第四章43:私はただ、あなたに尋ねたかっただけ
〈詩欽視点〉
婆婆:「お前の未来を観測する力は神がかっている。まるでその場にいたかのように描写できるとは……」
「えっ……」
婆婆:「失礼だが、一つ聞いてもいいか?未来を観測する能力、それは異瞳の力なのか?」
?_?
「異瞳?……異瞳って何?」
婆婆:「知らないのか?」
……
離がお茶を運んできて……
そして婆婆は離を呼んで、一緒にお茶を飲みながら……
ずっと保管してきた古書を取り出し……
異瞳に関するページを開き……
私に静かに語り始めた……
婆婆:「異瞳とは特別な能力だ。先天的なものもあるが、後天的な場合は大抵、強烈な負の感情——恐怖、喪失、怒りなどが引き金になる……」
「私にそんな強い感情なんて……あった?」
よく思い出してみても、そんな経験はなかったはずなのに……
でも、はっきり覚えている最初の記憶では——
初めて“死”の予言を聞いた時、そして“父”に別れを告げたその瞬間……
あのとき、私は確かに「死」を経験していた……
それで恐怖のあまり、異瞳が生まれたのかも?
「じゃあ私は、恐怖から異瞳が芽生えたの?」
婆婆:「この古書に記されている内容からすると、その可能性は非常に高い。」
離は黙って私の話を聞きながら、ぽつりと呟いた:「こわ…い……」
離の呟きは耳に入ったが、私は深く気にしなかった。きっとただの好奇心だろう……
「婆婆、異瞳にはどんな能力があるの?」
婆婆:「うーん……異瞳の能力は人それぞれ違うのよ……あなたの場合、自分で思い出すしかないかもしれない。もうすでに発動してる可能性もあるから……」
その言葉に、少し考える……
まさか、「輪廻復活」の力か?
婆婆:「もしかして、未来を観測する力なのかしら?」
(未来観測=輪廻復活の偽装)
(輪廻復活とは言えないため)
もし婆婆が私の異瞳能力を未来観測だと思っているのなら、つまり輪廻復活だと察しているということ……
婆婆:「乄とは魂に刻まれた力。そしてあなたの乄は“制御”。ならば、未来を観測する力こそ、あなたの異瞳の能力かもしれない。」
「……私もそう思う」
婆婆:「ただ……他の力である可能性もある。まだ気づいていないか、未だに発動していないだけかもね……」
つまり、私のこの異瞳の能力は、まだ「不明(X)」ということか……
気になった私は古書に目を落とした……
「異瞳の姿は人によって違うの?」
婆婆:「そうよ。だからすべての異瞳は唯一無二の存在なの。」
「じゃあ私の異瞳はどんな見た目なの?」
婆婆:「たぶん……渦のように深く、底知れぬ闇……魚人族の目のように空虚で深淵、だけど少し違う……」
「うわ……なんか気持ち悪い。鏡ない?自分の目を見てみたい!」
婆婆は古書をめくりながら答えた:「異瞳は基本的に一時的に現れるもの。常にその姿を保っているわけではない。」
びっくりさせるような見た目なのか……
それに、そんな一回限りの現象だったの?
「じゃあ……」
婆婆:「異瞳は変化しない。ただ、普通の瞳孔に戻るだけなのよ。」
「……なるほど……」
離はお茶を啜りながら、私と四長老(婆婆)のやりとりを静かに見つめていた……
私たちの話が終わるまで……
そして私が婆婆の帳から出ていくまで……
……
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……
〈帳を出た後〉
〈詩欽視点〉
異瞳についての話を終え、私は四長老(婆婆)に別れを告げ、帳を後にした……
ほんの数歩進んだところで、離が再び私の後ろについてくる……
「……」
明日には天道が滅びを連れてくる。
この世界での離との関係が浅くても、もう無駄な時間は過ごしたくなかった!
そう思って、私は勢いよく振り返った!
すると、離もまた同時に早足で私の前に立ちはだかった!
その急な接近に思わず数歩後ずさりする……
「うっ……」
離はうつむきながら尋ねた:「少し、聞きたいことがあって……」
彼女がここまで積極的だと、私もこれ以上、他人のふりはできない……
「うん?」
離:「歩きながら話さない?宗門の中を案内するよ……」
は?
もうここに来て三日目だよ。宗門の地形はとっくに覚えたし……
でもまあ、彼女が案内してくれるなら、それは悪くない兆し……
「いいよ。」
……
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……
〈離と共に〉
〈詩欽視点〉
私はそのまま、離に連れられ、宗門の中を歩き始めた……
けれど五分ほど歩いても、彼女は一言も質問してこない……
「……あの、何を聞きたいの?」
私の疑問に、離はふと立ち止まり……
離:「婆婆から聞いたの。私が宗主の子だってこと……」
うん……
やっぱり四長老(婆婆)は離に伝えてたか……
彼女が事前に知ってる方が都合が良い……
離:「それに……宗主はもう亡くなったってことも……」
「うん。」
離:「だから……」
そう言いながら、突然、一振りの剣が私の首元へと振り下ろされた!!!
『ヴォン!!!!!』
離:「聞きたいことがあるの……」
「危ない!!」
私はとっさに身をかわして、その剣撃を回避!
そして、その剣を振るったのは——離だった!
「なにしてるの!?」
離:「ごめん。ただ、確かめたかったの……」
離:「母(宗主)を失ったのは……あなたのせいなのかって!」
……
くっ!
まさか……ずっと私のことを疑って、つけ回してたのか!
本当に……気分が悪い!
けど、それは彼女の不幸……
それに、情報を話したのは私自身……
しかも、宗主のことをよく知ってる私の態度……
誤解されるのも無理はない……
だから私は自分の潔白を証明するしかなかった……
「私は未来を観測する能力(輪廻復活)で知っただけで、目撃したわけでも、犯人でもない!」
「ちゃんと確認してから手を出してよね!」
離は剣を納めた:「ごめん。ただ、あなたの腕前を見てみたかっただけ……」
「はぁ……」
「それが目的なら、もう一緒に宗門を歩く意味もないわね。」
そう言って、私はその場を離れた……
たしかに私は疑われる立場だった……
でも、信じてくれてた人にまで疑われるなんて……
やっぱり、胸が痛む……
声の調子まで、棘を含むようになってしまった……
一人の方がいい……
もうこれ以上、争いを増やす必要はない……
……
数歩進んだそのとき……
ふと立ち止まり、
なぜか、衣の裾が軽く引かれる感触……
振り向くと、
そこには、私の服をつかんでいる離がいた……
「まだ、何か疑ってるの?」
だめだ……
感情が荒れて、つい、きつい口調になってしまった……
離:「……」
離:「ちがうの……」
離:「ただ、伝えたかっただけ……」
離:「ごめんなさい、師姐!」
……
「えっ?????????」




