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第一章 4話目 家族の肖像

微妙に週一更新に間に合わなかった…


 心地よい微睡みのなかからゆっくりと意識が浮上する。

 ふかふかのお布団の感触に、もう少しこのまま寝ていたいような気分になるけれど、自分の顔のすぐそばに気配を感じてまぶたを開ける。

 

 途端に視界いっぱいに広がるキラキラまぶしい金色と銀色。


 エルシオーネ王国アンフォール侯爵家当主であるお父様と、その妻であり、アンフォール侯爵夫人のお母様が至近距離で寝ている私をのぞきこんでいた。

 光属性のお父様はリシェ姉様と同じ金髪金目、癒し属性のお母様は銀髪で銀の瞳だ。

 色合いも綺麗だが、完璧に左右対称に整った理想的な顔貌も、二人とも神様が贔屓して創造したとしか思えない美しさ。


 …もう慣れたけど、起き抜けのこの煌びやかさは何度経験しても心臓に悪いな…。


 目がはっきり見えるようになってすぐの赤ちゃんだったとき、初めてこれ(起き抜けに眩しい超絶美形のどあっぷ)をやられたときは、ひきつけをおこしそうになったよ…。


 うちの両親は私の寝顔を眺めるのが大好きだ。

 まあ、確かに子供の寝顔って癒されるよね。

 延々見てたくなる気持ちはわかるけど、ちょっと至近距離で見すぎだよ、と言いたい。言わないけどさ。

 両親に愛されているのをひしひしと感じるので、決して悪い気分ではないんだけど、キラキラすぎてびっくりするんだよ…。


 周囲を見回すと自分の部屋のベッドの上だった。

 そっか、お昼寝してたんだったな…。

 お昼寝は自室のベッドでメイドさんたちに見守られながらするけど、夜寝る時は両親の寝室で一緒に寝ている。なので、目覚めた時に自室にいればお昼寝していたのだとすぐにわかるのだ。

 ちなみにベッドはクイーンサイズ位の大きさ。今は転落防止の柵付きで、成長すれば柵が外される仕様となっている。

 子供にクイーンサイズって…と思ったけど、わざわざベビーベッドやキッズベッドを成長と共に用意するより理にかなっているかも。

 しかし、まだこんな広くて立派な自室ってまだ必要ないよね。

 居間と寝室に分かれてるんだよ?

 メイドや乳母が控える小部屋もついているんだよ?

 2歳児には無駄な気がしてならない。

 先祖代々、お屋敷の一族が住む区画にある家族用の部屋だし、その部屋数にもまだまだ余裕がある(一体どんだけ大家族が住むことを想定してこのお屋敷は建てられたんだ。大は小を兼ねるの精神??)ので、日本の狭い一般住宅での子供部屋事情とは違うんだろうけど。

 

 ここがお嫁に行くまではずっと私の部屋になるのだから、侯爵家としては広すぎるって事はないのだろうが、もと一般市民の感覚からすると自室が豪華すぎて落ち着かない気分になる。

 これでもだいぶ慣れてきたんだけど…。


「おとーしゃま、おかーしゃま…」


 目を擦りながら、起き上がる。

 庭からリシェ姉様に抱っこで運ばれてる途中までの記憶はあるんだけど、そのあとが曖昧だ…。多分部屋に着く前に寝落ちしたんだな。


「やあ、ティーア。よく寝てたね」


 多分、執務の途中で抜け出してきただろうお父様が、輝かしい笑顔で頬にキスをしてくる。


「でも、夜眠れなくなるからそろそろ起きましょう?」


 お母様も反対側の頬にキス。私も二人におはよう(?)のキスを返す。

 もぞもぞとベッドから降りようとする私をお父様が抱き上げる横で、お母様がそばに控えていたリリーとマルタに私の着替えの指示を出す。


 このあとお父様は多分執務に戻られるのだろう。

 そして、私は夕方まで一日の中で一番楽しみな読み聞かせの時間。

 昨日まで読んでもらっていた子供向け王国史は終わったから、今日からは違う本になるはず。どんなんだろう。楽しみ。

 高価な本ではあるけれど、流石は侯爵家、先祖代々集めた本が詰まった立派な書庫があるのを知っている。子供向けの本(教科書)もそこそこある。

 字もだいぶ覚えてきたので、早く自分一人で好きなように好きな本が読めるようになりたいな。

 バリエーションに期待は持てないけど、とりあえずこの世界の普通の子供が読んだら教科書にしかならない退屈なだけの歴史の本も、私にしてみればファンタジー小説と変わりないので、結構楽しく読めるのは僥倖だ。

 ファンタジーばっかりは飽きるけどね!しょうがない!



 

 私の今世での家族は、お父様とお母様、兄弟の一番上の16歳になる長兄のヴァロール兄様、長女のリシェリアーナ姉様に次女のシェスティリア姉様、そして私。

 父方と母方、両方のお祖父様とお祖母様も王都でご健在だ。

 この世界では結婚年齢が早いので、お祖父様お祖母様と言ってもまだ50代。

 一般庶民の平均寿命は大体60歳位(それでも地球の中世の平均寿命は40代なのだから優秀な方だと思う)だが、王侯貴族は魔法の癒しなどの恩恵をふんだんに受けられるので、現代日本の平均寿命位はあるんだよね。


 現在兄様は父方のお祖父様お祖母様と共に王都のタウンハウスに住んでいる。

 なんと“王太子様のご学友”をしているのだ。

 基本、貴族の子供はそれぞれの領地で家庭教師などを雇い勉強するのだが、王太子様と年齢も近く(兄様の方が一歳上)、親族でもある兄様は、将来の王を支える人材の一人として期待されていて、王宮で王太子様と共に最高の教育を受けている。


 そう、王太子様と親族なんである。続柄は従兄弟。

 

 実はうちのお母様は元エルシオーネ王国王女で、エルシオーネの宝玉と讃えられた姫君だったそうだ。

 今の王様の妹にあたり、社交シーズンに王都の舞踏会に参加したお父様に一目惚れ。お母様の猛アタックで二人は結ばれたらしい。

 今でも王宮の語りぐさになっているんだって。

 そういう訳で王都にいる母方の祖父母とは元王様と元王妃様。現在は王都から少し離れた風光明媚な場所にあるこじんまりとした離宮で優雅に隠居生活を決め込んでいる。


 兄様が領地に帰ってくるのは大体年に2回くらいの頻度。

 私が生まれた時にはすでに王都暮らしだった兄様は、それでも私をとても可愛がってくれていて、私が生まれる前は一度の帰省の滞在期間は2週間ほどだったとか。それが現在では1ヶ月程度滞在していく。

 お兄様はお父様そっくりの容姿なんだけど、属性は火の属性で、燃えるような紅い髪と紅い瞳が16歳ながら精悍さを醸し出している。金や銀も綺麗だけど、紅い色もとってもゴージャスなイメージ。

 属性はある程度遺伝によると考えられていて、兄様の属性は元王妃様である母方のお祖母様ゆずり。

 末の孫に会うために何度かこのお屋敷を訪れてくれているお祖母様も美しい目の覚めるような赤毛だった。

 こちらでは歳をとったからといって髪の色が褪せたり白髪になったりはしないっぽい。

 ついでに言うと、お祖父様は王家の伝統的な属性である光属性。お母様の癒し属性はお祖父様のお母様、私からすると母方の曾お祖母様からの遺伝なんだって。

 

 リシェ姉様は属性も容姿も完全にお父様似。

 逆にシェス姉様はお母様にそっくり。儚げで優しい美貌の癒し属性。


 でも、性格は実はリシェ姉様がお母様似でシェス姉様がお父様似なんだよね。兄様はお母様寄りかなぁ。


 楚々とした容姿に騙されるけど、お母様はお父様ゲットエピソードからも伺えるように、かなり男前な性格をしているし、お父様は凛々しい美丈夫だけど、柔和で穏やかな性格をしている。

 お父様については優しいばかりでは領地は治められないから、家族には見せない面も持っているのだろうけど…。



 とにかく私の家族は総じてみな美しく綺羅綺羅しい。

 容姿の事ばかり言っているようだが、私が知る範囲において性格も良い方なのではないかと思う。



 前世での私の家族は、ごくごく普通の日本人で、黒髪に黒目、顔立ちだって十人並み。

 両親は共働きで私と弟、妹の三人兄弟を愛情を持ってしっかり育て、全員大学まで行かせてくれ、常識を持った大人に育て上げてくれた尊敬できる両親だけど、そこはそれ。平凡を絵に描いたようなそのへんにいるおじちゃんおばちゃんだった。

 弟はそろそろ頭髪がやばくなり始めたサラリーマンだったし、妹は化粧で化けるおしゃれさんではあるがやっぱり普通の主婦。


 なので、初めはこの美々しい家族にとっても違和感がありました。

 こんなんお父ちゃんお母ちゃんや兄弟という生き物と違う!というね…。


 現在の家族全員、私を心から愛してくれているというのはとても良くわかるので、今ではやはりこの人たちも自分の家族なんだと実感できてはいるけど。

 

 さて、翻って現在のこの私、セラスティーアを客観的に分析しよう。

 属性は地属性。髪も瞳も濃い茶色、チョコレートブラウンって感じかな?

 顔立ち自体はやはりあの両親の子供だけあってパーツパーツは整っており、美形と言って問題ないだろう。

 ぱっちりとした二重の大きな瞳、小作りな鼻、形良い輪郭。ふっくらとした唇はバラ色で、頬も健康的に色づいている。

 日々メイドさんにバッチリお手入れされている髪はツヤツヤで、ふわふわナチュラルなウェーブを描いている。

 身体は2歳児なのでまだまだふっくらしているが、肌は白く、部位ごとの形も良く、バランスがとれている。

 単体で見ると、かなりの美幼女ぶりだと思うのよね。現代日本なら子役デビューからスターダムまで一直線でいけそうな。

 

 しかし、いかんせん他の家族たちが美しすぎ、色彩が派手派手すぎる。

 並んでみると、私一人だけ地味すぎるのだ。

 チョコレートブラウンって要は焦げ茶色って事だからね…。


 これってみにくいあひるの子状態だよね…。

 みにくいあひるの子だって、本来の白鳥の子ばかりのなかにいれば地味な色合いが目立たず、かわいい白鳥の子だと思うんだ。そんな感じ。

 

 どうやらセラスティーアである私は、地属性だった父方の曾お祖母様に似ているらしい。


 私としては前世の黒髪黒目の自分と色合いが似ているので落ち着くし、断然以前の自分よりも美しく先が楽しみな美幼女だし、地属性って私的には一番使い勝手が良さそうだしで大満足なんだけど。


 どうも貴族的には地属性はあんまり…らしいんだよね。

 

 庶民的には一番喜ばれる属性なんだけど。

 街生まれでも職人として大成しやすいし、農村生まれなら作物の出来に直結するんだから当然だよね。

 属性は遺伝によると考えられているとは先に語った通りなんだけど、一般庶民ももちろん属性をもっている。


 でもその力は貴族に比べて少ない事がほとんど。


 力の強さは色彩の濃度に現れる。濃い色を持っているものほど力が強いというとてもわかりやすい法則。


 なので、貴族でない人たちは濃度の違いはあれ、みんな白っぽい淡い色彩をしている。


 力を持つものが権力を握り王侯貴族となり、またその貴族同士が婚姻してきた結果なのだろう。


 たまにいきなり濃い色彩を持つ人物が農村部や街中の普通の家庭に生まれたりする事があるのだが、そんな時は神の加護の強い子供として、その地の領主である貴族の家に養子待遇で丁重に迎えられたりするので、ますます一般庶民には濃い色は現れがたくなる。


 ちなみに、突発的に力の濃い子供が生まれたりする事については、家系のどこかで貴族の血が混じっている先祖返り説と、突然変異説があり、先祖返り説の方がやや優勢。


 しかし、昨今ではそんな感じで地属性の子供が生まれても貴族の家には迎えられないこともしばしばだとか。もちろん、力の強い地属性の子供は実家で大切に育てられるので、そっちの方が子供にとっては幸せかもしれない。

 養子待遇だの丁重だの迎え入れるだの綺麗に言葉をつくろっても、結局は権力の取り込みの一環だ。

 子供を渡す家族だって大概は領主様に言われて泣く泣く手放すというのが本当のところ。


 私はまだ屋敷の敷地から出たことがないけど、お屋敷の使用人の中には庶民の方々も当然いる。

 私のごく周囲に仕えてくれているメイドさんや乳母やさん、執事さんや護衛さんは実は領地持ちでない下級貴族の人たちだったりする(メイドさんなんかは、上級貴族の家で行儀見習いの一環として働き、働きぶりにより、人柄に太鼓判を押されると紹介状をもらったり、時にはじかに紹介されたりしてお嫁に行く。たまに同じ下級貴族出身である、お屋敷で働いている男性と結婚したりする。実はこのお屋敷は出会いの場のひとつなのだ)ので、みんなそれなりに鮮やかな色彩だが、たまに厨房近くで見かける人の色は確かにあわ〜いピンクだったりして、それはそれでとってもキュート。おっさんだったけど!


 地属性が貴族的にあれな理由としては、色も地味だし、泥臭い感じがするし、地属性は植物の成長を早めたり、操ったり、土壌を豊かにしたり、土や石や地面を操って簡単に色々造ったりできるんだけど、そういうのは農民や職人の仕事であって貴族の仕事ではないんですって。

 石が操れるって事は鉱物とか加工できたりするって事だよ?!宝石の原石からあっというまに美しい宝石ができちゃうんだよ?

 私は超チート属性じゃん!って思うんだけどな〜。

 そういう鉱石を加工したりなんてのも貴族はしなくて、加工された物を購入するのが貴族なんだってさ。


 昔まだこの国が出来たてで、温暖な気候に広大な平野という農業に向いた土地でありながら、その平野は見渡す限り固い地面だった。

 まずは耕すところから始めなければならなかったその時代、地属性の人々はその真価を発揮し、農地を耕し、地を肥えさせ、道を整備し、鉱山を発掘し、鉱石を加工しと大活躍。

 建国の大きな力となり、「豊穣の属性」として尊重されたそうな。

 だからこの国の古い家系の貴族にはもともと地属性の血筋が多くいた。


 しかし、時代は移り変わり、広大なただの平野が広大な耕作地に変わり、農業国として安定している今、貴族が自ら農作物を育てる事はく、何かを造り上げることはない。

 貴族の仕事は領民の皆さんが頑張って作り上げた作物などを税として徴収し、流通させ、流通を管理し、あがった売り上げで領地を維持管理する事になった。


 そうなってくるとカラフルで美しい豊かな色彩を自らにもたらしてくれる属性がもてはやされ始めた。

 もともとこの国を建国した王の一族の属性が光属性だった事と、やはり輝く美しい色合いから光属性の貴族は婿にお嫁にとひっぱりだこで、その他にも希少属性で銀の癒し属性、ゴージャスな紅の火属性なんかも人気だ。

 そうこうしているうちに貴族の地属性はむしろめずらしいものとなってしまった。


 …いや〜、なんだかな〜、気持ちはわからないでもないけど、ミーハーすぎるだろ…


 これらの事実はキラキラ家族の中に一人だけ生まれた地味な私を憂いた周囲の人々が、私に理解できないと思っていたり、寝ていると思っているそばで、私の将来を心配しながら(主に嫁の貰い手。その心配はまだ早すぎじゃね?)語っている事からわかった事である。

 わかんないと思って話してるんだろうけど、実はヒアリングはかなり出来るようになってるんだよね…。

 発音はまだ難しかったり、単語の選び方がわからなかったりで、喋るとぶりっこするまでもなく舌っ足らずな2歳児相当の喋り方になってしまうので、演技っぽくならずに私としては助かっている。

 

 しかし、まあ、それってこの国は豊かで平和だっていう事だよね。いいことだ。 

 私は別にもてはやされなくたって全然いいしね…。

 むしろ地味にのんびり生きたいから好都合。

 心配してくれてるみんな、ごめんよう。


う〜ん、あらすじとタイトルを変えた方がいい気がしてきました。


一応書いておきたかった設定部分も大体書けたので、残りの設定はちらほらお話の中にちりばめる程度にしてストーリーを進めていくようにします。

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