#2-5 騒がしい記者
『こちら狛坂、龍斗さん隠れて!』
「っ!?」
反射的に団地の隣にあったマンションの影に隠れる。何だ?まさかまだ蟻が?
冷や汗をかきながら壁に背をむけ、団地跡の方へそっと顔だけ出す。……ここからじゃなんもないみたいだけど?
『近くに生体反応!これは…特異生物じゃなくて、人間ですね』
「一般人?」
『一般人の避難誘導で逸れたのか元々避難していなかったのかわかりませんが、今鉢合わせると面倒なことになります。一般警官を行かせて立ち退かせますので、龍斗さんはそこで待っててください』
「了解」
まぁ、何でお互いいるのってなるし、事情はぐらかそうにも言い訳が苦しくなるし。何より優也が静かに寝てるんだから邪魔しないでほしいし。
団地の隣のマンションのエントランスの中へ入り、外からは見えないような場所へ優也を降ろす。やっぱり何度見ても酷い怪我だ。出血は止まっていない。
「ここが……戦闘してた場所か?」
「!」
突然聞こえた声に口元を押さえて壁へピタリとくっつき隠れる。なんだ、誰だ?
声の主の足音はどうやらエントランス前を通りがかったみたいだ。音の方向からして団地の方に歩いて行ったみたい。……ちょっと見てみるか。
優也を置いてマンションのエントランスを少し出る。さっきと同じように壁からそっと頭だけを出して団地のあった方をみると、そこには1人の男性がいた。
頭は明るいブロンドヘアーで手入れがされていないのかぐしゃぐしゃだ。緑色のTシャツにクリーム色のパーカーを羽織り、下は茶色のスラックス。首には高そうなカメラが提げられていて、大きな斜めがけのパンパンになったバックから新聞が溢れ出し、さらによくみるとパーカーのポケットからはメモやら領収書やらがこんもりと詰まっている。あ、なんか落ちた。
横顔だけど、その真っ赤なフレームの丸メガネとそばかすは見える。なんかいかにも記者って感じのやつだな。
「暑いな……あ、さっきの炎の竜巻の影響か。ふむふむ。きっと大規模な特異生物どうしの戦闘があったに違いない!さてさて写真を一枚パシャリ、と。うん。いい写り!」
一人ごとのうるさいやつだな。おまけに動きまでうるさい。
「でもこれ、炎の特異生物意外にも、角とか牙とかの特異生物もいるよなぁ。どんな戦いだったんだろう。てか何で戦ってたんだろう。絶対先日の銀行強盗の爆発といい今回の竜巻といい、同じ特異生物が関わってるはずだけど……」
おぉ意外と筋がいい。やるなぁと音を立てないように小さく拍手する。
実は前回の銀行強盗の時の焼却は、銀行強盗の爆弾だと報道されている。
あの時特異生物を目撃した人には、あの場にいた警官と銀行強盗犯が用意していた爆弾によって特異生物は制圧されたと伝えられているらしい。なのに、こいつはどっちも同一の特異生物が関わっていると勘付いている。さすが記者っぽいだけはあるな。
すると向こうから警官がやってくる。連絡にあったやつだろう
「おい!そこの君!危ないだろう!」
「げげっ警察!?な、なんですか今僕は正義の取材をしているところなんです邪魔しないでくださいてか聞いて驚いてください僕はですね情報雑誌『truth』の執筆者である岸谷」「ええいうるさい!こっちに来なさい危ないから!」「ぎゃあああ国家権力の横暴だー!!報道の自由をー!報道の自由をー!!」
ずるずると引きずられていく記者っぽい人。いや、岸谷さん。記者の岸谷ってなんかのギャグか?
興味本意で2人が去ったところで岸谷さんの落とし物を拾いに行く。見るとくしゃくしゃになった名刺みたいだ。《岸谷 真(Kishiya Makoto)》。自分の名刺か。くしゃくしゃにすんなよ。
『こちら狛坂。送迎車ポイント到着。龍斗さんは優也君を連れてポイントまでお願いします』
「お、りょーかい。すぐ行く」
マンションのエントランスの中に戻ると、出血が止まったらしい優也がすやすやと眠っていた。もうここまで回復したなら命の心配もないな。ホッとしながら起こさないようゆっくりと抱きかかえてすぐ近くのポイントまで歩いて行く。てか、
「優也も大きくなったなぁ」




