表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

そのショートカット、運営は想定してません!!!

作者: 朝霧おもち
掲載日:2026/05/10

「はい、というわけで本日の配信はこちら!」


俺は流華。

VWITCH(ブイッチ)でゲーム配信を行う配信者だ。


俺視界の右端に浮かぶコメント欄を見ながら手を振った。

配信タイトルは【世界最難関VRMMOを三時間でクリアするRTA】。


当然、コメント欄は荒れている。

まぁ、荒れない訳がないか。


『無理に決まってて草』

『まだ正式サービス三日目だぞ』

『ラスボス到達者すらいねぇ!』

『いつものホラ配信か?』


失礼な。俺は嘘だけはつかない。……多分だが。


「それじゃ、タイマースタート」


視界中央にカウントが表示される。


《00:00:00》


俺は初期スポーン地点から駆け出した。

東の塔を目印に、方角を確認する。


普通のプレイヤーなら町で装備を整え、チュートリアルクエストを受け、レベル上げを始める。

だが、RTA走者にそんなものは不要。


最初に向かうのは北西の崖。

そして、そのまま飛び降りる。


『?????』

『自殺RTA始まった?』

『終わったな』


地面に叩きつけられる直前、俺はインベントリから初期アイテム《硬パン》を使用した。

本来は空腹回復用のゴミアイテム。だが、このゲームには妙な仕様がある。


“食事モーション中は落下判定が一瞬だけ消える”。


つまり。


ドゴォッ!!


俺は凄まじい勢いで地面へ激突。

しかし、ノーダメージで着地した。


コメント欄が止まる。


「はい、崖ショートカット成功」


『なんで知ってんだよ』

『バグ発見者お前かーーー!!』

『修正されるぞwww』


「界隈ではryuka jumpって言われてますね」


『どの界隈だよーーー!』

『かっけぇかよ』


俺は笑いながら森を駆け抜ける。


VRMMOアーク・クロニクル

攻略組ですら未知のエリアだらけの超大型ゲーム。


だがRTA走者にとって重要なのは、“想定された攻略”ではない。


“最短で終わる方法”だ。


そして、開始から40分。


本来レベル50推奨のダンジョン《古竜墓地》。

数々の実況者が『死にゲー』として取り扱ってきた。


その所以は、触れただけで即死レベルの強敵だ。

クリアはほぼ不可能とされる。


普通なら。


「左壁走り六歩、ジャンプ、しゃがみ移動」


俺は迷いなく進む。


すると、徘徊していたドラゴン型モンスターがこちらに気づかないまま通り過ぎていく。


『なんで!?』

『敵AI壊れてる?』


「視線判定ですよ。このゲーム、モンスターの首の高さ座標に合わせて視界設定されてるんで、真下が見えてないんです」


『検証勢怖ぇよ』


そのまま俺は最奥へ到達する。

本来、複雑なギミックを解かなければ開かないはずの封印扉。


だが俺は壁に向かって走った。


「ここ、フレーム境界がズレてるんですよね」


障害物と壁の間で前後。

上手いことなったら…


こんなふうに壁抜け成功。


『はい?????』

『運営泣いてるぞ』

『BANされろwww』


残念ながら仕様だ。


公式が「不正ツール未使用なら問題なし」と明言している以上、これはテクニックである。


RTAとは、『開発との対話』なのだ。


やがて、開始から1時間23分が経過。


ついに俺はラスボス《黒皇ヴァルゼイド》の前へ到達していた。


世界初到達。


コメント欄の勢いは完全に壊れている。


『人類最前線で草』

『攻略組が泣いてる』

『こいつだけ別ゲーやってね?』

『待ってリスナーに運営チーム公式垢いるぞ』


だが、問題はここからだった。


ラスボス第二形態。


本来、多人数レイド前提の即死攻撃。


現時点での正規攻略は存在しない。


しかし。


「このゲームのボスAIって、“プレイヤーが避けられない攻撃”を撃つ瞬間だけ、一フレーム硬直するんですよ」


俺は剣を構える。


「つまり――そこが隙」


ボスが咆哮する。

世界が赤く染まる。


即死攻撃発動。

誰も見たことのないエフェクトが周囲に広がる。


その瞬間。


俺はメニュー画面を開いて閉じた。


たったそれだけ。


だが次の瞬間、ラスボスが空中で停止した。


『!?!?!?!?』

『バグった!?』

『今何した!?』

『メモメモ(´ω`*)』

『公式にメモられてる!?』



「メニュー開閉で敵AIのターゲット更新がズレます。で、即死攻撃だけ内部処理優先度が高いから――」


俺は停止したボスへ剣を突き刺す。


「無防備になる」


HPバーが一気に吹き飛んだ。


そして。


《ラスボス《黒皇ヴァルゼイド》討伐》

《ワールドファースト達成》

《クリアタイム:02:31:47》


静寂。


数秒遅れて、コメント欄が爆発した。


『うおおおおおおおおお!!』

『頭おかしい!!!!』

『これもうバグ発見RTAだろ!!』

『さぁーっ(・∀・)』

『運営が青ざめてるぞwww』


俺は椅子にもたれ、息を吐く。


すると運営公式垢から通知が飛んできた。


《緊急メンテナンスのお知らせ》


配信が大爆笑に包まれる。


俺は苦笑した。


「……まあ、RTA走者にとって最大の敵って、いつの時代も修正だからな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
緊急メンテナンス早すぎ笑 SAOの世界にこいつ降臨してほしい
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ