば、良かったのだと後で後悔した。


彼は渾身の力を振り絞って先ほどの言葉を発していたようで目に涙を浮かべていた。

そんな表情を見せられては、断りづらくなるじゃないか。

だけどここで断らないと瑠美さんに汚点が付いてしまう。


俺はしばらく葛藤した。


しかし・・・。

彼は俯くと「や、やっぱり無理ですよね・・・。ごめんなさい。」

と言って涙目のまま去って行こうとした。


その瞬間、俺の脳内にあった天秤は崩壊した。


「ま、待って!!いいよ!一緒に遊ぼう!」

俺は逃げるかのように走り出そうとする彼の手をぎゅっと掴むと、

そう口に出してしまった。


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