36 聖女の手紙
食事をしている時に、エレーナ様から手紙が届いた。
予想通り、ノーンコル王国にルルミー様が現れたそうだ。
ピッキーの姿は見えないけれど、何か違和感を覚えるらしく、姿を見せないだけで近くにいるのではないかと書かれていた。
エレーナ様の前に姿を見せると、神様からの天罰が下ると思って気配を消しているのかもしれない。
手紙を読み終えたところで、ディオン殿下がやって来た。
「リーニの話を聞いて、ルルミーをソーンウェル王国に引き渡すようにノーンコル王国の王家に、ソーンウェルと他八カ国の国王の連名で連絡を入れてもらった」
「ありがとうございます」
「他の聖女も、それぞれの国王陛下に口添えをしてくれていたから楽だったみたいだ」
「国が乗っ取られてしまったら、私たち人間にしてみれば脅威ですものね」
「ああ。今回の件は聖女だけがどうこうという話ではないからな」
両陛下やディオン殿下に詳しい話をしたところ、ピッキーや邪神に騙された可能性はあるけれど、悪い心に染められてしまったのは人間であるルルミー様だと言ってくれた。
ノーンコル王国の国王陛下がルルミー様を受け入れ、引き渡しを拒否するようなことがあれば、ノーンコル王国は魔物が支配する国になってしまう恐れがある。
「もうすでに他の国の聖女は動いていると連絡が来た」
「では、私も動くことにします」
ノーンコル王国の国王陛下に善良な心が残っていると信じたい。
でも、現実は願い通りにはならなかった。




