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SCR -Specific mutant Cells organism Rangers-   作者: none
#5 One day after the rain
31/75

#5-1 逃した獲物と雨

「ここも違ったか……」



 6月某日──都内某所にて



 人が住まなくなってから数年がたった廃墟を後にしながら取材メモの余白に書いた表にバツをつけた。しっかし見つからないもんだ。


 件の特異生物の基地を見つけてやろうと都内の大きめな廃墟を巡り巡って11件目。中まで調べたけれどそれっぽいものは一つも見つからない。代わりに得たのは隣の家の人や周辺の通行人の不審者を見るような目ばかり。


 そそくさと退散して次の候補地へと地図アプリを設定する。よし。次だ次。凹んでいる暇なんてない!記者は足で稼いでなんぼ、だろ!!


「あ、あの、落としましたけど……」


「なんと、ありがとうございます!」


 すれ違った通行人がポケットから落ちた紙束を拾ってくれた。昨日の新聞の切り抜き、挟まった赤ペン、競合雑誌を切り抜いたもの、それと……


「………兄さん」


 オカルト呼ばわりされた兄さん──岸谷キシヤ マコトの記事。


 事の始まりはコトラ事件が一旦は収束して少しした後。兄さんは『人間が特異生物に変身して戦うところを見た』というとんでもないことを言い始めた。


 初めはコトラ事件の被害者だろうと僕も思っていたけど、兄さんが言うには特異生物に変身した人間は人間の姿に戻ることができ、そのあとは普通に会話していたという。しかし、兄さんは十分な証拠を残すことができず、誰にも信じてもらえなかった。誰もが兄さんの記事をオカルトだインチキだとコケにして、それでも兄さんは諦めずにその特異生物を追った


 しかしその後兄さんは特異生物を追っている中で、追ってたのとは別の特異生物に襲われ死んだ。


 手掛かりになるのは追っていたとても珍しい炎を操る特異生物だということだけ。信じてあげられていれば、なんてタラレバを言う気は無いけど。でも、


「安心してよ。僕が兄さんの真実を探し出して見せる。そして、兄さんをバカにした奴らを見返してやるんだ」


 そう言えば朝この記事を読み返して、そのままポケットに突っ込んだんだった。大切な記事なんだから気をつけよ。前は兄さんの名刺落としちゃうし。


 ポケットにぎゅっと押し込む。あれ、入りきらないな。じゃあカバンに……


「……やが気にしなくとも私は気になるの!流行とか一瞬で過ぎちゃうんだから、色々見たいの!」


「流行なんて誰も気にしてねぇよ。てか何がダメなんだよ。もう充分可愛いだろ」


 すると前の交差点で信号を待つ男女の声が耳に入る。見ると男性は茶髪で両側の横髪が外側へ短くぴょんと謎に跳ねている小柄な男性。袖と襟部分がおしゃれに緋色のチェック柄になっている黒いシャツに黒の細いスラックスをはいている。女性の方は可愛らしい黄色の花柄のトップスに黒のオシャレなデニムショートパンツ、2人とも靴はお揃いのブーツだ。てかなんかブーツだけやたらゴツいな………ってあぁ!!?


 思わず声が出るのを何とか抑える。何てことだ!?何てこった!!前に森の中で見た2人じゃないか!!


 携帯で過去の鮫島財閥の取材記事を出すと、かつて鮫島財閥の会長である鮫島厳夫が一度だけインタビューで娘2人を連れてきた時の記事の写真が出てくる。鮫島家の2人娘の妹である鮫島海美の方の写真に凄い似てる。特に特徴的な大きな瞳!やっぱり、あれは鮫島海美だったんだ!


「とにかく、あと一件は回るの!いいじゃん時間あるんだし!」


「また試着かよ……待つのだって大変なんだぞ、店員さんと待ってないといけないあの時間が」


「人見知りを治すのにちょうど良いじゃん」


「お前な……」


 天真爛漫な妹に振り回される兄のような微笑ましい2人だ。鮫島海美に兄が居たとは驚きだが、鮫島厳夫の隠し子なのかもしれない。なら特異生物の活動を極秘に行っていることも繋がる。これはきっと大スクープになるぞ!


 信号が青に変わり2人はスタスタと前を横切って歩いていく。し、慎重に、慎重に追うぞ。一世一代の大チャンス、逃してたまるか!!


 距離を大きく離して尾行する。曲がり角はカーブミラーで確認しながら、慎重に。慎重に。


「…………」


 すると男性の方がピタリと足を止める。やば!?バレた!?急いで壁に隠れる。いやいや振り向いていなかった。距離もどれだけ離していると思っているんだ。きっとまだ見られていない。大丈夫だ、大丈夫。


「ん、どうしたの?」


「何でもない」


 また2人は歩き出す。こっちの方向は大きなデパートのある方向だ。なんだろう、仲良く買い物かな。それとももしかしてそこで人を襲おうってのか!?


 2人が先の角を曲がったのを確認し、角まで早足で歩く。カーブミラー越しにあっちにいるかを確認して……え!?


 ばばっと2人が角を曲がった先に出る。そこはひとっ子1人居ない道路。ここは一本道だ。脇道に逸れたなんてこともありえない。


「クッソー!!!」


 撒かれた!!クソッ!!

 地団駄を踏んで頭をわしゃわしゃと掻きむしる。何で気が付かれたんだ!?こんな大チャンス他にないのに!!


 バサバサバサッ


「あぁっ!?もう!」


 暴れたせいでポケットやカバンに詰め込んでいた紙束が落ちていく。もー!


 悪態をつきながらわっさわっさと集めてまた鞄やポケットへ突っ込んでいく。すると手に持った紙束の紙一枚に丸いシミが小さくできた。


「ん?」


 するとそのシミは増えていき、少しずつ紙を埋め尽くしていく。顔を上げれば視界に水滴がついた。あ、


「雨だ」



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