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SCR -Specific mutant Cells organism Rangers-   作者: none
#6 夢のありか
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#6-5 あなたの夢は

「では、この方針でいきます」


「いいんじゃない?まぁ僕ちんには及ばないけどね!」


「全く問題ないしお前に敵う奴はいないだろ、いいから黙っとけ」


 ふふんふふんと上機嫌な的戸先生はご自身のデスクに戻って色々な書類の束をまとめて外へ出て行った。何かの提出かな?


 対して嵐巻さんは白衣に着替えている。いや、え、背高いとは思ってたけど、スタイル抜群すぎない……?足はスラっと細くて長いし腰の位置高いし、体もめちゃくちゃ鍛えてる人の筋肉のつきかたで何より顔の彫りが深くてかっこいいんだよなぁ!


 男の俺でも嫉妬なんか通り越して尊敬してしまうぐらいにスタイルがいい。てかこれでイケメンって、どういうことなんだ……


「よし、じゃあ今日は細胞を起こしておいて、明日以降の実験準備するくらいか?」


「あ、は、はい!準備しておきます!」


「っふふ、違う違う。この研究のリーダーはあくまで来知だよ。俺はお手伝い」


 そう笑って実験の準備を着々と進めていく。すごく慣れた手つきだ。話には聞いていたけど、本当に研究者なんだな。いや研究者だった、の方が正しいのかな。今は特異生物なわけだし。てか特異生物が研究に参加ってそれ大丈夫なのか?


「あ、あの、嵐巻さん」


「龍斗でいいよ。どうした?」


「り、龍斗さん。龍斗さんは研究しても大丈夫なんですか?」


「ん?……どゆこと?」


「あの、いやその、特異生物ってその……」


「あー!そういうことね。俺が特異生物でも研究参加いいのは的戸の監視があるって体だからかな。一応」


「一応」


「うん。多分うまく誤魔化しているんだろうね。知らんけど」


「知らんけど」


 あはは!と笑う龍斗さんに困る。だ、大丈夫なのかなぁ


「大丈夫大丈夫。大体的戸がうまくやるよ。あ、もしかして研究できるのかって?俺だって研究者なんだよ?」


「あぁ、お聞きしたことあります」


「うん。色々論文出したり、若いながら結果残してきたんだから。ま、あの事件で全部台無しなんだけど」


「あ……」


「それでも今の仕事も楽しいからね。手のかかる弟と妹がいて!」


 ふふふと嬉しそうに笑っている。あのお二人と龍斗さんって兄弟なんだ?聞いたことないけど、だからいつも仲良しなんだなぁ。きっと何よりも大切なんだな、あのお二人のことが。


「さて、器具はこんなもんかな。あとは掃除と……何かあったかな」


「記録の準備ですね。ノートは確かこの辺りに」


 棚に並ぶノートを指でなぞる。えーとここら辺にあったような。

 ピタリとあるノートのところで指が止まる。



『研究記録No.3 橘 光莉』



「たちばな、ひかり?」


「ん?何か言った?」


「あ、あっいや、何も!」


 慌てて他のところへ視線を移す。あ、危ない。何か変な背徳感が背中を伝った


 優也さんは、龍斗さんが自分を光莉さんと重ねてるって言ってた。何をどう重ねているんだろう。突っ込むにはあまりに怖い話題すぎて聞けないけれど、好奇心がうずうずとしている。


「あはは、気になる?光莉のこと」


「はい……って!!あ!!」


 慌てて口を抑えても時すでに遅し。汗をダラダラ流しながら龍斗さんを見るとニコッと笑われた。


「優也じゃなくともこの距離なら聞こえるよ」


「あ、あの、すみません。ノートのところに名前が……」


「え?うわほんとだ。事件前の研究所時代のやつ!こんなのあるんだウケる」


「光莉さんも研究者なんですね」


「そうそう。結構優秀だったんだよ〜」


 そう懐かしげに光莉さんのノートのページを捲る。その表情はとても寂しそうで、指は愛おしそうにノートの綺麗な文字をなぞっている。遠い記憶に居るその文字を書いた主を想うようにゆっくり、ゆっくりと。


 あぁ、そうか。


 何も知らなくとも、わかったような気になった


「………コトラ事件ですか?」


「そう。あの日は俺と一緒にいたんだけど、俺を庇って死んだ。全く、何してんだか」


「そんな何してんだなんて」


「ん?あー違う違う。何してんだは俺自身に向けてだよ。婚約者1人守れないなんてね」


「こ、婚約者!?」


「そうよ?ほらこれ、婚約指輪」


 恋人とかじゃなく!婚約者!うわぁ何てすごい世界だ!自分にはない世界すぎて想像すらつかない。そんな存在も、……そんな何よりも大切な人を亡くす痛みも。


 服に隠れて見えていなかったネックレスを見せてくれる。そこには少し霞んだ指輪が掛けられていた。青のダイヤが嵌め込まれ、その部分は曇りなくキラリと光を反射する。あぁ、そんな。


「すみません辛いお話を聞いてしまって!」


「大丈夫。こんなことで落ち込んでたら光莉に『何ナヨナヨしてんの!!』って怒られちゃうよ」


「すごく明るい方なんですね」


「うん。何事も一生懸命で、真っ直ぐで。研究が大好きで熱心だった。夢を叶えるために」


「夢、ですか」


 光莉さんに重ねてないですよね?そう言った優也さんの言った意味が少しわかったような気がした。重ねて俺に同情してくれたんだ。


「そう。光莉の夢。光莉は子供の難病の研究をしてた。子供が本当に大好きで、少しでも病で苦しむ子供を減らしたいってよく言ってたんだよね」


「すごいですね」


「いつもいつも、夢で瞳がキラキラしてた。全部あの事件で台無しにされたけどね」


「…………」


「そんで優也に突っ込まれた時、実はギクッとしたんだよね。実際そうだし」


「えっと……?」


 ふふっとイタズラがバレたように龍斗さんが笑う


「似てるんだよ、その夢を追いかける目が。夢を追いかける人ってのにずいぶん弱ぇのよ、俺」


 パタン、と優しく光莉さんのノートを閉じて棚へと戻した。こんな辛気臭い話はやめやめ!と手をヒラヒラ振ってデスクの方へ行ってしまう。


 心臓がドクンドクンと鳴り出す。抑えきれない好奇心。あぁこういうところが自分の悪いところ。でも、どうしても抑えられないんだ


「あの!!」


「うわっ!?びっくりしたどうしたの」


 驚き振り向く龍斗さん。ええい言っちゃえ!


「龍斗さんの夢、龍斗さんの夢はなんですか!」


「え」


 龍斗さんが訳が分からないと言いたげな顔で困っている。いやそうだよなこんな初対面のそれも見習いなんかに夢聞かれるなんてそんなの、でも、あーもー!!どうにでもなれ!!


「自分はこのSCRに来て、初めはこんな国家機密の胡散臭いところで大丈夫かなってずっと思ってたんです。腕を買われたからきただけで。でも、みなさんの戦う姿を見て、あんな危険なこと、命張ってやってて!自分も一緒に戦いたいって思ったんです!!キラキラしてたんです!!なんでも無い自分に夢ができたんです!!」


「来知……」


「じっ、自分の夢は、2人の、いや3人の役に立つ研究を実らせることです!誰に何と言われようと、変える気はありません!!それ、それで、龍斗さんの夢はなんですか!!!」


 ふぅふぅと息を整える。言っちゃった……勢いのまま言ってしまった……こんなこと言うつもりなんかなかったのに、それも本人に!いやでも人に名前を聞くときはまず自分からって言うじゃん!!同じでしょ!?


 おそるおそる見ると龍斗さんがニコニコとこちらを見ていた。あぅ……ごめんなさい…


「夢、か。俺の夢ねぇ」


「あ、あの、いやその、すみません」


 龍斗さんが近くの壁に寄りかかる。伏せられたその目には、何が映っているのか


「研究が上手くいったら話してあげる。さて、準備終わらせちゃおうか」


「え、あ!」


 気がつけば時間が結構経ってしまっている。そんな長話したつもり無かったのに!


 そそくさと実験準備に入る。やばいやばい。いきなり残業なんてさせられないよ!

 そう焦る自分の後ろで龍斗さんが「いいよなぁ」と呟きながらどこか寂しそうな表情をしているなんて知らないままだった。


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