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アフェクト・ブレイカー ―感情が力になる世界で、たった一秒の能力を持つ少年の物語―  作者: paguzon


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第9話 1秒の侵入者

第9話です。


ここから、物語が大きく動き始めます。


これまでの模擬戦とは違う“本当の戦い”が、

未来たちの前に現れます。


圧倒的な力を持つ存在との遭遇、

そして、それに対してどう立ち向かうのか。


それぞれの力の意味が、少しずつ見えてくる回になっています。


ぜひ最後までお楽しみください。


爆音。


それは耳で聞く“音”ではなかった。


空気そのものが内側から破裂したような、圧の衝突。


次の瞬間――


地面が持ち上がった。


「――っ!!」


未来は反射的に腕を上げる。


爆風が真正面から叩きつける。


砂利、金属片、コンクリートの破片が混ざり合い、弾丸のように飛び交う。


頬にかすめる衝撃。


肺に焼けた空気が流れ込む。


「なに今の!?」


ひかりの声がかき消されそうになる。


ハヤトが目を細める。


「外壁……破壊されたみたいだ」


煙が、ゆっくりと流れていく。


その向こう。


瓦礫を踏む音が、一つ。


……二つ。


一定のリズム。


焦りも、警戒もない。


ただ歩いてくる。


黒いコートの男。


足取りは自然。


だが、その一歩ごとに、空気が沈む。


未来の喉がわずかに鳴る。


(……重い)


力じゃない。


存在そのものが、圧になっている。


蒼の声が観測塔から響く。


「全員離れて!」


「実戦案件よ!」


ざわめきが走る。


だが。


男は止まらない。


「……へえ」


低い声。


周囲を見渡す。


「訓練中か」


それだけで、場の温度が一段下がった。


その瞬間。


黒崎が前に出た。


一歩。


それだけで空気の質が変わる。


男の視線が止まる。


「……お前か」


黒崎は何も言わない。


ただ。


足元の影が、ゆっくりと動いた。


地面に落ちた影が、液体のように広がる。


滑るように。


音もなく。


男の足元へ到達する。


影が絡む。


靴の影に潜り込み、絡みつくように固定する。


――拘束。


だが。


男は動じない。


「……それだけか?」


その瞬間。


男の腕が、わずかに振られた。


本当に、わずか。


だが未来は見た。


拳の“前”の空気が、歪んでいた。。


押し潰されるように。


空間が、縮む。


次の瞬間――


ドンッ!!!


衝撃が爆ぜる。


黒崎の影が横から潰される。


地面が抉れる。


影が弾け飛ぶ。


黒崎の足が、半歩だけ滑る。


ひかりが息を呑む。


「……え……?」


見えない。


何も。


ただ結果だけがそこにある。


ハヤトが低く言う。


「空気圧だ」


「拳の動きに合わせて、前方の空間を圧縮してる」


未来が眉をひそめる。


「見えない攻撃か」


「厄介すぎだろ」


男が、もう一度小さく腕を振る。


今度は未来たちの方向へ。


ハヤトの目が鋭くなる。


「来る!」


「左、二歩分!」


ひかりが即座に反応する。


「ステップ!」


光が弾ける。


一瞬で横へ。


その直後――


ドォンッ!!!


さっきまで立っていた地面が爆ぜる。


芝がえぐれ、土が舞う。


衝撃波が遅れて頬を打つ。


未来が歯を食いしばる。


(完全に見えない……!)


男がわずかに口元を歪める。


「避けるか」


黒崎の声が低く落ちる。


「下がれ」


短い命令。


だが絶対。


黒崎が踏み込む。


影が一気に広がる。


地面が黒に染まる。


次の瞬間――


影が立ち上がる。


槍のように。


鋭く。


無数に。


一斉に男を突き刺さそうとする。


だが。


男は一歩も動かない。


腕を振る。


空気が歪む。


圧が衝突する。


影の槍が、まとめて押し潰される。


衝撃が爆ぜる。


地面がひび割れる。


余波が未来たちを揺らす。


ひかりの声が震える。


「……なに、あれ」


ハヤトが短く言う。


「格が違う」


その時。


男の視線が、こちらに向いた。


「……だから、邪魔だって」


その一言で、未来の体が勝手に動く。


(来る)


「一秒!」


世界が引き延ばされる。


男の肩。


腕の軌道。


空気の歪み。


全部が“見える”。


未来は踏み込む。


ひかりの前へ。


腕を交差させ、防御態勢をとる。


直後――


ドンッ!!!


一瞬の衝撃。


骨が軋む。


だが、崩れない。


(防いだ……!)


地面を滑る。


息が詰まる。


ひかりが叫ぶ。


「未来くん!」


未来は歯を食いしばる。


(でも次が来たら……)


男が腕を上げる。


ハヤトが叫ぶ。


「次が来るぞ!」


「今度は右上から!」


未来は動けない。


その瞬間。


黒崎の影が再び動いた。


男の足元。


影が深く潜る。


絡みつく。


拘束。


黒崎が踏み込む。


ハヤトが叫ぶ。


「フェイント!」


「次が本命!」


呼吸が変わる。


肩が沈む。


重心が移る。


未来の目がそれを捉える。


(……読める)


まだ、能力は使えない。


それでも未来は踏み込む。


位置をズラす。


黒崎の影の角度が変わる。


次の瞬間


黒崎が静かに口を開く。


「面倒だ」


「――アビス・グレイヴ」


地面の影が沈む。


底の見えない闇へ。


男の影が飲み込まれる。


引きずり込まれる。


「……っ!?」


初めて男の表情が歪む。


影が閉じる。


ズンッ――


重い音。


静寂。


男の姿は消えていた。


完全封殺。


ひかりが呟く。


「……嘘でしょ……」


ハヤトも言葉を失う。


未来はただ見ていた。


(これが……上の世界か)

(次元が違う)


黒崎は振り返らない。


ただ一言。


「雑魚だ」


その瞬間。


別方向で爆発。


壁が吹き飛ぶ。


蒼の声が響く。


「複数の侵入者を確認!」


「防御体制!」


煙の向こう。


新たな複数の敵の影が現れる。


混乱する頭を振り払い、

未来は拳を強く握った。


やるしかない。


次回

第10話 1秒の防衛戦




第9話まで読んでいただきありがとうございます。


ついに、学園の外からの脅威が姿を現しました。


そして今回、

黒崎の実力の一端も描かれています。


まだ“本気”ではありませんが、

それでも別格の存在であることは伝わったと思います。


一方で、未来たちは初めて「実戦」に直面しました。

これまでの模擬戦とは違い、

一瞬の判断が生死に関わる状況です。


そして――

敵の目的は、まだはっきりとは見えていません。


ですが確実に言えるのは、

この戦いがただの偶然ではないということ。


次回、第10話「1秒の防衛戦」


ここからさらに物語は加速していきます。


少しでも面白いと思っていただけたら、

ブックマークや評価で応援いただけると嬉しいです。


引き続きよろしくお願いします。


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