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苛められっ子は覚えてる 悪口言われっ子は報復る

「それではこれより第5回美化委員会を始める」


相川は改めて美化委員専用になった室内を見回し、誰も異論が無いことを確かめた。

相変わらずの少人数。石田は担任に呼ばれていないが人数はいつも通りだ。


「今日の議題は」


「ちょ、ちょっと待てよ!」


榎木は今までそわそわしながら座っていたが、委員会が始まろうとした瞬間、椅子をならして立ち上がった。

相川は面倒くさそうに発言者へ視線を移す。


「榎木、後にしてくれないか? 委員会が終わった後でもいいんじゃないか」


「だから、なんで俺が委員会に参加しなきゃなんねーんだよ」


「榎木くん、美化委員でしょ?」


「そ、そうだけど、俺は保健室登校だぞ」


「そうだな、威張れる立場じゃないな」


「だから、なんで俺が委員会に参加すんだってこと」


「それは勿論美化委員用の教室を確保するためだ」


「なっ、俺のためじゃないのかよ!」


「委員会に来たら榎木くんになんか良いことあると思う?」


「無いな」


「帰りてぇ」


「駄目だ」


「じゃあどうすりゃいーんだよ……」


「榎木くん、もしかして用事あった?」


「い、いや、特に無いけど……」


「じゃあ委員会を始めるぞ。もう一週間も委員会活動出来てないからな」


相川は深いため息を吐く。

これまでの委員会は全くと言っていいほど相川にとっての活動をしていない。


「は、なんで?」


「9割がた石田関係だな」


「…………」


榎木は石田の名前を聞いた瞬間、顔から色が消えた。


「大丈夫?」


「…………帰る」


「帰っちゃうの?」


「あ、当たり前だ! 早く逃げねーと」


「いいのか? 帰ったら石田に吊るされるんじゃないか?」


「でも今日石田さん来れるかな」


「そ、そうだ、アイツはなんでいないんだ?」


「ああ、クラスメイトが骨折して……って榎木知らなかったのか?」


「知らねぇ。保健室の先生も普通にいたぜ」


「折ったのは腕らしいからな、あと顔面。自力で病院行ったって噂で聞いた」


「それなら私も聞いた。アイスを二つに割るようにポキっと」


「それで今反省文を書かされている最中だ。被害に遭ったのは石田の悪口を言っていた奴だ」


「す、素手かよ……」


「石田が鉄パイプか金属バットを持ったら剣道部でも太刀打ちできないという噂がある」


「榎木くん、大人しく委員会に参加してた方が良いよ」


「……(化け物だな)」


榎木が石田に対しての認識を改めて再確認した時、教室の扉が開かれた。


「ごめんねー大塚先生が厳しくってさー」


「お疲れ石田さん、まだ委員会始まってないよ」


「榎木のせいでな」


「……!(俺に振るなよ!)」


「あ、榎木本当に来たんだ」


榎木を不登校に追い込んだ張本人は軽い調子で声をかける。

言い知れぬ怒りが湧いてくるような気がしないでもないが、言えるわけがない。


「よ、よう」


片手をあげて石田に答える。ただし目は合わせられない。


「久しぶりに頭使って疲れたからジュース買ってきて、オレンジね」


完全にパシリ決定だった。


「わ、わかった(断ったら腕折られる)」


榎木は足早に教室から去って行った。

石田は少し驚いた表情をしながら扉の方向に視線を向ける。


「やけに聞きわけいいわね」


「(あんなこと聞かされた後だもんな)」


「クラスメイトの腕折ったって聞いたよ、停学になっちゃうの?」


「(それを直接聞くのか。上野、勇気あるな)」


「ううん、反省文書かせられただけ。新入早々大ごとにはしたくないんだって」


「それでいいのか?」


「良いんじゃない? あいつらこれで三度目だから」


「(前にもあったんだ)」


「(加藤、加賀、神崎、川島、貝塚、神林、上条、春日、河上、海藤、上村……多すぎて絞れないな)」


「(三度目って、俺もう後ねーじゃん!)」


オレンジが売り切れだったのですぐに戻ってきた榎木だったが、無いと怒られるのではないかと思い、扉の前でなすすべなく立ち止まっていた。

自然と教室内での会話も聞こえてしまい、榎木は頭が真っ白になった。

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