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第10話 ニート、凄まじい葛藤に遭う

俺の心はもう発狂しそうだった。

俺が常日頃から理想としている胸が目の前にあり、その胸を自分の思うままに

触ることのできるこの夢のような状況は全人類の男性が

羨望の眼差しを向けるシチュエーションだ。

できれば、見たいし触りたい。それこそ愛でるように優しくだ。

しかし、この体は俺のものではない。

入れ替わってしまった女子高生のものであり、

俺なんかが簡単に見ることも触ることも許されない代物だ。


それに加えてのこの絶望的な状況である。

これがもし、俺以外に誰も存在しない空間にいるのだとすれば、

きっとこの心のおもむくままに彼女の胸をじっくりと3分くらい鑑賞し、

指先の少しくらいなら胸に触れていたかもしれない。

だがしかし、現実というものは常に厳しい道を指し示すものなのだ。

俺の眼前には俺以外に3人の女子高生がいて、

彼女たちはこの入れ替わった瑠美の友達だ。

そんな状況の中で俺が彼女の胸を眺めていたり、

不自然に触るなんて行為をしてしまえば、

彼女の社会的地位や友達との友情が著しく毀損されてしまうに違いない。

これは、俺のためではない。彼女のこれからを守るため。

俺は心の奥底にこの欲情を封じこめる決意を固め、すぐに実行に移した。


自分でも驚くほどの速度をもって、ブラウスを脱ぎ去ると

そのまま眼前にあった体操着を掴むとその腕を入れる部分に

彼女の華奢な腕を瞬時に通した。

そして俺は顔をパッと上げると、3人の方を向き、笑みを浮かべながら言った。

「だ、大丈夫だよ!ちょっとだけぼ~っとしていただけだから。」


その言葉に安堵してくれたのか、

唯はそれ以上の心配の言葉をあげることはなかった。

そして上山さんと茜も安心したように止まっていた着替えを再開した。



さてと、俺も着替えを再開するかな。

俺の心はすっかり油断していた。

理想の胸という最大最強の敵と一騎うちのように挑み、勝利したのだ。

もう恐れるものなど、何もない。


はずだった・・・。

俺は自分の着替えを再開するために、

机の上に広がった体操服と脱いだブラウスを見る。

ブラウスはしわになってはいけないというのは

ニートの俺でも分かることなので、即座に畳む。

そして後は・・・。



あっ!!



俺は眼前に映っていた体操服を見て、またもや絶望の渦に引きずり込まれる。

俺がさっき着替えたのは上だけ・・・。

このことが意味することは一つだ。


そう俺が体育へ赴くために必要な装備の一つ、それは体操服の下である。

目の前にある体操服の下は何の変哲もない、

どこの学校でも使われるようなズボンタイプの体操服であり、それも長袖だ。

そこまでは別にどうってことはない。

俺だって学生時代にはこういう体操服に身を包ませ、体育に臨んだものだ。

当然、着方も知っているし、普通であれば体操服を着ること自体に

恥じらいを感じることも、ましてや罪悪感に襲われることもない。


だがしかし、問題はその結果ではなく、経過なのだ。

体操服の下に着替えるということは当然、今着用しているものを

脱がなければならないわけで。それは当然、その今、

着用しているものが隠してくれているものが目に入ってしまうことが予期される。


ここで一度、おさらいをしてみよう。

俺はこの瑠美という女子高生と入れ替わってしまった。

そして今から体育で、下も着替えなければならない。

下を着替えるということは、それが隠していたもの。

つまりパンツが目に入るというわけだ。

それも俺が慣れ親しんだ男物のパンツなどではない。可愛い女子高生のパンツだ。

まだ100歩譲って、下着の上から胸を見ることは許されるかもしれない。

だけど、女性の一番大切な秘部を覆い隠しているパンツを見ることは

どう考えても、してはいけないことなのではないか。


最悪の場合、逮捕されて罪に問われ、収監され得るほどの行為。

それを俺は体育という学校教育の一環のためだけに強制される。


俺の脳はすさまじい勢いで躍動し、警告音のように頭が痛くなっていった。

(この状況をどう打開しろというんだ!?)


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