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美化委員のあり方

「それではこれより第2回美化委員会を始める」


相川が一呼吸置き、異論はないか確かめる。


「ではまず今日の議題は」


「異議あり!」


「…………またお前か」


呆れた表情をして石田を見る。


「今日は木曜日よ! なんで委員会があるのよ!」


この学校において、各委員会は水曜日に開くことができる。

また、ほとんどの委員会は活動する時以外は開かないところもある。

だがどれほど忙しくても二日連続で委員会を開けるのは生徒委員会くらいしかない。


「確かにそうだが、毎週1回だけの委員会では議題をすべて話しあうことが出来ないだろ」


「え、美化委員ってそんなに活動あるの?」


上野は考える。

美化委員と言えば掃除、花瓶の水かえ……花壇の水やり。

三つしか考えつかなかった。


「あるに決まってるだろ、委員会なのに活動が無いなんてどこにあるんだよ」


「それもそうだけど、例えば?」


「ああ、今日は……と言うか本当は昨日から進めたかったんだが」


じろりと石田を見る。

石田はあまり気にした様子もなくお茶をすする。








「今日の議題は『人はなぜ死ぬのか』だ」








「…………」


「…………」


「なんだ、素晴らしすぎて声も出ないか」


誇らしげに相川は笑う。ただの人格破綻者だ。


「えっと、今さらだけどここって美化委員会だよね? 私間違えちゃったかな」


「じゃああたしも間違えたか……てか相川が間違ってんじゃない?」


「何を言う。俺が正真正銘の美化委員長だ」


「おい美化委員長、じゃあなんで『人はなぜ死ぬのか』っていう議題が委員会で出るのさ?」


「あまり頭の良い質問ではないな石田、人の死は永遠の議題だというだろ?」


「美化委員と関係ないと思います。美化委員長」


「なんだそこからして分からないのか、レベルが低いな。人の死は永遠の議題、永久に続く無限回廊。語りつくしても尽きることがない、これすなわち『美』!」


「…………(どうする?)」


「…………(無視でいいんじゃない?)」


相川に聞いてみたが何一つ理解できず、むしろ根本から大幅にずれていると思っても話しかけたくないと言う心理が働き、二人はお茶を飲んでまったりとくつろぐ。


「議論することでその美に近づいていく、すなわち美化委員。様々な哲学的論理を毎日議論し続ける素晴らしい委員会だ!」


どうだと言わんばかりに二人を見る。


「えー毎日あるのー? うざっ、哲学ってなに」


「平日だけだよね? あと私も哲学ってよく分からないんだけど」


「哲学を語らずに何が美化委員だ、お前ら何しに美化委員に入ったんだ。あと土日もあるぞ」


「土日は部活があるんだけど」


「あ、あたしもー。休日は布団から出られないんだ」


「なんだ、休日は石田と俺だけか……」


「無視しないでよ!」


「しょうがない、休日は無しにしよう」


「おい相川!」


「あとね相川くん、美化委員って言うのは哲学を議論する委員会じゃないんだよ」


「何を言っている。ならば上野は何をしに美化委員会に入ったんだ?」


「私は校内の清掃とか、花壇の水やりとかをするためだよ」


「……石田は?」


「なんだてめーさっき無視したくせに」


「いや、俺はもしかして勘違いをしているのかと思ってな。でも石田は俺と同意見なんだな」


「言ってないよ! あたしがいつお前と同じ意見を出したって? 思考回路が破たんしてる奴と同じ考えなんて出るわけないでしょ!」


「じゃあ石田さんも掃除好きなんだ」


「うん、清掃活動は好きだよ」


「嘘だな」


「嘘じゃないよ!」


「嘘と言うより言葉の意味が違うな」


「同じだよ」


「どういうこと?」


「学校で石田を馬鹿にするやつを排除する『清掃活動』が好きってことだ」


「…………」


上野は笑顔のまま固まった。想定外の清掃活動だった。

そんな上野の様子をわけが分からないと言うように石田は首をかしげる。


「上野も『清掃活動』、好きなんでしょ?」


日本人ではありえない、ピンクの髪をツインテールにした石田。

本来は似合わないであろうが何故かマッチしている容姿。

にこやかに笑いながら小首を傾げ、肩からサラサラと流れ落ちる様は天使のように可愛らしい。







だが、


「……ごめん、それはないわ」

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