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モグラのちかちゃんと、とろとろの星  作者: 月祢美コウタ


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1/1

モグラのちかちゃんと、とろとろの星

地面の下で暮らすモグラのちかちゃんは、ちょっぴりあまのじゃくです。  


地上のネズミがやってきて、また自慢話を始めました。

「ねえちかちゃん、知ってる? お空の星って、

レモンキャンディみたいにきらきら光るんだよ」  


 ちかちゃんは、プイッと顔を背けます。

「ふん。まぶしいなんて目が痛いだけじゃないか」  

 ちかちゃんは強がりを言って、鼻を鳴らしました。


「ぼくは、土のなかで甘くなったサツマイモの根っこのほうが、

 よっぽど好きだね」  

 そう言ってちかちゃんは、今日もくらやみを掘り進めます。  


ザッ、ザッ、ザッ。  

ザッ、ザッ、ザッ。  


 きらきらなんて、おなかの足しにもなりゃしない。  

ちかちゃんは、だれにも見つけてもらえない寂しさを、

土と一緒に掘り返していました。


「空の星がなんだ。ぼくだって、地面の中ですごい『きらきら』を

 見つけてやる」  

 ちかちゃんは、いつもより深く掘り進めることにしました。  


ザッ、ザッ、ザッ。  


 すると、ピカッと光るものを見つけました。

「あった!」  

 それは、硬いカナブンの羽や、誰かが落としたガラスのかけらでした。

「これならネズミに勝てるかも!」  

 ちかちゃんは少し得意になりました。  

でも、くらやみの中でそれを見つめても、ネズミの言うように

「自分から光る」ことはありません。  

 ちかちゃんは、また少しがっかりしました。


 それでもちかちゃんはあきらめず、もっともっと深く、

大昔の地層まで掘り進めました。  


ザッ、ザッ、ザッ。  

ガチンッ!  

 爪先に、今までで一番硬い手応えがありました。  

掘り出してみると、それは透き通った石の塊でした。

「うわあ、きれいな石……」  

 そう思った瞬間です。  

触れた指先が、ビリビリとしびれました。  

 それは普通の石ではなく、何億年も前の冬を閉じ込めた

「氷の化石」だったのです。

「ひゃっ、つめたい!」  

 驚いて手を離そうとしましたが、氷はツルリと滑ってしまいました。  

 ポロリ。  


氷の塊は、ちかちゃんのふかふかのおなかの上に落ちてしまいました。


「ひゃあっ! 冷たいよお!」  

 あまりの冷たさに、ちかちゃんは動けなくなりました。  

 氷がおなかの毛にピタリと張り付いて、どうしても取れません。  


ヒヤッ、ヒヤッ。  


 冷たさが、おなかの皮を通って伝わってきます。

「あっち行け! この、つめたい石ころ!」  

 ちかちゃんは必死にもがきました。  

おなかを地面にこすりつけ、全身を使ってゴロゴロ転げ回りました。  

まるで、ひとりでおしくらまんじゅうをしているみたいです。  


 けれど、暴れれば暴れるほど、氷は冷たく重くのしかかります。  

せっかく見つけた宝物が、自分を傷つけるだけのただの氷だったなんて。

「ぼくにはやっぱり、きらきらなんて似合わないんだ……」


 とうとう、ちかちゃんは疲れ果てて動けなくなりました。  

 穴の中はシーンと静まり返り、真っ暗です。  

氷の冷たさが、ビリビリと体の芯までしみてきます。


(寒いよう。寂しいよう。このまま凍って、土の一部になっちゃうのかな)  


 ちかちゃんは、目をつぶり、自分の体を守るようにギュッと小さく

丸まりました。  

それは、すべてをあきらめた、小さくて孤独な姿でした。


 丸まって震えていると、一生懸命あばれたおかげで、

自分の体温が少しずつ戻ってきました。  

 おなかが、ポカポカしてきました。  

 ちかちゃんは思いました。


(氷を追い払おうとするから辛いんだ。

 ……そうだ、ぼくの体温で、この冷たい石を温めてあげよう)  


 ちかちゃんは、敵だと思っていた氷を、

おなかと太ももで優しく包み込みました。  

そして、小さく歌うように唱えました。


「あったまれ、あったまれ」

「とろとろ、とろ〜ん」  


自分自身に言い聞かせるように、じっと温め続けました。


「あったまれ、あったまれ」

「とろとろ、とろ〜ん」  


 すると、おなかと石の間で、不思議なことが起こり始めます。  

カチコチだった氷の角が取れ、トロリと形を変え始めました。  

 痛みのような冷たさが、じんわりとした温かさに変わっていきます。

(あれ? なんだか、くすぐったいぞ)


 くらやみの中で、ちかちゃんはそっと目を開けました。  

そこには、奇跡が起きていました。  


 トプン。  


 ちかちゃんの体温で溶けた氷が、とろとろの不思議な水になり、

ボウッと青白く発光し始めたのです。  

 ちかちゃんが指でつつくと、光る水はハチミツみたいに、

とろ〜りと指に絡みつきました。


「うわあ……」  

 穴の壁も、天井も、ちかちゃんの泥だらけの爪も、

すべてが青く輝いています。  

 それは、空にある遠い星ではなく、ちかちゃんの体温が生み出した、

優しい光でした。  


そこへ、ネズミが心配してやってきました。

「ちかちゃん、大丈夫……わあ! すごい!」  

 ネズミは目を輝かせました。


「お空の星より、ずっと近くて温かそうだ!」  

 ちかちゃんは、光るしずくでおなかを濡らしながら、

もう強がりではなく、本当の笑顔で答えました。


「すごいでしょ」  

 ちかちゃんは、とろとろ光るおなかを、ポンと叩きました。


「これはね、ぼくの体温ねつでとろ〜り溶かした、できたての星さ」


最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

「冬の童話祭2026」参加作品です。


今年のテーマは「きらきら」。

空にある遠い星のきらめきも素敵ですが、寒い冬には、

自分の体温で生み出す

「温かいきらきら」があってもいいなと思い、このお話を書きました。


モグラのちかちゃんの小さな灯りが、皆様の心にもポッと灯れば嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
 周りをおしのけ遠ざけてばかりでなく、痛みや冷たさなどを一時的にでもこらえ受け止めた先に引き出した、素敵な輝き。 読んでるこちらの心まで煌めきが宿りそうなお話でした。
展開が読めず、途中ハラハラドキドキしました…! ちかちゃん、めちゃくちゃかわいいですね…セリフも地の文も出来事も、全てが"これぞ童話"!という感じで、ホワホワと暖かい気持ちになりました。 素敵な物語を…
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