表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/9

扇子が無い

「それではこれより第1回美化委員会を始める」


 真面目そうな雰囲気を放つ、この中で唯一の男子学生はホワイトボードに背を向けて言い放った。

 日に焼け過ぎて色素が抜けた茶髪をポニーテールにしている女子学生がホワイトボードに書き込む。


「ではまず『自己紹介』から始めるとしよう」


「異議あり!」


 ありえないようなピンク色の髪をしている女子学生が、肩より少し長いツインテールを揺らしながら音を立てて席を立つ。


「なんで自己紹介なんてしなきゃいけないのよ。あたし絶対名前言わないから」


「どうしたんだ? 名前くらいいいじゃないか、個人情報を聞きだしているわけではないのだし」


「嫌よ。あたしに名前を聞くと言うことはプライバシーの侵害に当たるわ」


「そうか、俺から言えばいいのか? 俺は相川哲也、この美化委員の委員長を務める」


「私は書記の上野良子……ってことであなたが副部長でいいかな?」


「……まあ人数少ないし、副部長は別にいいけど、あたしの名前は絶対に言わないから」


「……別に知ってるから良いけど、なぜそんなに拒むんだ?」



 

喜屋武日キャンディって西洋風の可愛らしい名前じゃないか。日本名は飴だけど」




「それが嫌だっつってんだよ!」


名前を言われ、荒く机を叩いて立ち上がり相川を射殺さんばかりに睨む。


「本名で呼んで何が嫌なんだ?」


相川は理解できない、というように首をかしげる。

そこへ上野がフォローを入れる。


「いきなり愛称で呼んだら失礼ってことじゃない? ね、キャンディス」


上野はにっこりと笑いながら手を前に出して握手を求める。

だが石田はその手をとらなかった。


「キャンディ・キャン●ィじゃないわよ! あなた結構失礼ね」


「じゃあアードレーでいいか?」


「お前は中学同じだろ! 石田だよ石田!」


「それくらい知ってるさ、あだ名をつけようとしてただけだ」


「名前が呼べないんじゃあ自己紹介してもねー……いっそのこと『例のあの人』とか」


「あたしそこまで悪じゃないから!」


「じゃあ『光成』なんてどうだ?」


「まず男じゃねーよ」


「じゃあどんなあだ名が良いの?」


そう言われると、石田は先ほどまでの突っ込みが嘘のように黙ってしまった。

というより、ものすごく真剣に考え込んでいる。









「……………………(レイン)









「………………は?」

「………………え?」


二人は長い沈黙のあと、同時に言葉を発した。

石田の発言が信じられず、頭だけでなく身体までフリーズしてしまう。


「雨って書いてレインね! かっこいいでしょ!」


当の本人は凄く気に入っているようで嬉しそうに呟く。

二人この瞬間以心伝心できた。


((センスのなさは親譲りか……))


「よ、かったね……これからよろしく…………石田、さん」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ