表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/23

第二章22:脅威の拡大

  章延がまたもや、私の乄を一気に貫いた!


  その衝撃で、私はその場に崩れ落ちる。


  ──でも、私はもう雪鱗の斬撃範囲の外にいた。


  そして──章延は……。


  彼はちょうど、その範囲の中にいたのだ!


  *章延、おしまいだ!!!*


  「クソッ、クソッ、クソッ!」


  状況の悪化を悟った章延は、魔刀でなんとか防ごうとする。


  「ドン!!!!!!!」


  今回の神言・抜刀斬も、変わらずの衝撃。


  私ですら、巻き込まれそうになった……!


  眩い刀光が空間を切り裂き、その後、章延は重く地面へと崩れ落ちた。


  私は勢いよく雪鱗の方を見たけれど──


  雪鱗の表情は、むしろさっきよりも沈んで見えた。


  怒っているわけでも、不快そうでもない。


  ……そこにあったのは、未練と哀しみの色。


  なぜ、彼女がそんな顔をしているのか……私にはわからなかった。


  だから、私はただ黙って見つめていた。


  ……


  …………


  雪鱗がようやく言葉を紡ぐ。「ごめん……怒ってたわけじゃないの」


  彼女が自ら話し出したことで、私は軽くうなずく。


  彼女は何も言わず、ただ腰に携えた太刀を見せてきた。


  雪鱗:「この太刀……これは兄の子供の頃の誕生日プレゼントで……そして兄が一番望まなかった贈り物……」


  私は、その言葉に少し戸惑った。


  「……どうして?」


  雪鱗:「その贈り物が……兄から、大切な仲間の命を永遠に奪ってしまったの……それ以来、兄はもう二度と剣を振りたがらなかった」


  その話を聞いて、私は言葉を失い、ただ静かに心で理解しようとした。


  雪鱗:「……信じられないかもしれないけど、さっき神言を唱えていたとき、兄の仲間の魂が一瞬……見えたの」


  その一言に、私は思わず息を呑んだ。


  雪鱗:「でも、それはほんの一瞬だけで……」


  「……何か、言ってたの?」


  雪鱗:「……魂って、話せないんじゃないかな?」


  *……ということは、何も言わなかったのか……?*


  そう思いつつ、私は周囲の様子に目を向けた。


  「さっきの斬撃で壊れた壁の向こう、道があるかも。行ってみよう?」


  雪鱗:「……いいよ。ついていく」


  そして、私は彼女を先導して歩き出した。


  ••••••••••••••••••••••••••••••


  〈雪鱗視点〉


  ──けれど、腰の太刀は静かに紫の瘴気を漂わせていた。


  そして、彼女だけに届く声が響く──


  『認めない……許せない……』


  『怒りが収まらない……復讐したい……』


  太刀から溢れ出るその呪詛は、どんどんうるさくなっていく──


  もう、我慢できない!


  雪鱗:「……黙れ!!」


  ••••••••••••••••••••••••••••••


  〈詩钦視点〉


  突然の怒号に、私はびくっと身体を震わせた。


  けれど──さっきまで、何も聞こえなかったはず……?


  *私は……何も言ってないよね?*


  雪鱗:「ごめん、あなたに怒ったわけじゃないの……」


  「ううん、大丈夫。先に進もう」


  ──私は内心、彼女が二重人格か何かじゃないかと疑いながら、遺跡の奥へと足を進めた。


  ……


  ……


  ──すると、しばらくして。


  背後にある章延の亡骸のあたりから、何人かの話し声が聞こえてきた。


  ??:「任務どおり、血刀だけを回収。他は無視。」


  ??:「了解。」


  ??:「輪廻に罪なし。願わくば……」


  その会話を聞いて、雪鱗が表情を険しくする。「どうしてあの人たちが……!」


  「誰のこと?」


  雪鱗:「シーッ、早く!逃げるよ!」


  何が起きたのかわからないまま、私は彼女と共に駆け出した。


  ……


  ……


  どれほど走ったのかもわからない。


  やっとのことで、遺跡の出口が見えてきた。


  走る途中で、雪鱗がさっきの集団の正体を教えてくれた。


  ──それは、この世界で最も恐れられる存在、


  『無罪衆』!!!


  無罪衆の階級構成:


  1.無罪三廷(操る者たち)


  2.無罪執掌主持(最強の12人)


  3.峰位信徒(主持に従う)


  4.常位信徒


  さっきの者たちはその信徒であり、中に一人は峰位だったかもしれない。


  そして彼らは、任務の指令に従い、ただ動くだけ。


  その任務の指令元こそが──無罪執掌主持!!


  「それなら、早く外に出て逃げなきゃ!」


  ……そう言う私を、雪鱗が制した。


  雪鱗:「遺跡の出入り口には、すでに無罪衆がいるかもしれない。もしかすると……執掌主持も。」


  雪鱗:「最悪、修仙者や使者、長老たちがすでに戦闘している可能性もある……」


  「……じゃあ、どこにいても詰みじゃん……」


  雪鱗:「……まず私が様子を見てくる」


  彼女はそう言い残し、外へと一人で歩いていった。


  ……


  ……


  ──けれど、いくら待っても帰ってこない。


  私は不安に駆られ、自分の足で様子を見に出た。


  ──そして、目に入った光景に、息を飲んだ。


  結界が破壊され、修仙者たちの亡骸が辺り一面に転がっていた。


  一本の大きな木杭に、長老の体が貫かれ、地面に打ちつけられていた。


  だが、彼はまだかすかに息があった。


  長老:「げほっ……あいつは……怪物……」


  「誰のこと? 一体誰が?」


  長老:「お前は……侵入者か……」


  長老:「お前たちのせいだ! 咳っ……あいつらを……招き入れたのは……」


  「そんな……私、何も知らない……!」


  長老:「言い訳は不要……まだ心に善が残っているなら……弟子を、頼む……」


  ──命の終わりに、なおも弟子を案じる長老の言葉が、私の胸を突いた。


  「……わかった。できる限り助けてみせる。……でも、あなたを傷つけたのは誰?」


  長老:「ふふ……そんなの、決まってるだろ……無罪衆……その……執掌主持……」


  「執掌主持が来てるの……!?」


  その言葉を最後に、長老の光は消えた。


  私は、彼の遺志を継ぐことを決意した。


  ──けれど、今一番優先すべきは……姿を消した雪鱗!


  『まさか、俺が──』


  『お前に最初に出会う主持になるとはなぁ……』


  その声に、私は顔を向けた。


  そこにいたのは、少年の姿をした者。


  肌は異様に白く、深いクマが目元を覆っていた。


  彼はあくびをして……


  眠そうな顔で立っていた。


  「……あなたは誰?」


  『ようこそ、神造者……』


  『俺は……』


  『ふぁぁ~~~~……』


  ……名前を名乗る前に、彼は芝に倒れ込み、眠り始める。


  目をこすりながら、またあくび。


  「ふざけないで! 雪鱗はどこに行ったのよ!」


  『ふぁ~~~~……そんなに焦るなって……』


  『人生、つまらないと思わないか?』


  『どうせ、皆いつかは死ぬ……』


  『どうせ、忘れ去られる……』


  『努力なんて……無駄だろ……』


  『ふぁ~~~~……』


  「それでもいいから、名前を名乗りなさい!」


  『俺の名前……?』


  『俺の名前は……』


  『勉勉べんべん……』


  「眠眠みんみん……?」


  『俺は無罪執掌主持……』


  『担当する罪は……』


  『慢心──』


  こいつが、まさかの……無罪執掌主持!


  そして、その名が意味する通り。


  彼の担当は──『慢心の罪』!


  ──まずい……これは本当に、まずい……。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ