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第一章 3話目 姫騎士

キラキラ家族そのいち登場です。

「ランランラ〜ンランランラ〜ンララララッラララ〜♪」


 今日はお天気がいいのでお庭でピクニックごっこです。

 お庭と一口に言っても大貴族のお庭をなめちゃいけません。前庭・主庭・中庭・奥庭と4箇所もあるんです。

 私が良く連れ出されるお庭は奥庭にあたり、人工的に作られた小さめの丘や池、庭の真ん中を流れる小川などがあり、ちょっと広めの運動公園のようです。

 そこへバスケットに詰めたお弁当や敷物を持ってきてお外でお昼ご飯を食べ、池や小川で遊んだりするのです。

 同行者は乳母のメリサと、メイドのマルタとリリー、メリサの娘で私と同い年の乳兄弟アーニャと、その兄の4歳児クルト、執事の娘で3歳になるリナ、料理長の息子で、お屋敷に住む同年代の子供たちの中では最年長の5歳児ヴァン。

 今のところお屋敷には私より年下の子供はいないし、ヴァンの上となると12歳の子になり、その位の年齢の子供はすでにこまごまとしたお屋敷のお手伝いなどして立派に働いているのです。マルタとリリーだって15歳と14歳ですしね。


 私の生まれたエルシオーネ王国は基本的に温暖で、季節の移り変わりはあるにはあるがゆるやかで、夏もそこまで気温が高くならず、冬もそんなに寒くはならない、過ごしやすい国です。

 今は少しずつ夏に向かいつつある季節で、動き回るとうっすら汗ばむ位のあたたかさ。


 外遊び用の簡素な生成りの膝丈ワンピースに素足、幅広のつばのついた帽子という格好の私は現在、浅くゆるやかに流れるビオトープのような小川に敷き詰められている石の中から、丸く平べったいできるだけ白っぽい石を、鼻歌を歌いながらごきげんで集めています。

 私の2歳児ぶりっこのお手本であるアーニャも一緒になって探してくれています。クルトとヴァンは少し向こうで水のかけあいっこ、リナは綺麗な色の石を集めているようです。

 本日の鼻歌はジ○リメドレー。

 前世で友人と2人で月一で10時間耐久カラオケをする位カラオケ好きだった私は、以前もそうだったように良い気分の時はついつい鼻歌を口ずさんでしまいます。

 たまに日本語で歌詞まで歌っている事もあるけど、周囲の人には幼児がでたらめな言葉を適当なメロディーにのせて歌っているようにしか聞こえないので微笑ましく見られています。いずれ歌詞をこちらの言葉に訳してやろうと思います。


「ごきげんだなティーア。今日のは何の歌だい?」


「リシェねえちゃま!」


 ふいにかけられた声に振り向くと、いつの間にか小川のそばに二人いるうちの上の姉、リシェリアーナが立っていた。

 女性ながらきりりとした端正な顔出ち、けれど唇は女らしさをあらわしてふっくらとつややか。光の属性を宿した髪の毛は、1本1本が光を放つかのように豪奢でキラキラしている。

 髪と同色の金の瞳を日光に煌めかせながら立つその姿は、家族として2年半暮らした今も見るたびに圧倒されてしまう美しさだ。


「おかーりなちゃい!」


 ぱちゃぱちゃと小川から飛び出た私はそのまま大好きな姉様に抱きつこうとして、はたと足を止める。

 水遊びをしていた私の手やワンピースの裾はびしょ濡れで、このまま抱きつくと姉様の服も濡らしてしまう。

 そんな私の躊躇を見抜いた姉様は凛々しく笑うと、両腕を開いて私にさしのべる。


「おかえりの抱擁をしてくれないのかい?大丈夫、この陽気だ、濡れたってすぐ乾く」


「ねーしゃま!」


 広げられた腕に今度はためらいなく飛び込む。

 リシェ姉様は御年14歳だけど、すでにけしからんプロポーションである。

 子供特権で存分に姉様の胸にしがみつく。ぱふぱふ。やらかい。

 本日朝から遠乗りに出かけていた姉様は乗馬服に身を包んでおり、カッコ良さ倍増だ。

 

 先ほどから形容詞が凛々しいとかカッコ良いとかまるで男性をさしているようだが、決して間違えている訳ではない。

 この上の姉は刺繍やレース編みといった多くの貴族子女に好まれる趣味には全く興味がなく、それらは教養の範囲でしか習得していない。男勝りで、乗馬や剣術などが好みの少し型破りなところのある人だ。

 貴族の娘は剣になど全く触れることがないのが一般的だ。剣術を習うなんてもってのほか。

 しかし、わが家ではその姉様の行動を許し、剣術の教師もつけている。普通の貴族の家なら許さないと思う。

 そうすると型破りなのは姉と言うより両親なのか?

 剣の腕前の方もなかなかのもので、社交シーズンになると王都で頻繁に開催されるパーティーなどにも、そこまで格式張ったものでない限りは男装で参加したりしているらしい。

 話し方や立ち居振る舞いも凛々しく「姫騎士」とか呼ばれて下手な殿方よりもお嬢様方に人気なのだとか。


 それなんて宝塚?いや、私もカッコイイ美人でナイスバディのお姉様は素敵だと思うけれども。


 姉様は幼い頃読んでもらった古の英雄王と王を支えた騎士たちの物語が大好きで、憧れていて、その騎士たちのような生き方を理想としているのだそうだ。

 王族の女性の警護に、準貴族である騎士爵階級の子女による女性のみの近衛騎士団があるので、できれば将来はそこに入隊したいらしい。入れないことはないだろうけど、そうなると上級貴族出身初の女性騎士だな…。

 しかし、普通はヒロインとして出てくる可憐な姫君とかに憧れないかな?やっぱもともと活発な子供だったのだと思う。


「あのね、いまの、おしゃんぽのうたなの」

「さんぽのうたか!確かになんだかうきうきするメロディだったな!ティーアは音楽の才能があるな」


 まぶしい笑顔で私を褒めながら抱き上げる姉様。

 すいません、才能があるのは久○譲大先生です…。


「何をしていたんだ?」

「いし、ひろってたの」


 私は手に握ったままだった石を姉様に見せる。

 姉様は私の手の中にある石を見、ついで小川の横にたくさん積んである同じような色と形の石を不思議そうに眺める。


「石を集めてるのか?」

「しょうなの」

「これで遊ぶのか…?おままごとにでも使うのかな…?ま、いっか。ティーア、そろそろお昼寝の時間だから迎えに来たんだよ」

「は〜い」


 姉様は不思議そうな顔をしていたが、幼児のやることだと気にしないことにしたらしい。

 マルタとリリーにこの場の片付けをお願いし、私を抱き上げたまま屋敷の建物に向かって歩き出す。

 私は遠ざかるマルタとリリーに集めた石も一緒に持ってきて、綺麗に洗っておいて欲しいと頼んだ。

 実はもうそろそろやってくる下の姉、シェスティリアの誕生日に、プレゼントとして手作りのものをあげようと思い立ち、そのための材料を集めていたのだ。

 私がお昼寝の時間と言うことは、この場にいた子供たち全員がお昼寝の時間だということだ。

 乳母のメリサもアーニャとクルト、ヴァンを呼び集めている。

 ヴァンとクルトはもうちょっと遊びたいらしく、お昼寝をしたくないとごねていたがメリサにかなうはずもない。

 姉様のやわらかいふかふかの胸にだっこされて運ばれる振動は、私を夢の世界に誘い始めていた。

家族一人目しか登場させられませんでした。

話が全く進みませんね。

しかし、これからものったりとしか進まない予定なんです…。

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