第五章51:真剣勝負
勉勉:『無意の発動だったのか……まあいい!どうあれ、今日はここでお前たちを葬る!』
その言葉に、詩钦は雪鱗を支え起こした……
「ちょうどいい、君を頼りに強くなりたいからね!手加減、頼むよ!」
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〈詩钦視点〉
そう言った直後、仮面をかぶった勉勉が突然目の前に突進してきて、剣を振り下ろしてきた!
避けようとしたその時――背後から冷たい気配を感じた!
そう、今、俺は肉体と透明の本体に挟まれているのだ!
勉勉:『乄・双吟悯宁!』
次の瞬間、勉勉の肉体と透明の本体の攻撃がぶつかり合う!
『ドン!!』
「やばい!」
その衝突により空間がねじれ、なんとブラックホールが生まれ、周囲のすべてを貪欲に吸い込み始めた!
『ゴォオオオオオオオ!!!!!』
暴風と豪雨が雪鱗の意識を削っていく……
希望さえも、乄の前では、粉々に砕かれていくかのようだった……
この夸張された乄は……
二十秒以上も続いた……
天地の異象も、ブラックホールが消えるまで……
収まらなかった……
……
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〈雪鱗視点〉
雪鱗:「詩钦!」
彼女は消えた詩钦を見て、恐怖と焦りが胸を襲った!
何故なら、彼女たちは一度も勉勉の乄を見たことがなかったから、詩钦がこれほど近い距離で回避できるはずがなかったのだ!
そして今、確かに彼女は消えたのだ!
どこにも見つからない!
雪鱗:「まさか……」
この乄が生み出したブラックホールに……
詩钦が吸い込まれたのでは?!
勉勉:『久々にこの乄を使ったが……もう数年前の全盛の力はないか……』
雪鱗:「詩钦をどこへやったの!」
勉勉はその言葉を聞き、なぜか呆然と雪鱗を見つめ――
勉勉:『俺が知ってるとでも思ったのか?』
雪鱗:「……」
……
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〈詩钦視点〉
Hi!
雪鱗が私を見た……
ゆっくり歩いて……
ゆっくり……
よし……
勉勉に最も近づいた位置へ……
少し力を溜めて……
一気に――
『ドン!』
私は奇襲で、勉勉の腰を思いっきり蹴飛ばした!
勉勉:『なっっっっ!!!!!』
次の瞬間、彼は豪快に吹き飛ばされる!
『ドン!ドン!ドン!ドン!!!!』
木を三本ぶち壊し、さらに大岩をひしゃげさせて――
……
「ふぅ、危なかった~!」
あのブラックホールが皆の視線を乱している間に、岩の後ろに隠れていたのだ!
雪鱗:「詩钦、大丈夫だったの!」
「うん、でも君の太刀が……」
あぁ、僕のせいで……
大事にしていた太刀が……
壊れてしまった……
……
雪鱗:「太刀?ここにあるよ?」
その言葉に、声のする方を向くと……
……
「え?さっき折れてなかったか?!」
なんで、あの太刀が元通りに?!
職人が直してくれた……ってわけないよな?
雪鱗:「ちょっとした傷なら、太刀は自動で修復されるよ」
「……」
雪鱗:「君の剣はしないの?」
「What??」
表情が「???」で固まる俺……
その時――声が響いた……
太刀の残魂:『お前バカか?太刀が自動修復なんかするわけねーだろ!』
雪鱗:「まだいたんだ」
太刀の残魂:『当たり前だ!俺がいたからこそだよ!でなきゃお前の太刀、もうバラバラだったわ!ってか……おいおい……あの無罪の主宰、無視していいのかよ?』
「ん?」
『ドン……』
『ドン!!!』
勉勉が石の破片の中から立ち上がる!
勉勉:『ゴホッ……神造者……お前、何をした?なぜあんな破壊力が?』
「ん~?」
「教えなーい♪」
勉勉:『貴様ーーーっ!!』
俺の体はデータではない。だからこの世界の酸素は吸えない。吸えるのは「濁気」だけ……
そして魔法も修仙も符文も使えない。
だが、別の道がある……
乄以外にも、
俺には「武学」がある!
武学は肉体の強化であり、修仙のような外力とは違う。
俺がさっき使ったのは《蓄力訣》。
溜めれば溜めるほど、次の一撃の威力が上がる!
でもこれは残巻で、品階は不明……
ただ、普通よりはるかに上だとは確かだ。
……
勉勉:『ならばこれも受けてみろ!!』
魔化雪鱗:『詩钦、時間を稼ぐよ/この子、ほんと自分の体を気にしないなぁ!』
さすが雪鱗、俺の武学の仕組みを一目で理解した……
いいぞ、期待に応えなきゃな!
蓄力中は、心の波を静め、敵の防御の隙を探れる。
そして、隙を突いて――一撃必殺!
逃げるにも、技を避けるにも蓄力は有効!
数秒溜めれば、それで十分だ。
まだ考えている途中――
勉勉が怒りに任せて雪鱗を斬り飛ばす!攻勢を完全に制圧!
勉勉:『どけ!!』
『ドン!ドン!ドン!ドン!!!』
雪鱗、再び吹き飛ばされる!
だが、俺はその隙に――乄・独占を放つ!
勉勉:『なにっ!』
独占に加え、7秒以上の蓄力……
その威力、まるで別物!
その一撃により、勉勉はなんと――3秒も硬直した!
そして、その間に雪鱗は神言を詠唱し始める!
魔化雪鱗:『逝者は灰となり、生者は俗界に入り、世は常なり、』
神言と魔化による斬撃が決まれば――
勉勉にも大打撃のはず!
勉勉:『もういい……』
次の瞬間、勉勉はその場で舌を噛み――昏倒!!
「えっ?!」
その後……
それきり……
数分が経っても、彼の肉体は現れなかった……
……
俺は乄を収めた。
「逃げたのか?」
雪鱗も神言の詠唱を止め、魔化を解除した。
けれど、俺は警戒を解かず、蓄力を続けていた……
雪鱗:「でも、彼にはまだ切り札があるみたい……」
太刀の残魂:『そりゃそうだ、あいつは救援を呼びに行ったんだよ!普通の無罪の主宰ってのは信者に守られてんのさ!』
「つまり、助けを?」
太刀の残魂:『話しかけんな、頼むから。』
「???」
雪鱗:「ごめんね、なんでそんなに詩钦を怖がるんだろ……」
太刀の残魂:『お前……何言ってんだ……俺はな、俺は会いたいんだよ……』
!!!!!!!!!!!!
太刀の残魂:『避けろっ!!』
『ドン!!!!!!』
次の瞬間、俺と雪鱗はとっさに飛びのいた!
そして、二人の間の草地が、目に見えない何かで大きく切り裂かれた!
「まさか……」
太刀の残魂:『やれやれ……今度は透明な本体で戦ってきたな。もう、あいつは見えないぞ!』




