警備4種 2 序章
03:21。
〈ジジジ〉電灯が点滅している、大きな羽の虫が羽ばたく。
大きな公園。
大量パトカーだらけ。
水が抜かれている外プール内。
そこに、荒連 〈アラレ〉という暴走族の死体が並べられていく。
銃、投げ釘、ナイフの刺し傷が目立つ死体達。
白井加奈子「はい、いやー、はい、はい、すいません、そうです、そうなんですー、はい、はい」
どこかに電話している。
長い黒髪、日本人女性、色白、身長170、スラッとした美脚、白いスーツ、タイトスカート、しかし、体には酷い拷問の跡がある。
メナルムア「げほ、ごほ」
撃たれていて、寝転がりながら、仰向け、煙草を吸っている。
インドからの移民、色黒美女、筋肉ムキムキ、握力は120は超えてるらしい。
平塚幸助「メナ、大丈夫か?ごめん、俺を庇って」
メナの隣で座り、煙草を吸う若い日本人男性、短髪筋肉マン。パルクールが得意。
メナ「良いよ、気にすんな、仲間だろあたしら」
平塚「本当、格好良いよな、お前」
メナ「はははぃ!いーちちち、ごほげほ」
白井「もー!メナ!仕事終わってないんだからね!吸うの待ちなさい!」
メナ「終わったも同然ですよ、げほ」
平塚「真さん、大丈夫かな?」
メナ「は、あの人が大丈夫じゃなかったら、この世は悪人だらけだよ」
平塚「はは、言えてる、でもホント、毎回毎回、あの人は、全部美味しいとこ持って行くよな」
公園施設から3キロ地点。
旧地下鉄廃線トンネル内。
走る二人の男性の影。
元プロボクサー犯人飯島英夫「はあ、はあ、はあ、はあ、何だよ!何なんだよ!おっさん!」
秋本真也「はあ、はあ、はあ、はあ」
メナ「あの人は、解るのよ」
平塚「何を?」
秋本慎也「はあ、はあ、はあ、はあ、逃がすかよ、ゴキブリが」
メナ「犯人の考えてる事」
飯島英夫「はあ、はあ、はあ、はあ」
尖った石を握り込み、指の間からはみ出すように持った。
秋本真也「はあ、はあ、はあ、はあ〈ガララ〉」
今にも折れそうなボロい角材を持った。
飯島「はあ、はあ、いいのかよ?はあはあ、そんなんでよ?はあはあ、お爺ちゃん」
秋本「はあはあ、いいんだよ、はあはあ、虫ピンだ虫ピン、はあ、はあ、すー、ゴキブリ」
飯島「ゴキブリはテメェだろうがあ!ぶっ殺す!」
真也は殴りかかって来てダッシュで懐に飛び込んで来た飯島のパンチを待たずに、1mの角材を振り抜いた。
飯島は躱しながら左前に半しゃがむ、そして真也の右レバーを撃ち抜い〈ボキャ〉
飯島の左拳は砕けた。
飯島「はっっっ!?〜〜〜〜ギャァァァアアアアアア!????」
膝を付き、左手を押さえる。
真也「分かりやすい馬鹿だよなあ、〈ベキン〉」
角材の折れやすい箇所を折り、70cmの方を捨て、30cmの方を持った。
理由は、こっちの方が尖ったから。
飯島「アアアア、あああ〜〜〜、ああああああ〈グィ!〉あうがごゔぇ〈ガチュ!!、グチュグチチ、ドゴ!・・ドゴン!!〉
飯島の髪を掴み、口に尖った角材を一気に押し込み、グリンと回し、掌底、そのまま地面に頭を踏み、叩きつけ、角材の尖りが、後頭部から突き出た。
真也「ゴキブリの虫ピン一丁上がり!、ふーやれやれ、あーー、しんど!」
座り、煙草に火を付け、腹をコンコンと叩く。
鋼鉄よりも硬く、分厚い服より柔らかい。
カーボンナノテクノロジーと、ダイラタンシー現象を活用した防弾と耐衝撃性に優れたチョッキである。
死体を見ながら呟く。
真也「・・串焼き行くかな」
3日後。
西暦2027年、1月20日、東京。
検察庁、第一、大ホール会議室。
秋本真也のデータが巨大プロジェクターに映っている。
秋本真也66歳。
極めて優秀な猟犬、評価SSS。
が。
極めて残忍かつ獰猛。
いつ一般人、公務員仲間に危害を加えるか、また、重度の鬱の傾向があり、いつか行方を眩ませる可能性あり。
と書いてある。
報告が終わる。
検察庁、北条長官「そうか、やむを得ないな、では、全員一致という事で」
〈カチカチ、パッパパパ〉会議室が明るくなっていく。。
議長「では賛成の方々、ご起立ください」
会議室の25名中、24名が立った。
議長「?ん?南方君!」
南方歳三「・・」
皆『・・』
北条長官「まあ、議長、8割ですから」
議長「ん?ん、まあ、そうだな、ごほん、では、8割多数決により、9割賛成ですので、可決、彼を除名致します」
皆出て行った中、2人残った。
南方「・・必ず後悔するぞ、北条」
北条「クリーンなイメージが大事なんだよ、彼らの代で終わらせる気か?世論は獰猛な犬を良しとせんよ」
南方「忘れたのか!?彼が居なければ全滅していた事件は多々あった!!それを貴様!!」
北条「全滅すれば良かったんだ」
南方「な!?なにいい?」
北条「良いか南方?世論というのは、痛みを感じて、初めて考え始めるんだよ、忘れたか?」
南方「世論は既に痛みを知っている!だからこそ!彼らが即応死刑をしても暴動やデモか起きないんだ!」
北条「その世論から苦情が来てる、しかも月ごとに増えてるんだ、主に彼、そうだ、彼に対しての苦情だよ、態度が悪いだの、煙草吸うだの、直ぐに暴力振るわれただの、だ、特に、問題なのは暴力だ、電車内での揉め事は日常、繁華街は練り歩く、彼に皆が怯えてる」
南方「それでも、犯罪は減った!データが証明している!彼に怯えてるのは、埃がある奴らだ!解ってるだろう?」
北条「埃を持ってるだけなら、一般人だ、犯罪者ではない!我々は、一般人を怖がらせる事は許されていない!表向きはな」
南方「・・不介入の原則」
北条「そうだ」
南方「だが、彼を封印したら、・・直ぐに今の警備4が全滅する可能性があるぞ!!どうするんだ?」
北条「彼らが全滅したところで、また新しく人材を集めるのは苦労がかかる、そこで、AIを活用する事になった」
南方「AI?だと?そんなモン、善人ぶった本当のサイコパスを見破れるのか?無理だと思うがね?忘れたのか?このプロジェクトの目的は、事件という結果になる前に隠蔽される事件を優れた嗅覚で見つけ出し、本当の知能が高いサイコパスを殺る為に」
北条「ああ、そうだ、解ってる、だから問題ない」
南方「・・犠牲になるのは、いつだって、弱者なんだぞ、実験場じゃない」
北条「彼を使い続けたら、プロジェクト自体が終わる」
南方「・・それでも、彼が居なければ、お前の友人の息子は死んで居たんだぞ、何故だ?何故、彼はお前の恩人だ」
北条「本当に、苦情が酷いんだ、解ってくれ」
南方「・・皆の意見を平等に、か?弱者の声って奴は、声にならない程、か細いんだ、大声で電話して来る奴らの中に、果たして弱者は居るのかね?そこんとこ、よろしくお願いしますだぜ、長官様よ」
北条長官「・・」
会議室には1人の男性だけが、残った。
腕時計をさする。
北条長官「幸助、許せ」
警備4種。
民間任意警護公務員。
刑事よりも強い捜査権を持ち、犯罪状況が極めて悪質、緊急性が高いと任意で判断する権限を持つ。
彼ら、彼女らは時に犯人と思わしき人物に対し、極度の不安を抱いた場合に限り、その人物を行動不能に出来る権限を持つ。
更に。
犯人と思わしき人物からの妨害や、暴力を受けた場合、または、受けると直感しま場合のみ、制圧、または、殺人を許可されている。
彼ら、彼女らは、民事介入警備公務員、強制捜査権限執行機関、第4種免許の保持者。
通称、『民警』である。
前座、終わり。