第二章20:入魔
〈詩钦の視点〉
まさにこの危機的瞬間――花弁獅子が再びレーザーをチャージし始めた――
「終わった……終わったぁ……」
絶望の中、私は静かに目を閉じ、死を受け入れる覚悟をした――
『焦らないでよ〜』
『なんでそんなにあっさり目を閉じて死を待ってるの?』
『自分が無能じゃないことを証明するんじゃなかったの?』
!!!!!!!!!!!
*誰!?*
その声に、私は思わず周囲を見回し、声の主を探そうとした。
だが、その前に花弁獅子の断末魔が耳元に響いた!
そちらに意識が集中する。
遠くの花弁獅子は、なんとすでに真っ二つになっていた!
「花弁獅子が……殺された!?」
私は慌てて、その人物の姿を探し回った。
『何を探してるの?』
再び届いた女の声。その瞬間、私は彼女を見つけた。
黒いローブに全身を包み、目立つエルフの耳を持つ女――!
「あなたは……誰?」
問いかけた直後、なんとあちこちに、同じ姿・同じ服装の女たちが現れた!
「五人……!?五人も同じ人がいるの!?」
まさか……伝説の影分身の術?
あの人、まさか忍者なの?
『違うわ。』
女たちの答えに、私の背筋はぞくりと凍った!
『私たちは――』
五人は中心に集まり、冷たい視線で私を見据えた。
『あなたの未来よ。』
……え?
彼女たちが私の未来?
冗談でしょ、私はエルフじゃないし……
それに私は一人っ子……
『私たちは元からエルフじゃないわ。』
*こいつ……私の心の声が聞こえてる!?*
彼女たちは私の思考を読み取っているかのようで、私のどんな行動も見抜かれていた。
その「未来」という存在に対し、私は恐怖で足がすくみ、周囲を必死に見回して逃げ道を探し始めた。
『私たちも、かつては逃げたかった。』
……え?
私の意図が見抜かれたことに、目線を止めるしかなかった。
『私たちも、かつて未来に出会ったの。』
いったい彼女たちは何者……
『私たちも、かつては混乱していた。』
『そして……』
『かつては、無視してしまったの。』
『あの死を……』
??????????
*あの死?*
疑問が芽生えた瞬間、五人の女たちは突然融合し、一人の姿となった……
その合体の瞬間、彼女の体は黄金の輝きに包まれた。
*こんなのが……私の未来?*
すると、黄金の女がゆっくりと口を開いた。
『あなた、かつて尋融杏と共に刺客の手で死んだことがあるわね?』
その言葉に、私の心に忘れかけていた死の記憶が突如として蘇った――!
*なぜそれを知っているの!?*
『なぜなら、私たちはあなただから。』
『そして、あなたは復活を軽んじた。』
『その復活を、ただの輪廻の一つとして片付けた。』
「……奇跡じゃなかったの?」
『ふん……』
『今のあなたのことはよくわかっている。』
『あなたは、乄の使い方をまだ理解していない。』
ここまで言われてしまえば、私はもうこの黄金の存在を信じるしかなかった。もしかしたら、本当に未来の私なのかもしれない……
「それじゃあ……乄はどう使えばいいの?」
……
『私たちの乄……』
『その名は【独占】……』
*独占?なんか病み系っぽい名前……*
『この二文字を口にすれば、それで発動できるわ。』
そんな簡単な発動条件だというので、私は小声でそっと言ってみた。「独占……?」
次の瞬間、足元からとてつもない気流が吹き上がった!!!
――でも、何も感じない……
破壊力なんて皆無。
塵一つ舞い上がってないじゃん……
「私の乄って……何に使うの?こんなに弱いの?あの化け物みたいな執掌主持たちもこの程度なの?」
黄金の女は答えず、ただ微笑んだ。
『使い方がわかったようね。』
『なら、私たちはもう戻るわ。』
「ま、待って!まだ何も説明されて――」
『ただし、一つだけ気をつけて。』
『下に狂犬がいるの。』
「……狂犬?」
彼女は私の疑問を無視し、指でカウントダウンを始めた。
七。
六。
五。
四。
三。
二。
一。
『ドンッ!!!!!!!!!』
突然、足元の床が崩れた!
私は悲鳴を上げながら下へ落ちていく!
だが女は落ちる気配すらなく、ただ同情に満ちた目で私を見つめていた……
*……本当に、彼女は私の未来なの?*
その疑問を抱く間もなく、頭上の床までもが崩壊し――!
雪鱗が、上層から落ちてきた!
だが彼女の目に、いつもの冷静さはなかった。
その顔にあったのは、明確な悲しみ……
*雪鱗……さっき、魔物にひどい目に遭ったの?*
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〈ダンジョン最下層〉
こうして、私たちはダンジョンの最深部に落ちてきた……
幸い、自然の緩衝材があったおかげで、バラバラ死体にならずに済んだ……
私は雪鱗を見て、心配そうに声をかけた。「雪鱗、大丈夫?」
雪鱗は少し沈黙してから、低く答えた。「ごめん……私は大丈夫。行こう……」
『ハハハハハハハハハハハハ!』
雪鱗:「気をつけて!」
「前方に誰かが!」
『ハハハハハハハハハハハハハ!』
雪鱗:「この声、章延だわ!」
その言葉に、私たちは警戒の構えをとった――
遠くの壁が、血のような剣気に切り裂かれる!
現れたのは――やっぱり章延だった!
だが彼の全身には、刺すような血の気が満ちていて、服もボロボロ!
「髪型まで変わってる!」
雪鱗:「彼、入魔してる!」
「はあっ!?」
章延の手には、見たことのない血紅色のギザギザした魔刀!
「まさか、その刀が……?」
あの刀には、確実に何かある!
『ハハハハハハハハハハハハ!』
章延:『ついにこの神刀を手に入れた!これで……俺は青空宗最強の弟子になるんだ!』
雪鱗:「詩钦、気をつけて。あの血刀……章延の欲望を無限に増幅させているみたい。」
『ハハハハハハハハハハハハハ!』
章延:『バカバカしい!お前みたいな小娘が口にすることなんて、全部妄言だ!』
怒りに任せて、章延は構えをとり、血気を爆発させる!
章延:『俺を認めないのか!俺を見下すのか!だったら――』
章延、こちらに突進しながら叫ぶ!
章延:『だったら……俺の血刀に、血を捧げてもらうぞ!!!』




