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39 聖女の幸せ

 ノーンコル王国の王城での出来事から3日が経った日の朝、小島に着いたところでテイラーから声をかけられた。


「リーニに報告があるの」

「何かしら」

「……あのね、私のお腹の中に赤ちゃんがいるみたいなの」

「ええっ!?」


 予想外の話に、自分でも驚くくらい大きな声で聞き返した。


「そ、それって」

「ええ。神様がピッキーを生まれ変わらせてくれるって言ってくれたの。今度はピッキーの記憶は失くすみたいだけどね」

「……おめでとうと言って良いの?」


 ワニの姿ではなく鹿の姿のテイラーは、私の質問に大きく頷いてくれた。


「生まれてくるのを楽しみにしています」

「ありがとう。リーニにはたくさん迷惑をかけてしまってごめんなさい」

「テイラーのせいではありません」


 生まれ変わったピッキーと、今度は仲良くなれたらいいなと、心から思った。



******


 それから日は過ぎた。


 ピッキーの代わりにノーンコル王国の新しい精霊になったのはワニだった。

 エレーナ様はトラウマもあるから怖がってはいるけれど、何とかコミュニケーションを取ろうと頑張っている。


 私の家族はソーンウェル王国に引っ越してこようとしたので、ディオン殿下にお願いして入国できないようにしてもらった。


 ノーンコル王国の新しい国王陛下は、ラーラル家とは派閥が違う。

 ノーンコル王国に居づらいということや、私がディオン殿下と婚約したことを知って、家族は手のひら返しをしてきたけど、もう遅い。


 私が今更家族を許せるはずもなく、お母様たちは国境付近で途方に暮れていると聞いた。


 ルルミー様とフワエル様、そして、国王陛下は自分たちしかいない城の中で、外から聞こえてくる魔物の咆哮に怯えながら暮らしている。


 食べ物は私たちが用意して、転移魔法で送っている。

 でも、食材であって調理されたものではないので、かなり苦戦していると聞いた。


 なぜ、それがわかるかというと、神様から教えてもらえたからだ。


 ルルミー様とフワエル様は城にある塔の一番上に行って、毎日、湖の方向に向かって懺悔をしているというから、いつかは赦してもらえる日がくるかもしれない。


 国王陛下だけは、後悔する様子が見えないため、結界の中で魔物化したあと消滅するだろうというのがレッテムや神様の予想だった。


「おかえり」


 いつもの時間に小島から帰ると、ディオン殿下が出迎えてくれた。

 落ち着いた頃に、私とディオン殿下は一緒に暮らしはじめた。

 城に来てほしいと言われたけれど、小島に行くには今の家が良いと言うと、ディオン殿下がこちらに来てくれた。

 まだ、婚約者なので寝室は別だ。


「ただいま戻りました」

「朝食の準備ができてる。今日は俺が作った」

「ディオン殿下がですか!?」

「ああ。出来ないよりかは出来たほうが良いかと思って覚えたんだ。凝ったものはできないけどな」

「それは楽しみです! ありがとうございます!」


 差し出された手を繋いで、一緒にリビングに向かう。


 ソーンウェル王国に来てから、悲しいことや辛いことはたくさんあった。

 でも、ノーンコル王国では得られなかった幸せがここにはある。


 役立たずだと他国に追いやられてしまった私だけど、そのおかげで、今までにない幸せを手に入れた。


 この幸せな気持ちを力にして、ディオン殿下や仲間たちと一緒に、この世界を守り抜いてみせると心に誓った。


最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。

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