#9-1 解決策とクエスチョン
「コトラ事件の一年後ぐらい、ワクチンを打つかどうかって世間で一悶着あったの覚えてる?」
「あぁありましたね。ワクチン打つ派と反ワクチン派ってやつ。今でもまだあるんでしたっけ」
9月某日───SCR本部、研究開発室2
「そうそう。あれひどいよねぇ」
「あれが、ですか」
的戸がサイズのあっていない白衣の袖越しに一枚のチラシを掴んで優也に手渡し、優也は自然とそれに視線がいく。どうやら特異生物の細胞に対して免疫を持たせるワクチンの接種を呼びかける国が出したチラシのようだ。
コトラ事件の後3年ほどで作られたもので、特異細胞の増殖を抑え、さらに死滅させられる効果があると言われてる。その一方で重い副作用や因果関係が明らかになっていないもののワクチンを打ったから死亡したという噂があり、賛否両論になっている。
「そう。じゃあ聞くけど、フレイムくんはワクチン打った方がいいと思う?打たない方がいいと思う?」
「……個人的にはですけど、打った方がいいんじゃないですか?だっていつ特異生物が現れるかわからないわけだし。ここ一年で出現回数もすごい多くなってるし」
「ふんふん。でも副作用もあるんだよ?もしかしたら死んじゃうかもだよ?」
そういうと優也はううんと悩む。それをみた的戸はにやりと笑った。
「それは……免疫がつく利益に対する代金だと思えば?必ず死ぬってわけじゃないし」
「ランダム副作用ルーレット!死亡もあるよ!って?いや〜渋いねぇ」
「じゃあ打たない方がいいんですか?」
「そうしたら特異生物に襲われた時に万事休す!細胞を埋め込まれたら死んじゃうね。最近特異生物の事件多いのに!」
はぁ?と言いたげな優也の顔を見ていよいよ的戸は吹き出す。そりゃ、そうなるよね。うん。と笑う的戸になんなんですかと不機嫌になる優也。
「どっちが正解なんですか?」
「どっちも間違いだよ」
え、と優也が驚く。
「打った方が良かったか打たない方が良かったのかなんてさ、その個体が死ぬまでわからないんだよ。良い悪いなんてやってみないとわからない。」
例えばさ、と的戸が指を一本立てる
「0.1%の確率で死ぬワクチンがあったとしよう。ここでクイズだ。このワクチンをフレイム君が打って死ぬ確率は?」
「0.1%でしょ」
「ブッブー!ノット正解!」
両手で大きなバッテンを喰らう優也は呆れたようにため息をついた
「何でですか。0.1%で死ぬワクチンなんでしょ?」
「そうだよ。でもそれは、普通の健常人が大半の母集団にとっての0.1%だ。じゃあ君みたいな特異生物だったら?リスク因子が嵩めば確率はもちろん違うさ」
「はぁ」
「死ぬ確率は0.1%。でもその0.1%に君が入る確率はまた別物だ。これはやってみないとわからない。だからそもそも、打つのが良い悪いなんていう議論自体が不毛だね」
「元も子もないですね。結局利益をとるか副作用をとるか、自分次第ですか。」
「そう。周りが何を言おうと結局は自分の選択次第。じゃあ本題」
的戸は席を離れ、別の机の上にあるトレーを持って席に戻る。トレーの中にはいつもの変身シリンジがはいっているが、普段とのは違って赤いハザードマークが入っている。
「『コレ』を完成させればほぼ間違いなくフレイムくんの力になる。でも、被験者番号1番は君であって君しかいない。何が起こるか、僕ちんにも予想がつかない」
「やってみないとわからない」
「その通り。さてフレイムくん、君はどうする?」
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#9 solution
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