#3-5 幕間の舞台
「お、きたきた。噂の転校生くん!」
「……活き活きしてて何よりですよ、イケメン臨時講師」
「鮫島ちゃんと仲良さそうだったけど、何?初日にしてもう心掴んじゃった?いや掴まれちゃった?いやー青春だねぇ!」
「集団リンチではなかったですね」
「しゅ……なんて?」
昼休みが終わって、5限目が始まってから10分後。校舎の屋上に俺たちはいる。辺りを見渡すと学校の裏手には森、正門側には通学路にされている道と住宅街。偏差値は高めだがごく一般的な学校だ。
胸ポケットに入れてあるペンを取り出す。くるくると真ん中の部分を回せば簡単に分解できて、中から「5限屋上」と書かれた小さなメモが出てくる。
「意外と合図、使えますね。『忘れ物』」
「だな。インカムもミューシスも使えないしで緊急連絡は難しいけど、集まる分には困らなさそうだ。携帯禁止の学校で焦ったけど何とかなりそうだな。てか優也、授業は?俺はないけど」
「保健室行ってることになってます。科目は現代国語。担任の先生は生徒を当てることはないし、みんなご飯の後で2/3以上は寝てるそうなので問題ないかと」
「はは、高校生らしいな。で?どうだった?」
屋上の柵にもたれかかる龍斗さんの目が鋭くなる。さっきまでの人気先生の明るい雰囲気はどこかへいって、いつもの作戦中の雰囲気の龍斗さんだ。
「授業中、何か大きなものを引きずって移動する不自然な音が聞こえて該当場所を確認したんですが特に様子がおかしいところはありませんでした。けどおそらく特異生物に関係するのかと」
「引きずる音か……なんだろ」
龍斗さんがポリポリと頭を掻く。何か大きなものが引きずられる音だけが聞こえ、引きずっている人の足音などが無いことを考えれば特異生物が関わっている可能性はかなり高いだろう。
「蚊?なんだよなぁ。引きずるって何を?腹とか?」
「それなら足音も聞こえるはずでしょう。前の蟻みたいに、変異したら人間の手足が生えたり発達する可能性もありますから」
「何かを引きずる音だけかぁ。なんだろうな」
とはいえ聞こえる時間は不規則で、授業中の時もあれば短い休み時間でも聞こえる。場所も大まかな方向が分かるが確定できない。まだ多分圧倒的に判断材料が足りていない。
「今日一日じゃ難しいですね。今週を目処に片しましょう」
「そうだな。その間くらいは青春しようか!」
「そうですね、さくせ……ん?」
作戦に集中しようか、じゃなくて?
龍斗さんは困惑する俺を面白がるように笑った。
「じゃ、俺は仕事あるから戻るわ。あ、そういや設定足したから合わせといて」
「いや、え……は!?設定!?なんの!?」
すると気持ち悪いぐらい態とらしく、まるで1人ステージに立つ舞台俳優のようなわざとらしい振る舞いで龍斗さんは語り始める。
「俺達は両親が早くに亡くなって二人暮らし。時にすれ違いながらも支え合い幸せを噛み締めているけど、時に隠れて涙を流す優也」
「は?」
「優しくて強いけど、どこか繊細で寂しがり屋だから友達になってあげて欲しいな……ってうっすら涙目作ってたっっっぷり哀愁込めて言っといた。みんな感動してボロクソ泣いて優也くんと友達になろう!!ってさ。よろ〜」
……殴っていいかな。今は。




