第四章41:褒めすぎるのも良くないぞ昂
詩钦は大雨の未明、秘密の会議を開いている長老たちを見つけた……
この時間軸では、長老たちは護宗陣法の維持と修復を望んでいる……
しかし彼女は知っている、その結果がどれほど深刻になり得るかを……
なぜなら護宗陣法は天道によって強制的に破られ……
長老たちも重傷を負い、行動が難しくなる……
ましてや苦難にある弟子を救うことなどおぼつかない……
その結果、この没落した宗門が滅びへと向かってしまう……
そして彼女――
すべてを知る彼女――
離の幕引きを許したくない彼女――
命の恩人に報いようとする彼女――
この気丈な宗門を大切に思う彼女――
当然、やらねばならない――
いや、必ずや――
長老たちを説得する!!!
すべての災厄の起点は、彼らが頑として護宗陣法を維持しようとすることにある――
もし説得に成功すれば――
弟子も宗門も、長老の護りのもとで生き延びられる……
そして、あの聚魄境の巨大ムカデも、二度とこの宗門を傷つけられない――
ゆえに、彼女はそうすべきなのだ!
彼女は今、行動を起こさねばならない!
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〈詩钦視点〉
“私は神造者だからです!”
その言葉を放つと、長老たちは一瞬、黙り込んだ……
そして私はふと思い出した!
前世では、離は“神造者”が何者か知らなかったはずだ!!!
ならば、目の前の長老たちも“神造者”の意味がわからないに違いない!
どれほどの重みがある称号かはわからないが……
神秘的な響きだから、使ってみたのだ?
頼むから……
離:「婆婆、神造者って何?」
大長老:「聞いたこともない称号だな……」
二長老:「ふん、ただの脅しか嘘の方便だろ! それに“よそ者のくせに”と、しつこく邪魔しに来てるだろ!」
婆婆:「皆、まずは落ち着きましょう。」
婆婆:「神造者か……少しは知っているわ……」
三長老:「それは国の職ででもあるのか?」
婆婆:「違うのよ。」
婆婆:「むしろ、神造者は国家に縛られず、自由の化身なの。彼らは“仙明(神)”によって創られた身体と顔を持ち、外見からすでに凡人とは違うの。」
二長老:「嘘でしょ? この女、そんなに美しくもないし?」
“……”
婆婆:「しかも歴史上、二人の神造者が出たことがあるの。その二人とも、片手一振りで国を滅ぼせる存在だったのよ。」
三長老:「あ……」
二長老:「嘘だろ? だってこの娘、そんな強そうにも見えない!」
“……”
婆婆:「彼らが世を破滅に導く力を発揮したのは“乄”という能力を持っていたから!」
この言葉に、全員が後ずさりし、私は呆然と立ち尽くしていた……
二長老:「何だって? こいつも“乄”を使えるって? 見た目もヘタレなのに!」
“……”
(•‿•)
婆婆:「乄は無罪衆の無罪執掌主持だけのものじゃない。神造者も使えるし、その力はどの武力体系をも凌駕する“本物”よ。」
(.❛ᴗ❛.)
そんなに褒められると、ちょっと照れる……!
二長老:「それは嘘だ! だってこの娘は美しくも強くもないし、乄を使ったこともないくせに!」
ಠ益ಠ
……私はこの二長老に本当に腹が立っている!
……
婆婆:「でも覚えている? あの時彼女は無罪衆の執掌主持に追われていたの。あれだけ持ち堪えたんだから、弱くはないわ。」
婆婆:「しかも執掌主持に追われるほど相対する立場。敵対関係もあるってことよ!」
婆婆:「執掌主持と対等に渡り合える相手は、王国……そして神造者だけだったのよ!」
この言葉が出ると、誰も反論しなかった……
大長老:「四長老(婆婆)の言うとおりなら……」
大長老:「ひとまず彼女の意見を聞いて、取り入れてみましょうか?」
二長老:「……」
三長老:「異議ありません。」
こうして、円滑に決定された――
やはり四長老(婆婆)はすごい! 知識量が果てしない!
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こうして私は本格的に注目されてしまった。
この好機を活かし……
三日後に直面するであろう災厄を、きちんと説明しなければ!
大長老:「先ほど、三日後に聚魄境のムカデが宗門に侵入し、護宗陣法を維持してはならないと言ったわけだが……本当なんだろう?」
彼の記憶力、さすがに良すぎる……
「はい、その通りです。」
三長老:「そしてまだ言ったな……宗門の滅亡は“天意の流れ”、だから天道が破壊に来ると。間違いないか?」
本当に記憶良すぎ……
「はい、その通りです。」
婆婆:「長老たちも一人ずつ天道に殺されるって言ったのよね……」
そんなこと言ったかな……? 記憶が曖昧だ。
「はい、その通りです。」
……
婆婆:「ひとつ訊きたいんだけど……それは未来を直接見たのかしら?」
「え?」
もしかして彼女……予言って聞きたいの?
「違います。私は経験した———」
『(#-&$!“;$+$+(#&』
その言葉を口にした瞬間、視界が反転し……
次の瞬間、すぐ戻った!
明らかに、輪廻に関する発言を禁じる警告だ……!
婆婆:「大丈夫? 具合は……」
「すいません……未来を知っているのは事実ですが、観測とは違います……」
「どう説明すれば……」
婆婆:「わかったわ。それで――護宗大陣を維持し続けた場合、誰が生き延びるの? 何人残るのか教えて?」
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〈婆婆視点〉
この質問を投げかけた瞬間、婆婆の心に浮かんだ答えはただ一つ!
離以外、生き残れる者はいない――
彼女が示す答えが違えば、すべては偽りの予言と見なせる!
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〈詩钦視点〉
「未来に誰が生き残るの?」
「申し訳ないが、生き残るのはたった一人です。」
その言葉に、全員が驚きと共に息を呑んだ。
婆婆:「その生き残るのは誰だ?」
「……」
剣意のことを言えない……
「四長老(婆婆)、誰が生き残るかご承知のはずでは?」
少し曖昧に言うほうがいいか?
「そしてその者は天を指し、敵を数多斬り捨て、天道を退けるでしょう……」
この言葉に、婆婆はそれ以上問い詰めず、微笑んだ……
当然――
離の生存可能性は唯一にして最大だ。
彼女はぽかんとした顔で聞いていたが……
……
……
突然の静寂に気づき、振り返ると――
長老たちが全員、私の背後を見ていた。
好奇と緊張、そして警戒のまなざしだ!
まずい!!!
二長老がいつの間にか私の背後に回り、遂に――
二長老:「気を散らすな!」
そして――二長老の手には二本の短剣が――腹を貫こうとしていた!!
まずい!!!
近距離すぎる! 逃げられない!!!




