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臨時で行くよ(上)

いつもよりちょっと長いです。

書こうと思えば書けるのですが一応分けます。

ぶんぶんかつかつー

「それではこれより第4回臨時美化委員会を始める」


「始めんでいい」


石田はものすごく嫌そうな顔で相川を睨む。

ここはいつも美化委員が活動している教室ではない。

と言うより、今いる場所は学校の校門前で、時刻は朝の九時半。


「文句を言うな。というよりお前は遅刻してきたんだ、これが社会だったら即刻クビだぞ」


相川は昨日のうちにメールをした。

九時に校門前集合と送ったが石田は三十分ほど遅刻して先ほどようやく着いた。


「ふっ新人なら許容範囲内よ。ってかなんで今日学校に来なきゃいけないのよ、くだらねー内容ならぶん殴るわよ」


「お前の拳は凶器だ。おさめろ」


「あれ、そういえば上野って休日は部活があるんじゃなかったの?」


「うん、でも今日は曇りだから無いの」


「曇りだとないのか……何部だ?」


「山岳部」


「……なるほど(渋いな、テニス部だと思っていたが外れたか)」


「……そうなんだ(え、てっきりテニス部だとばかり思ってたのに……)」


「こんなに曇ってたら山の上は雨だろうからね」


上野は明るく活発で見るからにスポーツ少女のような見た目をしている。

外に出てするスポーツと言えばテニス。

ラケットを持ってコートの中を走り光る汗を流す上野を想像するのは簡単だった。

しかし上野がリュック背負って汗水流して山に登る想像は欠片も出来なかった。


「さて、みんなそろったことだし行くか」


「えー、休みなのに委員会するの?」


「当たり前だ。しかもこれはただの委員会じゃない、臨時委員会だ」


「何をするの?」


「決まっている。石田のクラスの不登校児である榎木にプリントを届けに行くんだ」


「げ、大塚に買収されたか」


「美化委員会活動週5の権利を手に入れた」


「賄賂かよ」


「正当報酬だ」


「それより石田さん、榎木くんの家がどこにあるか知ってる?」


「知らない知らない。だから帰ろ?」


「ちゃんと聞いてある。地図もある。帰ろうとするな」


「えーでもプリント持ってきてないし」


「その鞄は飾りか。どうせ昨日もらったプリントをそのまま突っ込んであるんだろ」


「ちっ」


「あはは、じゃあ行こうか」




地図に書かれていた家は庭付き一軒家だった。

ドアの脇に着いている名札にはきちんと榎木と書かれている。


「ここか」


「じゃあ……」


「石田さん、それはちょっと……」


石田はプリントを郵便受けに突っ込もうとしている。


「ちゃんと本人に渡せよ」


「えー」


「じゃあチャイム押すよー」


上野は言うのと同時にチャイムを鳴らす。

中から誰かがこちらに近づく足音がし、ドアが開かれる。

ドアを開けたのは榎木の母親と思しき少し老けた女性だった。


「はいはい、あら、もしかして翔くんのお友達?」


「違います」


相手に合わせてにこりと微笑みながら石田は即答した。


「えーっと、大塚先生に頼まれてプリントを届けに来ました。この中で石田さんが榎木くん同じクラスなので」


「そうなの。ごめんなさいねーうちのバカ息子のせいで」


「(全くそのとおり)」


言おうと思ったが相川に警戒されていたので心の中だけに留めておいた。


「大塚先生に手渡しするようにと、少し話がしたいので……中に榎木はいますか?」


「ええ、私はちょっと買い物に行ってくるのでゆっくりくつろいで行ってね。あ、翔くんのお部屋は2階の左端のほうだから」


そう言い、そのまま玄関から出て行ってしまった。


「大塚先生にはプリントを渡してこいってことしか聞いてないけど」


「そんなことだけで週5の権利が手に入れられるわけないだろ。榎木を学校に連れていくことが取引内容だ」


「何その闇取引」


「まあまあ、まずは行ってみよう? 門前払いされないといいけどね」


階段を上るとすぐに榎木の部屋は見つかった。

ドアに「翔くんのお部屋」と書かれた木の板が飾られていた。


「榎木ー、いるー?」


ここまで来た以上、話しかけないことには帰れないと悟り、石田は自分から声をかけた。

中からは返事が無い。いるとは聞いているので物音をたてないようにしているのだろう。


「榎木くーん、君は完全に包囲されてるよー。君のお母さんも今いないよー」


「その掛け声はどうなんだ? 実際包囲すべきは石田じゃないか」


「それもそうだね」


「ちょっと納得しないでくれる? ……そうか、全部テメーのせいだ榎木!」


がつがつと榎木の部屋のドアを殴る。


「な、なんでそうなるんだよ! わ、悪いのはお前だろ!」


中から返事が返ってきてぴたりと手を止める。

が、中にいると分かったらさらなる怒りを覚えた。


「テメー居留守使ってんじゃねーよ!」


「ひぃっ」


ガツンと石田はドアを蹴り上げた。


「石田さんって、こんな性格だったの?」


「相手次第だな。自分の名前を言った相手には容赦ない。それ以外はただのなれ合いと思ってる」


「そっか、だから相川くんは攻撃されないんだね」


「まあ中学では常識だったんだがな。まさか名前を言ってはいけない石田の名前を言う莫迦が高校にいるとは思わなかった」


「か、からかわれてる奴がいたらいじめのターゲットになってる奴だってふ、普通は思うだろ?!」


「それで榎木くんがターゲットになっちゃったってことね」


「ううぅ、うるせー! み、見た目からしておかしいだろそいつ! ピンク髪とかマジありえねーし!」




「ちなみに石田は名前の次に髪の色を馬鹿にされるとキレる」




「ぇ……え?」


「あららー」


上野が苦笑すると、石田はふらりふらりと後ろに下がる。

壁に背中がつくと、勢いよくドアに向かって走り、蹴り飛ばす。

ドアは一蹴りで開いた。開いたというより蹴られた所から真っ二つに割れた。


「ひっ、ば、ばけもの!」


榎木は部屋の隅に隠れるようにしていた。

先ほどまではドアに鍵をかけていたので入れないから安全と思い余裕があった。

しかし榎木を守っていたドアはいとも簡単に壊れてしまい、恐怖心を煽られる。








「よう、根暗不登校児」






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