第11話 ニート、想定外の事態に・・・。
俺は今までの人生で1,2を争うかというほどに頭を回転させた。
この絶望的な状況を打開するための案を必死に振り絞った。
目を瞑りながらスカートを降ろして、体操着を着るか。
これと同じ方法でトイレは打開することが出来た。
だがしかし、それはトイレという密室空間で行ったことであり、
あの空間の中には自分しかおらず、そこでどんな不自然な行動を取ろうが、
それを認識する者はいない。
だからこそ、できた行動であり、今のように友達が近くにいるという状況の中で、
突然目を閉じ、着替えをするという不可解極まりない
行動をすることはなかなかに容易ではない。
ならば、どうするのが得策なのか。
スカートの上から体操服を着用して、後でホックを外し、
引っ張り出すという策もある。
だが、これもまた不自然な行為に違いない。
先ほどから目の端に入っている彼女たちの着替え方は
ごくごくシンプルなもので、スカートをまず脱いでから、体操服を着用していた。
これが彼女たちの普通の体操服への着替え方であり、
ごくごく自然な動作を取っている。
おそらく、この体の持ち主である瑠美も同じ着替え方をするのではないか。
だとすれば、ここで変にいつもと異なる着替え方をするのは得策ではない。
俺は悩んだ。
このまま時間だけが過ぎて、体育が終わってくれればいいのに。と密かに願った。
そんなことを考え悩んでいると、キーンコーンカーンコーンという音が響いた。
「あ、やばいよぉ。予鈴のチャイムが鳴っちゃったよぉ」
茜のその言葉と共に、その音が予鈴であることを俺は知った。
そして、その言葉を言った茜と上山さん、唯は既に着替え終わっている。
普通に考えれば、彼女たちが今から体育の行われる場所に向かえば、間に合うはずだ。
それに彼女たちがこの場から立ち去ってくれさえすれば、
俺は先ほどまで考えていた案を行うことができ、ギリギリ間に合うかもしれない。
ただ一つ、問題があるとすれば、体育の行われる場所までの道のりが
分からないということだけだろう。
俺は早々に彼女たちをこの場から立ち去らせるべく、口を開いた。
「みんな。私のことはいいから、先に行っておいて。必ず追いつくから。」
よし、言えた。
少しゲーム内で主人公が言うような台詞になってしまったが、これでいい。
これで彼女たちがこの場から離れてくれれば、俺は着替えることができる。
俺は彼女たちがこの教室から出ていくのを静かに待った。
しかし、俺の計算は友達想いだった彼女たちによって、狂わされる。
「それはダメよ。瑠美、あなた今日は体調が悪いんでしょ。
そんなあなたを置いて、私たちが先に行くのなんて、考えられないわ。
一緒に行きましょ」
「そうだよ!るみぃ。途中で倒れちゃうかもしれないじゃん!!」
「そぉそぉ!!それにるみちゃん、後は下だけなんだし、すぐだよぉ」
彼女たちの心配してくれる言葉の数々は単純に嬉しかった。
こんなにも友達想いの友達がいて、
本当にこの瑠美という少女はいいな。とも思った。
だけど、この状況下においてその言葉は完全なる計算外であり、
俺の計画はあっけなく瓦解する羽目になった。
このままでは4人揃って、彼女たちが怖いと言っている
体育の先生の授業に遅刻しかねない。
それだけは避けなければならない。
俺は心を鬼にして、彼女たちに先に行くよう促す言葉を発しようとした。
その瞬間だった。
いつの間にか俺の間合いに入っていた茜の手が俺のスカートに手をかけたのは。
俺は瞬時に茜が取ろうとしている行動を理解した。
だから、俺の手は彼女の手を止めるために伸ばした。
しかし、その選択を脳が下した時には、時すでに遅しだった。
茜のその手は無情にも俺のスカートをずり降ろしていき、
彼女の手に目線を合わせていた俺の視界には当然のように瑠美のパンツが現れたのだ。
(白のレース・・・。)
そこから先の記憶はない。
パンツを目にした瞬間に、俺の思考回路はショートし、
あっという間に俺の視界は暗闇に覆われたのだから。




