表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アフェクト・ブレイカー ―感情が力になる世界で、たった一秒の能力を持つ少年の物語―  作者: paguzon


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/17

第14話 1秒の休息

第13話まで読んでいただきありがとうございます。


戦いはひとまず終わりを迎えましたが、今回の第14話は――

その後の束の間の休息を描いています。


傷は残り、答えはまだ出ていない。

それでも、日常は動き出す。


ほんのわずかな休息の中で、

それぞれが何を見て、何を感じるのか。


そして――

未来の力に対する、ひとつの“違和感”。


ゆるやかで、しかし確実に次へ繋がる回になっています。


ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです。

第14話


1秒の休息


 朝。


 寮の廊下は、不自然なほど静かだった。


 普段なら、この時間帯は誰かしらの足音が響いている。朝練に向かう上級生の走る音、寝癖のまま食堂へ向かう新入生の欠伸、部屋の前で騒ぐ声。それらが重なって、ここにはいつも“生活の音”があった。


 けれど今日は違う。


 誰もが声を潜めている。


 笑い声もない。


 代わりに、遠くから低く響く振動音だけが、一定の間隔で届いていた。


 未来は自室の窓を開け、外を見下ろした。


 訓練フィールドの方角に、白い粉塵がまだ薄く漂っているのが見える。昨日の戦いの爪痕は、朝になっても消えていなかった。


 地面は抉れ、観客席は崩れ、あちこちに黒く焦げた痕が残っている。作業用の車両が入り、職員や上級生が慌ただしく動いていた。鉄骨を運ぶ音。割れたコンクリートを砕く音。指示を飛ばす怒鳴り声。どれもが、昨日の出来事が現実だったと突きつけてくる。


「……やりすぎだろ、これ」


「いやほんとそれ」


 背後から、ひかりの声。


 未来が振り向くと、ひかりが部屋のドアにもたれかかっていた。勝手に入ってきたらしい。


「勝手に入ってくるな」


「寮なんだからいいでしょ」


「よくねえよ」


 未来が即答すると、ひかりは気にした様子もなく窓のそばまで歩いてくる。外の様子を見て、さっきまでの軽い調子を少し引っ込めた。


「……あれ、全部昨日のだもんね」


「まあな」


 未来も短く返す。


 昨日のことは、まだ身体に残っている。腕のだるさも、肺の奥の鈍い痛みも、打ちつけた頬の熱も、全部が生々しい。


 なのに、目の前の景色はどこか現実感が薄い。


「でもさ」


 ひかりが小さく呟いた。


「終わった、って感じしないね」


 未来は少しだけ視線を落とす。


「……俺も」


 終わったはずなのに、終わっていない。


 そんな感覚だけが、胸の奥に残っている。


 その時、廊下からノック音がした。


「おい」


 ハヤトの声だ。


「食堂集合だってさ。全寮生徒に連絡」



 寮の食堂は、朝から妙な緊張感に包まれていた。


 いつもより人が多い。いや、正確には、全員がここに集められているという空気だった。


 外出禁止の指示が出ている以上、当然ではある。だがそれ以上に、誰もが“説明”を待っているのが伝わってくる。ざわめきはあるのに、その一つひとつが抑えられていた。


 未来たちは三人並んで座った。


 ひかりが辺りを見回す。


「なんか、空気重いね」


「そりゃそうだろ」


 ハヤトが短く返す。


「昨日の事件、何も説明されてないままだし」


 その通りだった。


 侵入者は誰だったのか。何が目的だったのか。どれだけ被害が出たのか。未来たちは戦闘の真ん中にいたぶん、逆に全体像が見えていない。


 食堂前方の壇上に蒼真白が立つと、ざわめきが少しずつ収まっていく。


 その隣には、見慣れない教員が二人いた。スーツ姿で、どちらも表情が硬い。


 蒼が静かに言う。


「全員、静かに」


 食堂が、しんと静まった。


 蒼は一度、集まった生徒たち全体を見渡す。


 昨日までの柔らかい雰囲気とは違う。教師として、生徒全体を預かる立場の顔だった。


「まず、昨日の侵入事件について説明します」


 その一言で、空気がさらに張り詰める。


「昨日、訓練フィールドおよび周辺区画に対し、外部アフェクター集団による不法侵入が発生しました。侵入は複数箇所から確認され、訓練区域、外壁、観客席、資材通路に被害が出ています」


 淡々とした口調。


 けれど、内容は軽くない。


「学園側の対応により、侵入者はすべて制圧・確保、もしくは撤退を確認済みです。現時点で、新たな侵入反応はありません」


 そこで一度、蒼は言葉を切った。


「負傷者についてですが、重傷者は出ていません」


 その瞬間、食堂全体にわずかな安堵が広がる。


 詰めていた息が、あちこちでそっと吐き出されるのが分かった。


 だが、蒼はすぐに続けた。


「ただし、骨折・打撲・アフェクト過負荷による消耗を含め、複数の負傷者が確認されています。現在、医療棟で処置が進められています」


 ひかりが小さく息を吐く。


 未来も、無意識に肩の力を抜いていた。


 重傷者がいない。


 その事実は、思っていた以上に大きかった。


 蒼の隣に立っていたスーツ姿の教員が、一歩前へ出る。


「学園管理局を代表して、皆さんに謝罪します」


 深く頭を下げる。


「今回の件は、本来あってはならない学園防衛上の不備です。特に新入生の皆さんに対して、入学直後にこのような危険な事態を経験させてしまったこと、心よりお詫びします」


 食堂が静まり返る。


 未来はその光景を見て、少し驚いていた。


 謝るのか、と思った。


 でも、当たり前なのかもしれない。


 昨日、自分たちは死にかけたのだ。


 蒼が引き継ぐ。


「本日は臨時休校です。授業、実技訓練、対外活動はすべて中止。外出は禁止。寮および校舎内で待機してください」


 前方の大型モニターに、簡易地図が表示される。


 赤く塗られた区域がいくつもある。


「現在、フィールド周辺、外壁沿い、南棟通路、観測塔下部区画は立入禁止です。復旧と安全確認が終わるまで、近づかないでください」


 ひかりが小声で言う。


「思ったより広いね、被害」


「実際、かなり大事だったってことだろ」


 ハヤトが返す。


一拍置いて、蒼は続けた。


「なお、今回の侵入者の正体および目的については、現在、警察および外部機関と連携し、確保した者たちの供述をもとに調査を進めています」


 食堂の空気がわずかに張り詰める。


「現時点で断定はできませんが、侵入の規模、統制の取れた行動、そして個々の戦闘能力を踏まえると、単独犯や小規模な集団とは考えにくい」


 視線が、生徒全体を見渡す。


「――組織的な動きである可能性が高いと判断しています」


 ざわめきが、今度ははっきりと広がる。


 蒼はそのまま言葉を重ねた。


「相手の全容が不明である以上、学園としても皆さんの安全を最優先とし、当面の間は警戒レベルを引き上げます」


「外出制限、立入制限に加え、一部施設の使用制限も行います。多少の不便はありますが、理解してください」


 一拍。


「皆さんを守るための措置です」


 そのまま蒼は続けた。


「なお、精神的な不調を感じる場合は、遠慮なく相談室または医療棟に来てください。今回の件は、皆さんが初めて経験する実戦でした」


 その一言だけ、少し声の温度が変わった。


「無理はしないこと。以上です」


 説明が終わる。


 けれど、誰もすぐには立ち上がらなかった。


 ようやく事態の輪郭が与えられたことで、逆に昨日の恐怖が遅れて現実になったようだった。


 やがて、少しずつ椅子が引かれ始める。


 未来たちも無言のまま立ち上がった。



 食堂を出たあと。


 三人はしばらく無言で歩いていた。


 さっき聞いた説明が、頭の中でゆっくり整理されていく。


 ひかりがぽつりと呟く。


「……ちゃんと謝られるとさ」


「余計に、現実感出るね」


「まあな」


 未来が言う。


「死ぬかと思ったし」


「それな」


 ひかりが苦笑する。


 ハヤトは短く息を吐いた。


「でも、終わったのは事実だ」


「次を考えるべきだな」


 未来は軽く息を吐く。


「……とはいえ」


「このまま部屋戻るのもな」


 その言葉に、ひかりの目が輝いた。


「じゃあ探検しよ」


「何だよそれ」


「寮探検!」


 満面の笑みだった。


「いや、何でそうなる」


「だって昨日まで全然見る余裕なかったじゃん」


「それはそうだけど」


「いいだろ。どうせ暇なんだし」


 未来が言うと、ハヤトも頷く。


「構造を把握しとく意味はある」


「ほら!」


 ひかりが指を差す。


「今のは私が正しい流れ!」


「お前が正しいんじゃなくて、結果的に話がそっちに転がっただけだろ」


「細かいことは気にしない!」


「お前はもう少し気にしろ」


 そんなやり取りをしながら、三人は寮の奥へ歩き出した。



 寮の中は、想像していた以上に広かった。


 長い廊下が何本も交差し、ラウンジや自販機コーナー、小さな図書エリアまである。生活に必要なものが、ひとつの建物の中に丸ごと詰め込まれていた。


「……街みたいだな」


 未来が呟く。


「全寮制だからな」


 ハヤトが言う。


「生活拠点そのものなんだろ」


 ひかりが得意げに振り返る。


「でしょ?」


「何でお前が得意げなんだよ」


「案内役っぽいから」


「昨日入ったばっかりだろお前も」


「気持ちの問題!」


「便利だなその言葉」


 階段を上がり、さらに奥へ進む。


 途中で何人かの新入生とすれ違う。互いに軽く視線を交わし、「大丈夫か」と言葉を交わす。それだけで、昨日の出来事が共有されているのが分かった。


 ひとつの角を曲がると、ガラス越しに大きな調理スペースが見えた。


「お、ここ何?」


 ひかりが立ち止まる。


 食堂の奥に繋がる巨大なバックヤードだった。


「……でかいな」


 未来が言う。


「寮生全員分の食事を賄うんだから、まあこうなるだろ」


 ハヤトが頷いた、その時だった。


「おう」


 聞き覚えのある声。


 三人が振り向き、同時に固まる。


「……なんでいるんだよ」


 未来が言う。


 ガイがいた。


 巨大な盆の上に、山盛りの料理を載せて。


「飯だ」


「見れば分かるわ!」


 ひかりが即ツッコむ。


「いや量がおかしいでしょ!?」


「多いか?」


「多いよ!!」


 未来も思わず口を挟む。


「それ何人分だ」


「一人分だ」


「嘘つけ!!」


 ガイは真顔だった。


 その瞬間。


「ちょっとあんた!!」


 奥から声が飛ぶ。


 食堂のおばちゃんだった。腕まくりをしたまま、ずんずん近づいてくる。


「おかわり自由だからって限度があるでしょ!!」


 ガイが振り向く。


「足りない」


「足りるのよ!!」


「いや足りねえ」


「足りるの!!」


「鍛えるから減る」


「減る前提で積むんじゃないの!!」


 完全に言い争いになっていた。


 ひかりが吹き出す。


「怒られてる!!」


「当たり前だろ!!」


 未来も耐えきれず笑ってしまう。


 昨日の張り詰めた空気が、少しずつほどけていくのが分かった。


 ガイは最後まで真顔で反論していたが、最終的にはおばちゃんに皿を一枚没収されていた。


「理不尽だ」


「理不尽じゃねえよ」


 未来が即答すると、ひかりがまた笑う。



 そのまま三人は、別のフロアへ向かった。


 重い鉄扉の向こうから、鈍い金属音が響いてくる。


 トレーニングルームだった。


 扉を開けた瞬間、未来は顔をしかめる。


「……またかよ」


 視線の先にいたのは、やっぱりガイだった。


「早すぎるだろ!!」


 ひかりが叫ぶ。


「なんで先回りしてるの!?」


「鍛えてた」


「移動どうなってるの!?」


 ガイは気にせずバーベルを持ち上げる。


 その重量が、どう見てもおかしい。普通の一年が扱う重さじゃない。


 ハヤトがぼそりと言う。


「規格外だな」


 未来も頷く。


「……ああ」


 その時。


 ぐぅぅぅぅぅ……


 ガイの腹が盛大に鳴った。


 一瞬の沈黙。


 未来が言う。


「お前さっき食ってただろ」


「鍛えた」


「だからだよ!!」


 ひかりのツッコミが炸裂した。


 三人とも、もう耐えられなかった。


 トレーニングルームの端まで響くくらい、笑いが弾ける。


 ガイだけが、本気で何が面白いのか分からない顔をしていた。


「何だ」


「いや、お前……」


 未来が笑いをこらえながら言う。


「戦闘中と全然違うな」


 ガイが眉をひそめる。


「何がだ」


「もっとこう、重くて怖い感じかと思ったら」


「普通にうるせえし」


 ひかりが補足する。


「あと食いすぎ」


「関係ねえだろ」


 即答だった。


 ハヤトが小さく笑う。


「まあ、戦う時だけちゃんとしてればいいって考えなんだろ」


 ガイはバーベルを置き、肩を回した。


「戦う時に勝てばいい」


 それだけ言う。


 シンプルすぎる答えだった。


 でも、そのシンプルさがそのまま強さになっているのだと分かる。


 未来は少しだけ笑った。


「なるほどな」


 そう返すと、ガイは何も言わずまた鍛え始めた。



 トレーニングルームを出たあと、三人は寮の外へ向かった。


 すると、背後から足音がひとつ増える。


「なんでついてくるんだよ」


 未来が振り返る。


 ガイだった。


「外見るんだろ」


「まあそうだけど……」


「俺も見る」


 真顔だった。


 ひかりが小さく呟く。


「もう自然に混ざってる……」


 ハヤトが肩をすくめる。


「今さら追い返しても面倒そうだな」


「聞こえてるぞ」


「聞こえる距離で言ってるからな」


 未来が返すと、ガイは特に気にした様子もなく前を向いた。


 結局、四人で外へ出ることになった。


 外の空気は、寮の中よりさらに現実味があった。


 遠くで重機が動く音。資材を運ぶ音。折れた柵を外す音。昨日の戦いが、まだ終わっていないことを示している。


 中庭の奥、校舎とフィールドの境目あたりで、ひとつの人影が見えた。


 フェンス越しに、壊れたフィールドの方を静かに見ている。


「……あれ」


 ひかりが小さく言う。


「同じクラスの……白峰さん、だよね」


 未来も視線を向ける。


「ああ」


 入学試験でも、昨日の戦いでも印象に残っている存在だ。


 その白峰ゆいが、風に揺れる髪を押さえもせず、ただフィールドの残骸を見つめている。


「……声かける?」


 ひかりが言う。


「まあ、このまま無視するのも変だろ」


 未来が一歩前に出る。


「白峰さん」


 呼びかける。


 ゆいは振り返らないまま、言った。


「来ると思ってた」


「……何が?」


「その顔」


 ゆっくりと振り返る。


 その視線が、未来をまっすぐ捉える。


「まだ、掴めてないでしょ」


 未来は一瞬だけ言葉に詰まる。


「……ああ」


 否定できない。


 あの一撃。


 確かに通った。


 でも、それが何なのか、どこまでが自分の力なのか――まだ曖昧なままだ。


 ゆいは少しだけ首を傾げる。


「でもさ」


 一拍。


「面白いね、あのアフェクト」


 未来の呼吸が、わずかに止まる。


「……どういう意味だ?」


 ゆいはすぐには答えない。


 言葉を選ぶように、ゆっくりと続ける。


「“希望”ってさ」


 視線が未来に向く。


「普通は、“何かを叶える力”って思うじゃん」


「……まあ」


「でも、あれ」


 ほんの少しだけ、笑う。


「そういう感じじゃないよね」


 未来の胸の奥がざわつく。


「じゃあ、なんだよ」


 思わず問い返す。


 ゆいは静かに言った。


「――“壊す側”だよね」


 空気が、一瞬だけ止まる。


 ひかりが目を丸くする。


「壊す……?」


 ハヤトも黙っている。


 未来は、言葉を失っていた。


 壊す。


 その言葉が、妙に引っかかる。


 ブレイク・インパクト。


 領域の“隙”を打ち抜いた、あの一撃。


 確かに、あれは――


「……」


 言葉にならない。


 ゆいはそれ以上何も言わなかった。


 ただ、再びフィールドの方へ視線を戻す。


 踏み込ませないように、線を引くように。


 その沈黙の中で、ガイが短く鼻を鳴らした。


「壊す、か」


 低い声だった。


 未来たちがそちらを見ると、ガイはフィールドの崩れた地面を見たまま腕を組んでいる。


「悪くねえだろ」


 あまりにもあっさり言う。


 ひかりが目を瞬かせる。


「え?」


「壊せるなら壊せばいい」


 ガイは未来を見る。


「通らねえもんは、砕くしかねえ」


 単純で、真っ直ぐな言葉だった。


 でも、その一言にはガイなりの実感が乗っていた。昨日、あの蓄積解放の敵を真正面から叩き潰した男の言葉だ。


 ハヤトが静かに口を開く。


「お前の場合は本当に物理で砕くから説得力あるな」


「事実だろ」


「事実だけど、もう少し繊細な話をしてるんだよこっちは」


「知らん」


 即答だった。


 ひかりが吹き出す。


「この人ほんとブレないね……」


 ゆいはそんなやり取りを見ながら、わずかに目を細める。


「でも」


 再び、未来に視線が戻る。


「白黒つけるのは、まだ先でいいと思う」


「……先?」


「今の未来くん、まだ“何を壊してるのか”分かってないから」


 未来は無意識に拳を見る。


 あの一撃の感触は、まだ残っている。


 確かに通った。


 だが、その正体までは掴めていない。


 風が吹く。


 遠くで、何かが崩れる音がした。


 未来はゆっくりと拳を握る。


 まだ分からない。


 自分の力が、何なのか。


 でも。


「……次は」


 小さく呟く。


「ちゃんと、“あの形を安定させる”」


 ひかりが横で笑う。


「いいね、それ」


 ハヤトも頷く。


「そのために、相当やること増えそうだけどな」


「……だろうな」


 未来は苦く笑う。


 簡単じゃない。


 でも、やるしかない。


 この違和感の正体を、掴むために。


 壊す力なのか。


 それとも、まだ自分でも知らない何かなのか。


 すると、隣でガイがぼそりと言った。


「鍛えりゃ分かる」


「雑すぎるだろ」


 未来が即座にツッコむ。


「でも、分かりやすくはあるよね」


 ひかりが笑いを堪えながら言う。


「お前はもう少し考えろ」


 ハヤトが呆れる。


「考えてる」


 ガイは真顔で返した。


「食う。鍛える。勝つ」


「思考回路が直線すぎるだろ!」


 また笑いが起きる。


 緊張と重さの中に、少しだけいつもの空気が混じる。


 昨日、自分たちは確かに死にかけた。


 学園も壊れた。


 負傷者も出た。


 でも、それでもこうして日常は戻ってくる。


 完全に元通りじゃない。


 けれど、だからこそ大事なんだと思えた。


 未来は歩きながら、そっと拳を握る。


 まだ足りない。


 全然足りない。


 でも、その足りなさが今ははっきり見えている。


 だったら、進むしかない。


 昨日の先に。


 この休息の、その先へ。



次回


第15話 1秒のアフェクト・モジュール

第14話を読んでいただきありがとうございました。


今回は戦闘を離れた“日常回”ですが、

ただの休息ではなく、物語としては重要な分岐点になっています。


・事件の余波

・学園の動き

・そして、未来のアフェクトの本質に関わる違和感


このあたりが、今後少しずつ繋がっていきます。


また、寮という環境やキャラクター同士の関係性も、

ここからより深く描いていく予定です。


次回、第15話では

いよいよ新たな要素――「アフェクト・モジュール」に踏み込んでいきます。


ここから先、物語はもう一段ギアが上がります。


引き続き読んでいただけると嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ