第一章02:吐息訣
今はもう三日後だが、両親はまだ【神造者】という身分に疑いを持っている。
しかし、他の医者を探すのも難しく、その医者に頼らざるを得なかった。
もし詩钦の【神造者】という身分が広まれば、命の危険にさらされることも避けられない!
特に【無罪衆】という組織が……
詩钦は両親が不在の間に、こっそり両親の部屋に入り……
机の上から数冊の本を見つけた……
「普通の武学?」
「隣に『世界故』という本もある?」
興味を持った詩钦は『世界故』を調べてみた……
その中には、この世界には多くの国があると書かれていた。例えば今いる【鶴逢国】という人間の国。
一つの種族に一つの国があり、人間は人の国、精霊には精霊国、妖精には妖精国など……
そして各国には【宗門】があり、鶴逢国には多くの人間の修仙宗門がある。
つまり、この世界には【修仙】があり、【仙法】も存在する。
また、凡人の【武学】もある。
武学は三つに分類されていて、【斗技】/【心法】/【軽功】だ。
さらにこの世界には他の戦闘体系も存在する:
例えば【魔法】や【呪文】など……
このようにこの世界には数えきれない武学体系がある。
どれだけの【霊宝】や【神器】が存在するかもわからない。
さらにもっと多くの武学体系が隠されているかもしれない。
……
しかし残念ながら、一人に与えられる天賦は一つだけだ。
例えば魔法を学ぶには、体内に魔力の巣という器官がなければならない。
これは魔力を吸収し蓄える器官だ。
修仙をするには、経脈が天地の霊気を吸収でき、且つ霊根を持っている必要がある。なければ無理だ。
さらに呪文を学ぶには、生まれつき陰体でなければならない。
だから、天賦が一つもない人は……
凡人として武学を学ぶしかない。
だが武学も侮れない。
……
実はこの世界にはもう一つの武学体系がある。
それが乄。
これは【無罪衆】の最強者だけが持つ力だ。
無罪衆は世界中の国々の大敵である。
なぜなら無罪衆は数えきれない人を殺し、
【悪事無罪、生きることが罪】という歪んだ理論を崇拝しているからだ。
仙明に反抗し、
国家ではない小さな村落までも【罪域】と呼び、
罪域に住む村人は無罪衆の定めたルールに従わなければならない。
つまり無罪衆に支配された悲惨な地域なのだ。
……
詩钦の視点に戻ると、彼女はまだ朦朧としていた。
「魔法の世界か修仙の世界に来ると思っていたけど、まさか両方ある世界だなんて……」
「さらに邪教【無罪衆】が世界の敵という展開まで……」
「それに武侠のような武学もあるなんて。」
「面白そうだ、武学を学びたい!」
そう考えながら詩钦は思案した……
「私の体内は魔力巣?それとも霊根?それとも生まれつき陰体?」
「まさか、天賦が何もないなんてことは……ははは……」
そう考え、詩钦は少し怖くなった。
だが転生者のパターンではないはずだよね?
けれど可能性は高いかもしれない。
母:「钦儿、どうして机の上に座っているの?」
両親が突然戻ってきて、詩钦は驚いた!
「えっと、本をちょっと見てみたくて……」
母は好奇心で近づき、開かれているページを見た。
母:「宗門?」
「お母さん、お母さん、あなたは何の体質なの?」
気まぐれな娘を見て、母は顔をそらし照れ笑いした。
母:「お父さんもお母さんも、天賦は持っていないのよ、はは……」
「えっ!?」
母:「でもがっかりしないで。机の上の武学を見てごらん?」
言われて詩钦はさっき見た普通の武学の本を見た。
「普通の武学?」
母:「そうよ。これは一番低い心法の武学だけど、練習してみたら?」
「え?じゃあ、どうしてもっと良い武学を買わなかったの?」
母:「どう思う?」
「わかった。今すぐこの心法を試してみる!」
詩钦は母の顔が曇っているのを見て、慌てて心法の本を手に取り、自分の部屋に走って戻った!
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約十分が経過し……
詩钦は心法のコツを掴み始めた。
「なるほど、吐く息と吸う息をこうやるんだ。学んだら体がずいぶん軽くなった気がする!」
「でもまだこの心法を使うのに慣れていない……」
「早く習慣にしなきゃ?」
詩钦は練習を続けた……
この普通の心法武学の名前は【吐息訣】で、江湖の基本技だ。
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深夜になっても詩钦は練習を続けた。
練習すればするほど効果が実感できた。
体が本当にどんどん軽くなっていく……
呼吸もリズムが良くなってきた……
さすが異世界、もっと武学を学びたい!強くなりたい!
そんな気持ちで詩钦は心法の練習を続けた……
『コンコンコン---------』
部屋の扉がノックされた。
詩钦は練習を終え、扉を開けた。
「お父さん?」
父:「お母さんから聞いたけど、ずっと吐息訣を練習しているのか?」
「はい!」
父:「調子はどうだ?練習は順調か?」
「とてもいいよ!呼吸がずっと楽になって、体も軽い!」
父:「そうか……」
「お父さん、他の武学もある?もっと学びたい!」
父は何も言わず、興味津々の娘を見つめた……
父は驚いて気づいた。娘はもう吐息訣をほぼマスターしていると!
父は黙っていられなくなった……
父:「钦儿、宗門に行って体質の検査を受けてみるか?」
「何を見に行くの?」
父:「体内に霊根があるかどうか試すんだ。」
「でもお父さんお母さんは霊根ないよね?」
父:「それでも試してみる価値はある。君は僕たちと違うかもしれない。」
「え?」
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父は詩钦に別れを告げて部屋の扉を閉め、ゆっくり自分の部屋へ戻った……
母:「あの人、詩钦はどうだった?」
父:「はあ……」
母:「どうしたの?」
父:「娘はもう吐息訣をほぼ習得した。」
聞いた母は驚いてベッドから飛び起きた!
母:「そんなはずない!この吐息訣は午後に渡したばかりよ!どうしてそんなに早く……」
父:「初めて武学を学ぶ人を多く見てきたが、間違いない。钦儿は確かにもうマスターしている。」
母:「もしかして……」
父:「钦儿は十年前とは違う。彼女の本来の性格はこんなに勤勉じゃなかった。」
母:「成長したのかしら?」
父:「そうだとしても、学習スピードが異常だ。」
母:「もしかして神造者の体だから?」
父:「明日、钦儿を連れて天賦検査に行こうと思う。」
母:「うん……」
父:「でも準備はしておけ。魂の乗っ取りや死体の話も珍しくないからな……」
母:「やめてよ!そういう不吉なこと言わないで!」