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アフェクト・ブレイカー ―感情が力になる世界で、たった一秒の能力を持つ少年の物語―  作者: paguzon


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第3話 1秒の入学試験 ― アフェクターたちの最初の戦い

第3話です。

いよいよアフェクト学園の入学試験が始まります。


さまざまなアフェクトを持つアフェクターたちが登場し、

未来たちの前に本格的な戦いの舞台が現れます。


楽しんでいただけたら嬉しいです。


国立アフェクト学園の敷地は、想像していたよりもずっと広かった。


 巨大な正門を抜けた未来とひかりは、案内に従って試験会場の建物へと入る。


 中に広がっていたのは、天井の高い大きなホールだった。


 すでに多くの受験者が集まっている。


 三十人ほどだろうか。


 だが普通の学校のような騒がしさはない。小さな話し声はあるものの、全体に張り詰めた空気が漂っていた。


 それも当然だ。


 ここにいる全員が――


 アフェクトを持つアフェクター。


 未来はゆっくりと周囲を見渡した。


 見た目は普通の高校生と変わらない。だが、その中に混じって、ただ立っているだけで妙な圧を感じさせる者がいる。


「君たちも受験者?」


 声をかけられ、未来は振り向いた。


 眼鏡をかけた男子が立っていた。


 少しぼさぼさの髪。細身の体。だが目だけは妙に輝いている。


「桐生ハヤト」


 男子はにこっと笑った。


「アフェクト研究が趣味なんだ!」


 ひかりがくすっと笑う。


「研究?」


「うん!」


 ハヤトは嬉しそうに頷いた。


「この試験って、いろんなアフェクトが見られるんだよ!」


「怒り、恐怖、悲しみ、喜び、愛情。5大アフェクトだけでも能力の種類がすごいんだ」


 未来は少し驚く。


 ひかりから聞いた話と、ほとんど同じだった。


 ハヤトはさらに早口になる。


「しかも同じアフェクトでも能力が違う。怒りでも炎だったり怪力だったり衝撃だったりするし、喜びでも身体を強化するタイプもいれば、エネルギーを外に放つタイプもいる」


「アフェクトが土台で、そこに能力の出方が分かれるんだよ。強化型とか、放出型とか、制御型、防御型とかさ」


 ひかりが首を傾げた。


「へえ。そこまで分類してるんだ」


「するよ!」


 ハヤトは胸を張る。


「アフェクトを見るなら、どの感情かだけじゃ足りない。どういう形で出るかまで見ないと面白くない」


 未来は思わず苦笑した。


「本当に好きなんだな」


「大好き!」


 即答だった。


 ハヤトがまだ何か言おうとした、そのとき。


 未来の視線がふと、ホールの奥に向いた。


 一人の大柄な男が立っている。


 腕を組み、静かに目を閉じていた。


 岩のような体格。


 ただ立っているだけなのに、周囲の空気が少し重く感じる。


 未来は無意識に目を留める。


 その少し離れた場所には、白い髪の少女が立っていた。


 壁にもたれ、静かに外を眺めている。


 周囲の緊張した空気とは無関係のように、ただ静かに立っていた。


 未来はしばらくその二人を見ていたが、やがて視線を戻す。


 そのときだった。


 ホールの扉が開いた。


 一人の女性が入ってくる。


 長い黒髪。


 柔らかな雰囲気。


 どこかぼんやりした表情。


 女性はホールを見回した。


「えーっと……」


 少し首を傾げる。


「ここ、試験会場で合ってる?」


 未来の耳に、周囲の受験者たちが小さくざわつく気配が届く。


 女性は手元の紙を見て、もう一度ホールを見る。


「あ、よかった」


 安心したように笑った。


「合ってた」


 ひかりが未来に小声で言う。


「この人、試験官かな」


 女性は前に出た。


「えーっと」


「今回の入学試験を担当します」


「神代蒼です」


 軽く頭を下げる。


 そして次の瞬間。


「あ」


 蒼は手を叩いた。


「大事なこと忘れてた」


 未来の周囲で、受験者たちの空気がわずかに揺れる。


「好きな食べ物はプリンです」


 沈黙。


 ハヤトが小声で言う。


「今それ必要?」


 蒼は笑った。


「大事だよ」


「プリン」


 そして、ほんの少しだけ表情が締まる。


「それじゃあ」


「入学試験を始めます」


 蒼は窓の外を指さした。


 巨大なバトルフィールドが広がっている。


「試験内容は模擬戦」


「最後まで立っていた方が勝ち」


 未来の耳に、受験者たちのどよめきがわずかに届いた。


 蒼はタブレットを見ながら続ける。


「順番に一人ずつ試合をしてもらいます」


「力が強いかどうかだけじゃなく、どう使うかも見ます」


 その言葉に、未来は少しだけ息を詰めた。


 どう使うか。


 たった一秒しか使えない自分の力を、それでも見てもらえるということかもしれない。


「それじゃあ第一試合」


 二人の受験者がフィールドへ向かった。



第一試合


 一人の男子の腕に炎が宿る。


 対する相手の前には、透明な防壁が現れた。


 炎の拳が叩きつけられる。


 ドン!!


 衝撃が広がる。


 だが、防壁は壊れない。


 未来は思わず目を見開いた。


 炎の威力もすごいが、それを真正面から受け止めた防壁もすごい。


 ハヤトが興奮する。


「見た!?」


「怒りアフェクトだ! しかも完全な攻撃型!」


「でも相手は悲しみアフェクト、防御型の能力だね!」


 未来は小さく頷く。


 怒りは攻撃に寄りやすく、悲しみは耐久や防御に寄りやすい。


 だが、“寄りやすい”だけで決まっているわけではない。


 その感情が、どういう力として現れるかは本人次第――。


 炎の男子がもう一度突っ込む。


 今度は拳ではなく、腕を振り抜いた。


 火の塊が横薙ぎに走る。


 だが防壁の相手は後ろへ跳び、着地と同時に防壁の形を変えた。


 盾のような壁が、槍のような形へ変わる。


「おっ」


 ハヤトの声が弾む。


「防御型だけど固定じゃない!」


「形を変えられるタイプだ!」


 防壁の先端が突き出され、炎の男子が慌てて身を引く。


 未来は思わず見入った。


 同じ防御でも、ただ守るだけじゃない。


 使い方でいくらでも戦い方が変わる。


 蒼の「どう使うかも見ます」という言葉が、少しだけ理解できた気がした。


 数度の攻防のあと、炎の男子が一気に踏み込み、防壁ごと相手を押し切った。


 蒼が淡々と告げる。


「勝者」


 ホールの空気が少し揺れる。


 ハヤトは満足げに頷いた。


「いいなぁ、こういうの」


「アフェクトと能力タイプが綺麗に分かれてる試合、見てて楽しい」


 未来は苦笑する。


「楽しんでるな」


「そりゃもう」


 ハヤトは真顔で答えた。


「最高だよ」



第二試合


「雨宮ひかり」


「はーい!」


 ひかりは元気よく手を挙げた。


 立ち上がると、くるりと未来の方を振り向く。


「いってくるね、未来くん」


「ああ」


 未来が頷くと、ひかりは軽い足取りでフィールドへ向かった。


 対戦相手は細身の男子だった。


 構えが低い。


 視線の置き方に無駄がなく、いかにも速そうだと未来は思う。


 蒼が手を上げた。


「試合開始」


 次の瞬間、男子が地面を蹴った。


 一気に距離を詰める。


 速い。


 未来の目が思わず見開く。


 だが。


 ひかりは驚いていなかった。


「速いね!」


 むしろ楽しそうに笑っていた。


 次の瞬間。


 ひかりの体から、淡い金色の光が弾ける。


 ドン!!


 地面が鳴る。


 ひかりの身体が、爆発するように前へ出た。


 男子の視界から、姿が消える。


「なっ!?」


 次の瞬間。


 ひかりは男子の横にいた。


 ただ速いだけじゃない。


 動きに迷いがない。


 加速したその瞬間に、最短距離で相手の死角へ回り込んでいる。


「ごめんね!」


 ひかりが拳を振るう。


 光が拳へ収束する。


 ドン!!


 衝撃が炸裂した。


 男子の身体が吹き飛ぶ。


 フィールドの周囲から、小さなどよめきが広がった。


 ハヤトが興奮する。


「すごい!」


「喜びアフェクトだ!」


「しかも強化型だけじゃない、出力をそのまま打撃に乗せてる!」


 未来は息を呑む。


 ひかりの戦い方は、明るい性格そのままだった。


 速い。


 迷わない。


 まっすぐ前へ出る。


 だが雑ではない。


 むしろ、かなり洗練されている。


 男子はすぐに立ち上がった。


 まだ終わっていない。


 だがひかりは一歩も引かない。


 光をまとったまま、軽く足を動かす。


 構えが自然だった。


 次に来ると分かっている。


 男子が再び踏み込む。


 今度は真正面からではなく、少し角度をつけて接近した。


 未来は気づく。


 さっきより慎重だ。


 ひかりの速度を警戒している。


 男子の拳が伸びる。


 その瞬間、ひかりが身をひねる。


 紙一重でかわし、そのまま踏み込んだ。


 光が、今度は足元に集まる。


 一気に低い姿勢から跳ね上がるように加速する。


 男子の懐に入り込み、肩口へ掌を打ち込んだ。


 ドン!!


 鈍い衝撃音。


 男子の身体がぐらりと揺れる。


 ひかりは間を置かず、さらに一歩。


 追撃の拳。


 光が弾ける。


 男子はそのまま場外まで吹き飛ばされた。


 蒼が頷く。


「勝者、雨宮ひかり」


 ひかりは少し照れたように笑った。


「勝ち?」


 その言い方が、あまりにも余裕たっぷりで、未来は逆にすごいと思った。


 フィールドを戻ってきたひかりは、未来に手を振る。


「未来くーん!」


「頑張って!」


 未来は拳を握る。


(強い)


 明るくて、人懐っこくて、少し軽く見える。


 だが戦えば分かる。


 ひかりは、かなり強い。


 そのとき。


「次」


 蒼が言った。


「天城未来」


 未来は前へ出る。


 フィールドへ向かう。


 対戦相手は――


 先ほどホールの奥に立っていた、大柄な男だった。


 男はゆっくりと笑って言う。


「楽しませてくれよ」


 未来は拳を握る。


 希望アフェクト。


 使えるのは――


 一秒。


 蒼の声が響く。


「試合開始」


 男が踏み込む。


 拳が振り下ろされる。


 速い。


 重い。


(まずい――)


 その瞬間。


 未来の中で何かが弾けた。


 一秒。


 世界が変わる。



次回

第4話 一秒の可能性



ここまで読んでいただきありがとうございます。


第3話では入学試験が始まり、アフェクター同士の戦いが描かれました。

そして次回はいよいよ未来の試合になります。


たった一秒しか使えない力が、この試験でどこまで通用するのか。

よければ次回も読んでいただけると嬉しいです。


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