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#9-2 ザセルの研究とギフト

 

「ねぇねぇザセル様。いつになったらあのクソトカゲを殺しに行けるの?」


「しばしお待ちをネピアさん。前回の失態を取り返したい気持ちはわかりますが、まだ少し待ってください」



 同日──???



 えぇ〜とネピアは机に腰掛け足をパタパタとつまらなそうに上下させる。窓もなく、灯りは青白い蛍光灯だけ。部屋の中には怪しげな実験器具がいくつも並び、ごぽごぽと沸騰している液体の入ったフラスコをザセルは素手で手に取り、ため息をついた。


「まだもう少し改良が必要なんです」


「今は何の実験を?」


「耐熱細胞の実験ですよ。優也くんの対策です。私はともかく、ネピアさんもネイチさんもあのburn upとやらを直で受ければ死にますから」


「あぁあのザセル様の本命くんか。ネイチさんの息子さんなんだよね?」


 ネピアが後ろに立つネイチに話しかける。しかしネイチは何も返さない。


「あーあ。いつも通りの無口ですと。つまんないなぁ」


「元の性格が影響しているのかもしれませんね。変異させる前も静かな人間でしたから」


「え!私は私は?私はどんな性格だったんですか!?」


「ネピアさんは……どうだったかな。もう少し静かだったような気がします」


「えぇ、ダサーい人間ってこと!?良かった!ザセル様が変異させてくれて!」


 記憶はあるけど感情とか何も覚えてないからさ〜記憶を頼りに愛美が思ったこと想像するのも楽じゃ無いよ!そう言ってネピアは笑った。見たものの記憶は再生させられましたけど、感情までは私にも難しいですから。そうザセルは返す。


「優也くんには父親の甘い言葉を、鮫島海美さんには記憶から推測される思いの丈をプレゼントしたつもりだったんですが、どちらもあまりいい反応ではありませんでしたね」


「ね。特に海美なんて『お姉ちゃんの真意がわかって良かった!』って喜ぶかと思ったのに。愛海だって妹に真実を告げられてWin-Winじゃないの?」


「鮫島海美を底の深いプールに突き飛ばし、自分は別の出口に向かおうとしたところを見たので、間違い無いと思って事実を伝えれば喜ぶかと思いましたが……あの子も甘い言葉が良かったのかもしれませんね」


 ザセルは新しいフラスコを手に取って、棚の試薬を眺めている。試料室と書かれた表を指でなぞり、数が多いと愚痴を漏らした


「10年前の試料など、もう孤虎の細胞以外は捨ててもいいかもしれませんね」


「10年前のものまであるんですか」


「色々使えるんじゃないかと思って。あの研究所の人間をバラバラにしてとっておいているんです。貴方達の元になっている人間も特殊な液体で漬けておいたものを変異させたのですよ」


「あぁ!ザセル様お手製のね!コールドスリープ的な!」


「あれを使えば生理活性も落とさず昔のままで保存できるんです。それで細胞も」


 便利〜とネピアがザセルの手元を覗き込む。その表には何人もの人間の名前。10年前の日付のものもあればここ最近の日付のものも多く、頭についた《廃棄》のチェックボックスにはいくつか印がつけられてており、その他多くには《解体済み》に印が付けられ臓器別の保管場所が書かれている。


 その中で、チェックボックスに何も印のつかないとあるサンプル


「あれ?これって孤虎……優也?え、本命くんの体組織のサンプル……何であるの?」


「それは元々父親である孤虎利人が優也くん研究していたときのサンプルの残りですよ。当時の火事の影響で大分ダメになってしまっていますが、参考までに残しているんです」


「あぁそういえばそうでしたね。親が子供を実験台にって、何か闇深そ〜」


 ネイチに向かってネピアが揶揄うように目を細くし手で口を隠してわざとらしくコソコソとさて見せるが、ネイチは何も反応しない。それに呆れたのか、ネピアは大きくため息をついた。


「何で本命くんの細胞って大事なの?孤虎利人の体をもつネイチさんのだけじゃだめなんです?」


「はい。彼は特別な“ギフト”なので」


「ギフト……贈り物ってことですか?誰から?」


 要領を得ないネピアにザセルが微笑む



「神様から、ですよ」



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