#5-4 崩壊
「SCR現着。捜索を開始します」
「あれ?ここってさっき行こうとしてたショッピングモールじゃん」
車から降りて傘を開き、ザァーっと雨が降る中でショッピングモールの入り口へ向かう。広大な敷地を視界に収めようと海美はキョロキョロと周りを見渡し、龍斗さんは狛坂さんからもらったリーフレットを読んでいる
「高級ブランドからプチプラまで多種多様なファションとインテリア、色々な種類の専門料理店に2つの大きなフードコートと食品館、車屋にその他色々雑貨店。あとイオソも入ってて選り取り見取り!これさえあれば買い物に困らないだろうね」
「外に繋がってるアウトレットもありますよ。1日じゃ回りきれなそうですね」
「うわーすご。こんなところにオルガーが?」
通報があったのは40分前。ショッピングモールの中でオルガーが現れた。被害者は数十名おりいずれもオルガーへと変異して当人は死亡扱いだ。焼却許可も下っている。
ショッピングモールの中へ入るとふわりとパンが焼けた香りが広がる。左手を見るとおしゃれなパン屋さん。右手にはこれまたおしゃれなカフェに、その隣には有名なカフェのチェーン店。……こんなに密集する必要あるか?
おいしそー!と店に引っ付く海美の手を引っ張ってとりあえず直進していく。てかパン屋の隣寝具屋って、なんだこのショッピングモール。雑多がすぎるだろ。
すると先を歩く龍斗さんが呟く。
「こんな場所にオルガーねぇ。何か変だな」
「え?なんで?」
「オルガーは基本森とか林とか、あと農場とか?自然豊かなところで見られるんだよね。こんなthe人工物ってとこには出たことない」
確かに。オルガーは植物が変異した結果の怪物だ。こんな人工物のところに自然に現れることはなかった。それに
「俺も不自然に思ってることがあります。今日偵察の時に後をつけられたんです」
「え?まじ?」
「当然撒きましたけどね。で、撒いた相手が記者だったんです。SCRは国家極秘部隊だし当然俺たちの顔は割れるわけがない。今までだって変身の時には司令部に周囲に人がいないか確認してもらっているし。でもなんで俺たちをつけていたのか。というか、つけることができたのか」
「なんで?」
きょとんと海美が首を傾ける。俺も確信はない、けど多分
「一般人が俺たちの正体に辿り着くことはない。なら、特異生物の協力があってこそだ。てことは俺たちを嵌めようとしている知能をもった特異生物がいる」
最近意思疎通のできる特異生物が出てきたのも関連があるのかもしれない。それにもっと気になるのは海美のいた高校、斗或高校での事件で聞いた名前。
『ザセル様ァ!!血ヲ取ッテキマシタ!!ザセル様ァ!!』
《ザセル》
何の名前なのか。狛華さんに調べてもらっても何のヒットも無かった。あの時のヒルはこのザセルというものに付き従っているような様子で、1番最悪なことを考えると、特異生物が組織的に行動している可能性がある。
「それこそ以前報告した《ザセル》というのが、水面下で何か行動をしているような気がしてならないです。今回のオルガー異常発生も、謎の記者も」
「謎の記者、ね。それって──」
「シャアアアアアアアア!」
「「「!!」」」
甲高い悲鳴がモールに響く。大きく緩やかなカーブの先に見えた、オルガーだ!!
「話は後です。とりあえず任務を終わらせましょうか」
「りょーかい!」「了解!」
「建物の損壊も気にしつつ、初めから全力で行きますよ」
俺を真ん中に3人横に並ぶ。ボタンを押して瞬時に形成されるミューテーターのソケットにシリンジを嵌め込みソケットをカチッとなるまで閉じる。
Flame!Ready for injection!
Storm!Ready for injection!
Spark!Ready for injection!
左腕を円を描くように反時計回りに前から体を半分右へ捻りつつ体の右後ろへと回し、右手でプランジャーに振りながら、捻った勢いで左手拳を前に突き出し、叫ぶ。
「「「change my feature!!」」」
一気にプランジャーを押し込んで、左腕を外側へ一振りすれば辺りに雷を纏った熱風が吹き荒れる。
Genes are promoted!
数瞬の後、視界が開ける。
「フレイム、変身完了」
「ストーム、変身かんりょーう!」
「スパーク、変身完了!」
ゴキっと拳を鳴らす。任務はオルガーの殲滅だが原因究明まで出来ればベストだ。
「俺とスパークは正面から行きます。ストームは回り込んで後ろから叩いてください」
「はいよ」
「SCR、戦闘を開始します」
足に体重をかけて低い体勢のまま飛び出し一気に距離を詰めて殴り込む。右、右、左のオルガーを殴り殺し、正面にいるオルガーの首を掴んでぶん投げてスパークの背後から襲いかかるオルガーを撃退しておく。
雪崩こんでくるオルガーに殴る蹴るを繰り返し、時には店の商品を燃やし投げ飛ばして数をどんどん減らしていく。数十分して奥から向かい風がビュンビュン吹いてストームが敵を吹っ飛ばしているところが見えた。意外とこの行列は短いらしい。ならさっさと終わらせよう。
「ストーム!風貸してください!」
「了解!!」
「スパーク、いくぞ」
「了解!」
ショッピングモールのフロアを満たすように横殴りの風が吹き荒れる!店の中だって逃げ場がないくらいだ。これでオルガーを取りこぼすことはない。
シリンジを取り出して腕に刺す
Burn up the mutation!
音声と共に体がゴウゴウと燃えていく。隣でバチンバチンと雷を溜めて発光するスパークがいた。
「──ファイナルフレイムアタック」
「噛みつけ運命!シャークガールスパーク!!」
その瞬間炎と雷が風にのって放たれ、オルガー達を一気に焼却していく。簡易巨大火炎放射、と前に名付けたら『直球すぎでしょ』と龍斗さんに笑われた技だ。いいだろ別に。わかりやすければ。
しばらく経つともくもくと立ち込める煙が少しずつ晴れていき、スパークと合流して残党への警戒をしているとインカムに狛坂さんの声が通る。
『こちら狛坂。オルガーの焼却を確認しました』
「ふー、今日も終わり!疲れたー!」
「任務はな。でもまだだ」
「ふぇ?」
「まだやることがある。狛華さん、さっきの──」
ゴゴゴゴ……
「──何だ?」
「え、何が?音する?」
「上からゴゴゴって」
何だ?何の音だ。音は広がっていきショッピングモール全体が震え、低い雄叫びを上げているようだ。見上げれば上からパラパラと瓦礫も降ってくる。いや待て。おい、まさか?
「おい……おい、おいおいおい!」
「嘘、でしょ……!?」
さっきのburn upの衝撃で上のフロアが壊れたんだ。龍斗さんがいるであろう方向からものすごい音を立てて上のフロアが落ちてきてる!?
「えぇっ!?そんな簡単に壊れちゃうの!?」
「言ってる場合か、逃げるぞ!!」
「えあっうん!!」
スパークを抱えて猛スピードで来た道を全力で走って戻っていく。真後ろから雪崩落ちてくる上のフロアの轟音とスパークの悲鳴が耳をつんざき背中に風圧を感じる。やばい。やばい。間に合わない!焦りで足がもつれそうになるがとにかく走る!
前へ、前へ、前へ!
「ふれ、ふれっいむ上、上っ!?」
「わかってる!」
最後目の前に立ちはだかる自動ドアを体で突き破り外へ飛び出す!!
ガラガラガラッッ!!
飛び出し外へ転がり出たのと同時に入り口から瓦礫が流れ出てくる。乱れた呼吸と異常に速く鼓動を打つ心臓で視界がクラクラする。あ、あぶな、危なかった。後少しのところで瓦礫に押しつぶされるところだった。いくら特異生物とはいえ、全身すり潰されても再生できるわけじゃない。心臓が止まったら終わりなんだから。
「はっはっはぁっ、はぁっ」
「ちょっフレイム゛苦じ、苦しい……!」
「はっはっはっ……はあ、あ...…ごめん」
いつの間にか体に力が入り抱えていたスパークを力強く抱きしめてしまっていた。力を抜いて放してやる。
「ドキドキしたぁ……ありがとう、フレイム」
「はっ、はっ……はぁ、はぁ……焦った」
地面に伸びる俺を海美が雨と共に上から見下ろしてくる。一度大きく深呼吸をした後、何だか悔しくて腹筋で勢い付けて上体を起こした。ジリジリと右足の脹脛が熱く感じ、不思議に思って見ると何かの金属破片が突き刺さっている。他にもガラスの破片が細々と切り傷を作っていて血が雨に溶けていく。別に大きな傷じゃないけど、雨に血がどんどん流れて気持ち悪い。
「もう平気?」
「大丈夫。ストーム、応答してください」
………返答はない。
「ストーム?」
「まさか巻き込まれちゃったんじゃ……!?」
「狛坂さん!ストームの心拍確認してください!」
『こちら狛坂。反対方向の出口で謎の生命体との戦闘中の模様!誘導するので至急合流を!!』
「謎の……?了解、すぐに向かいます」




