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アフェクト・ブレイカー ―感情が力になる世界で、たった一秒の能力を持つ少年の物語―  作者: paguzon


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第11話 1秒の標的

第11話です。


学園を襲った侵入者によって、状況は一気に変わりました。


これまでの模擬戦とは違う、“本当の戦い”の中で

それぞれの力がどう通用するのか――


そして逆に、どこまで通用しないのか。


今回は、未来・ひかり・ハヤトの3人にとって

一つの大きな壁にぶつかる回になっています。


それでも前に進めるのか。


ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです。

 サイレンが、鳴り止まない。


 耳の奥に張り付くような警報音が、思考の輪郭を削っていく。遠くで爆発が起きるたび、わずかに遅れて地面の下から鈍い振動が伝わってきた。


 訓練フィールドは、もはや訓練の場ではなかった。


 人工芝は抉れ、土がむき出しになり、ところどころ黒く焼け焦げている。観客席は崩れ落ち、コンクリートと鉄骨が歪んだまま積み重なっていた。煙が流れ、粉塵が視界を濁らせる。


 焦げた匂いが、喉を刺す。


 未来は浅く息を吐いた。


「……まだ終わってない」


 その言葉に、ひかりとハヤトが無言で頷く。


 終わっているはずがなかった。


 ひかりが頬の血を拭う。


「どうする? 避難……」


 言葉は弱い。だが、その視線は未来から離れない。


 ハヤトが低く言った。


「逃げても終わらない」


 未来と同じ結論だった。


「理由は二つある」


 ひかりが顔を上げる。


「一つは、“確認”って言葉」


 ハヤトは崩れた観客席の方へ視線を向けたまま続ける。


「まだ終わってないから確認してる。つまり――また来る」


 ひかりの呼吸がわずかに浅くなる。


「もう一つは?」


 ハヤトは、少しだけ未来を見る。


「未来が狙われてる可能性が高い」


 空気が一段、重く沈んだ。


 未来は何も言わなかった。ただ、拳を強く握る。


 その時、左側の観客席が軋む音を立てた。


 ひび割れたコンクリートが崩れ、巨大な塊が傾く。


 その下に、新入生が取り残されていた。


「……っ!」


 誰かの息を呑む音。


 次の瞬間。


「どけえええええええッ!!」


 怒号とともに、赤城ガイが飛び込んだ。


 落下するコンクリート塊を、真正面から受け止める。


 衝突。


 ドゴォンッ!!


 鈍い音が響く。


 ガイの両腕が沈む。


 足元の地面が耐えきれず、放射状に砕けた。だが、それでも膝は折れない。


 歯を食いしばりながら、さらに踏み込む。


「さっさと逃げろ!!」


 押し潰されかけていた新入生が、転がるようにその場から離れる。


 それを確認した瞬間、ガイは瓦礫を横へ投げ捨てた。


 ドガァン!!


 地面に叩きつけられたコンクリートが粉砕し、粉塵が舞い上がる。


 その奥。


 崩れた観客席の影から、一人の侵入者が姿を現した。


 細身の男だった。


 だが、その立ち方に無駄がない。体表に浮かぶ灰色の紋様が、呼吸に合わせてわずかに脈打っている。


 ガイは迷わず踏み込んだ。


 巨体が一瞬で距離を潰す。


「――爆震拳!!」


 拳が叩き込まれる。


 ドゴォン!!


 衝撃は外側ではなく、内部へ。


 打撃の瞬間、相手の身体の内側で破裂するような震動が走る。


 だが――


 男は吹き飛びながらも、崩れた段差の上に着地した。


 そして、そのまま立つ。


 ガイの目が細くなる。


「……効いてねえのか?」


 男の身体が、わずかに揺れていた。


 水面のように。


 打撃を受けた箇所から、衝撃が波となって肩へ、背中へと流れていく。


 そして、腕が振られる。


 ただ、それだけで。


 背後の観客席の残骸が内側から弾け飛んだ。


 バガァン!!


 崩壊。


 鉄骨が軋み、コンクリート片が降り注ぐ。


 ひかりが息を呑む。


「今の……!」


 ハヤトが低く言う。


「溜めてる」


「受けた衝撃を体内に溜めて、別の場所から解放してる」


 未来の中で、瞬時に繋がる。


(ガイの一撃を……そのまま使ってるのか)


 ガイが口元を歪めた。


「……なるほどな」


 低く吐き捨てる。


「受けて、溜めて、吐くってわけか」


 一歩踏み出す。


 地面が砕ける。


「だったら――」


 目が鋭くなる。


「吸収する暇ごと潰す!!」


 次の瞬間、距離が消えた。


「爆震拳!!」


 さらに一撃。


 止まらない。


「終わりじゃねえぞ……!」


 腹、肩、顎、脇腹。


 間髪入れずに叩き込む。


「爆震拳――連牙!!」


 連撃。


 何重にも重なる内部破壊。


 だが――


 すべて、流される。


 男の体表が波打ち、衝撃を逃がしていく。


「無駄だ」


 静かな声。


 次の瞬間。


 男の手のひらが、ガイの胸に触れた。


 その瞬間。


 ドォンッ!!


 蓄積された衝撃が一気に解放される。


 ガイの巨体が後方へ弾き飛ばされる。


 地面を削りながら滑り、ようやく止まる。


 未来の喉が鳴る。


 真正面からの力比べで、押された。


 その現実が、重くのしかかる。


 その視界の端で、別の違和感があった。


 爆音が響いているはずなのに、そこだけ妙に静かだった。


 白嶺ゆいが立っている。


 その前に、侵入者。


 男が踏み出そうとして――止まる。


「……なんなんだよ」


 声が震える。


 ゆいは、ただ見ている。


 それだけで、男の呼吸が乱れる。


 視線が泳ぐ。


 足が動かない。


 見えない何かに縛られているように。


「来ないの?」


 その一言で。


 男の膝が崩れた。


 そのまま倒れる。


 ぴくりとも動かない。


 何もしていない。


 だが、戦闘は終わっていた。


 ぞくり、と背筋が冷える。


 未来は振り向いた。


 瓦礫の影から、男が現れる。


 一歩。


 それだけで、空気が沈む。


 足音が重い。


 踏みしめるたび、空間が押し下げられるような圧。


 その視線が、未来を捉える。


「……いた」


 短い声。


「標的、確定」


 その瞬間。


 地面に灰色の紋様が広がった。


 円形の領域。


 静かに、だが確実に三人を包み込む。


 空気が変わる。


 重い。


 ただの圧じゃない。


 動きが、遅れる。


「……っ!?」


 未来の足が止まる。


 ひかりも同じだった。


「なにこれ……!」


 腕を上げるだけで遅れる。


 呼吸すら重い。


 ハヤトが叫ぶ。


「領域だ!」


「速度そのものを落としてる!」


 男がわずかに笑う。


「その通り」


「この領域内じゃ、お前らは遅い」


 踏み込まれる。


 速い。


 いや――違う。


 こちらが遅い。


 ひかりが動く。


「ステップ!」


 光が弾ける。


 だが、伸びない。


 身体が空気に絡め取られる。


「くっ……!」


 拳が迫る。


 避ける。


 間に合わない。


 ドンッ!!


 直撃。


 ひかりが吹き飛ぶ。


「ひかり!!」


 ひかりが吹き飛ぶ。


「ひかり!!」


 未来が踏み込もうとする。


 だが、遅い。


 間に合わない


 いや。


「一秒!」


 踏み込む。


 腕を交差する。


 全てを、防御に。


 筋肉が軋む。


 骨が悲鳴を上げる。


 それでも。


 受け止める。


 ドンッ!!


 衝撃が爆ぜる。


 地面が割れる。


 だが、崩れない。


 未来は踏み止まる。


(防いだ……!)


 一瞬の静寂。


 男の目がわずかに細くなる。


「……なるほど」


 だが、その瞬間。


 力が抜ける。


 時間が切れる。


(……まずい)


 体が重くなる。


 動けない。


 男が、すぐに次の一歩を踏み込む。


 速い。


 いや――違う。


 こちらが、遅い。


 拳が振られる。


 避けられない。


 ドンッ!!


 未来の身体が叩きつけられる。


 呼吸ができない。


 男の声が落ちる。


「読めても意味ないんだって」


 ハヤトが踏み込む。


 読む。


 すべて見える。


 だから分かる。


 避けられない。


 それでも動こうとする。


 その瞬間。


 ドンッ!!


 吹き飛ばされる。


 三人とも倒れる。


 動けない。


 男が歩いてくる。


「終わりだ」


 未来は動けない。


 ひかりも動けない。


 ハヤトも動けない。


 完全に詰み。


 その中で残るもの。


 悔しさ。


 それだけだった。



第12話


1秒の限界突破


第11話まで読んでいただきありがとうございます。


今回は、かなり厳しい展開になりました。


これまで積み上げてきた

•ひかりのスピード

•ハヤトの観察

•未来の一秒


そのすべてが通用しない状況を描いています。


「読めても意味がない」

「速くても間に合わない」


この状態が、今回の戦いの本質です。


そしてラスト――

完全に追い詰められた中で、未来が何を見つけるのか。


次回、第12話「1秒の限界突破」


ここから一気に流れが変わります。


少しでも面白いと感じていただけたら、

ブックマークや評価で応援いただけると励みになります。


引き続きよろしくお願いします。

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