特に婚約破棄をされない悪役令嬢の話
「キャー!殿下!かっこいいです~!握手してくださ~い」
「え、握手?まあ、いいぞ」
「キャー!やったー」
最近、殿下の周りに悪い虫がついたわ。
あれはアリー、男爵令嬢ね。ピンク髪で目がチカチカする令嬢ね。
だから、注意をした。
「アリー様、私は殿下の婚約者ですわ。婚約者のいる殿方に近づかないで下さいませ」
すると、アリーは大げさに驚き。
「エエエエーーーー!そうなんですか?」
「そうよ。私は公爵家、貴族派と王党派の政略結婚よ」
「そーだったんですね。気をつけます」
本当に分かったのかしら。
すると、本当に殿下が来ると距離を置くようになった。
「キャー!殿下だ。隠れなきゃ!」
と靴を脱いで木に登る。
あれで隠れたつもりかしら。青々とした葉の間にピンクの頭が目立つ。
「サンドラ、あの令嬢は何故木に登っているのだろうか?」
「さあ、最近、暖かくなりましたから」
「サンドラに手を振っているぞ」
「知りませんわ!」
殿下は少しおっとりしているから私が守らなければね。
屋敷に戻ると義妹が絡んできたわ。
「お義姉様!このドレスちょーだい!欲しいの!」
「メリー!これは殿下から頂いたドレスだからあげられないわ」
「ええーーー!」
すると義母様がやってきた。
「そうよ。メリー!サンドラの言う通りよ!」
「は~い。分かりました」
納得した・・・
それからも、学園でアリーに会うと注意する日々が続いた。
私は副学生長で淑女科の筆頭だわ。
「アリー様!学園にボートを持ち込んで池に浮かべて遊ぶの止めなさい!」
「え~、ダメなのですか?校則を確認しました」
「書くまでもありません。どうやって持ち込んだのですか?!」
と、その注意をしている横で義妹メリーが釣りをしている。
「ザリガニさんつれないかな~!」
「釣れません!貴方は入学前でしょう!!家庭教師の時間では?!」
「もう、履修終わったの~、飛び級で入学したの~」
「嘘・・・」
帰って家庭教師に聞いたら、
「信じられませんが・・・・事実です。ダンスとマナー以外は優です」
「そう・・・」
そして、アリー様も成績が良い。生徒会の書記になった。男爵令嬢で異例だ。
何故?
二人とも綺麗と言うよりは可愛い。
義妹には見合いの話が来る。
アリーも学園では殿方に人気だ。
そして、
「殿下に近づいてはなりません!」
「はい!分かりました。サンドラ様」
「はい、義姉様!」
皆、言う事を聞く。
これは・・・
【何か!違いますわ!何故、殿下を狙わないの~!】
「サンドラ様?」
「あら、失礼、つい、考え事をしておりまして、オホホホホホ」
実際、王族が入学すると婚約者を差し置いて婚約者の地位を奪おうと政争が起きると言うが・・・・
無い!
それから、
王妃殿下に呼ばれたわ。王妃殿下は後妻だわ。
殿下とは血のつながりはない。しかし、分をわきまえ。連れ子を優遇せずに、
殿下を王位継承権者として立派に育てていると評判な方・・・でも、少し苦手だわ。
「そなた、公爵令嬢であろう。ゲオドルの婚約者としてしっかり支えなさい。最近、悪い虫がついているときいている。そなたがしっかりしないからではないか?」
え、いないけど・・・
「分かりました」
と答えた。
殿下はハンサムだ。金髪碧眼で人当たりが良い。王の素質があるけども、何か足りない。
それは謀略であろう。私が・・・何とかしなければ・・・
しかし・・・私の17歳の誕生日の一月前に、動き出したわ。
アリーとメリーが殿下に急接近する。
そういう事ね。今までは騙していたのね。
巧妙に隠れて、殿下と連絡を取り合っているのが分かった。
二人を側妃にするつもりかしら。
いろいろ考える。
何故、連絡を取り合っているかって分かったかですって。
アリーとメリーがコンビを組み。ノートを木の窪みに入れる。二人とも周りを見渡しコソコソしているわ。
すると、10分後に殿下はキョロキョロしながら、その木に向かう。窪みからノートを取り出した。
まるで、中等部の男女の交換日記のようだ。
浮気かしら!
私もこっそりノートを見たが。暗号だった。
何かしら。王妃教育で少しならったが、数字が羅列されている。
私は数字を書き写して、図書館で調べる・・・・
賢者に聞く。
「分かりません」
「分かりませんではないですわ!」
「ヒィ、我は賢者なるぞ・・」
数字だからと聞いたら数学科の学生が分かった。
「サンドラ様、これは二進法ですな。もしかして・・文字列に当てはめるものではないですか?」
「さすがですわ」
大陸共通文字の文字列順に数字を書きこんで、該当する数字を当てはめる。
すると・・・
「読めませんわ!」
文字列にしたら滅茶苦茶だわ。
「あら、これ・・」
「ケリー!知っているの?」
メイドが知っていた。
「ええ、実家は商家ですから、相場を知らせる時に使います。日にちによって、数字をズラす事をしているのではないですかね」
「そうだわ」
分かったわ。乱数表が必要ね。
絶対に解読をしてみせますわ!
そして、誕生日になったわ。
「あ、王宮で祝ってくれるのね。行かなきゃ」
馬車に乗って、王宮に向かう。
☆☆☆王宮
王族のプライベートの温室で祝われたわ。陛下、殿下と王妃殿下、そして
アリーとメリーがいた。
殿下の隣にいるわ。
何故!
まさか・・・
「サンドラ!誕生日おめでとう!」
「うむ。喜ばしいことだ」
パン!パン!パン!
クラッカーを鳴らし。アリーとメリーが小躍りする。
「イエイ!サンドラ様、おめでとうなのだからね!」
「義姉様、ありがとう。いつも、私を躾けてくれて嬉しいの~!」
「はい?!」
「そして、誕生日プレゼントだ。お人形だが・・・気に入ってくれるか?」
「これは・・・・」
そうだ。私は人形を倉庫にしまっておいたが、本当は大好きだ。
乙女趣味すぎると王妃殿下に咎められ封印したのだ。
何故、知っているのかしら。金髪の可愛い女の子の人形をプレゼントしてくれた。
「いや、何が良いのかメリー殿に聞いたのだ。アリーにも協力をしてもらった」
「あの・・・何故、暗号で連絡を取り合ったのですか?」
「それは・・・ビックリさせたかった」
すると、王妃殿下は、ポトっと、扇を落としたわ。
ガサガサガサ!
庭木の中から、男が出てきた。
24,5歳の・・・小太りの男、あれは見た事があるわ。
王妃殿下の連れ子で、王宮の一室に籠もっている方よね。
正確には王族ではない。
「うも~~、母上、サンドラは婚約破棄されるんではないでござるかぁ!」
「知りませんわ!」
「僕はヒーローになって、好かれるでござるよ!」
「し、知りませんわ!」
アリー様も便乗するわ。
「あ、王妃殿下ぁ~、殿下とくっつけと言うのは、やっぱり無理な感じ~、あたし、男爵令嬢だよ!」
メリーも。
「お義姉様は悪役令嬢なの~見るだけで十分なの~、時々、躾けてもらえれば十分なの~」
とんでもない事を言う。何か王妃殿下にそそのかされたのかしら。
「これ、怪しい!王妃とガルドを取り調べろ」
「「「御意!」」」
陛下の一言でつれて行かれたわ。
それから、王妃殿下は実家に戻された。
何か、謀略があったかもしれないが・・・・
また、アリーとメリーを注意する毎日だ。
「アリー様、校庭で屋台を営業するのお止めなさい!何ですか?その食べ物は?」
「サブロー系ラーメンって感じ~」
「へい、らっしゃいなの~、ニンニクモリモリなの?」
「だから、メリーもよ!」
今はお人形の名前を考えている。アリーとメリーを並べて、メアリーちゃんで良いかしら。
最後までお読み頂き有難うございました。