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30 元聖女への罰 (ルルミーside)

読んでいただきありがとうございます!

ルルミー視点の話になります。

 エレーナはあたしを裏切った。

 学生時代に面倒をみてやった恩も忘れて、助けを求めているあたしを放ったらかしにしている。

 本当に許せない。


 あたしと仲良くしたいと近づいてきたのはエレーナのほうで、あたしから誘ったわけじゃない。

 一緒にいてもイライラするから、ちょっと遠ざけようと思ってパシりに使ったり、遊びに行くのに誘わなかっただけでいじめだなんてディオン殿下に言われて、本当に迷惑だった。


 昔のことを思い出してイライラしていたら、リーニとかいう聖女があたしに会いたいと言っているという連絡がきた。

 こんな惨めな状態で、あんな女に会いたくない。


 でも、今は手の痛みのほうが辛い。

 意地を張らずに何とかしてもらうことにした。


 背に腹は代えられないって言うもんね。

 

 準備をして外に出ると、馬車が待っていて、あたしを王城まで連れて行ってくれた。


 そこで聖女と会った。

 ただ、手を治してくれれば良いだけなのに、聖女はあたしと顔を合わせると説教じみた話をしてきた。


 信仰なんて自由じゃないの。

 あたしはあたしの信じる道を行くのよ。


 だって、もう聖女じゃないんだから。

 でも、そのことを素直に話せば治してもらえないと思った。

 闇の力を感じるんだと言うのならなおさらよ。


 闇の力は人間の体に害を及ぼすと聞いてる。

 放っておいたら魔物になるとも聞いたことがあるわ。


 あたしは絶対にあんな醜い姿になったりしない。

 禍々しい気を感じると言われたから、聖女に訴える。


「何を言っておられるのかわかりません。私は今、神様に助けを求めています。そして、これだけは言えます。私は邪神の手先になんてなりたくありません。あんな醜い姿になるのは絶対に嫌です!」


 聖女は厳しい目をあたしに向けてきた。


 すると、いきなり手の痛みがなくなった。

 慌てて、手に巻いていた包帯をほどくと傷がなくなり綺麗になっていた。


「ありがとうございます」


 心からの感謝を伝えた。

 嫌いな女に礼を言うよりも、魔物になるほうがよっぽど嫌だからね。


「これから、どうするおつもりですか」


 聖女が聞いてきたので首を傾げる。


「どういうことでしょうか」

「ルルミー様はエレーナ様の元へ向かうのですか」

「もちろんです。代理じゃなくなったからといって、あとは知らないっていうのも聖女として酷くないですか? それに精霊に怪我までさせられたんです。その分の慰謝料をエレーナからもらうつもりです」

「そうですか。精霊に傷つけられたのは自業自得だと思いますが、アフターケアがないのもどうかと思いますしね」


 聖女は大きなため息を吐いたあと、すぐに笑顔で話しかけてくる。


「もうお互いに用はありませんね。闇の力は一部を除き浄化しましたので、ルルミー様が魔物になることはないでしょう。ですが、何をしても良いわけではありませんよ」

「……どういうことです?」

「申し訳ないのですが、私はあなたを信用していません」


 冷たい言い方にカチンときたけれど、何を言い出すつもりなのか全く見当がつかないので話は遮らないでおく。

 すると、聖女は衝撃発言をする。


「闇の力ですが全てを浄化しきってはいません」

「どういうことです!? それじゃあ、また痛くなるということですか!?」

「闇の力が悪さをしないよう、残った闇の力を光の力で結界を張るような形で覆っています。ですが、あなたの心が闇に染まれば、闇の力が、その薄い膜を破るでしょう」

「聖なる力の膜なら闇の力を浄化できるんじゃないの!?」

「そうですね。結界を破るような悪意を持たない限りは大丈夫です」


 ここまで聞いて、聖女が言おうとしている意味がわかった。

 極悪なことを考えたら闇の力が聖なる力に勝って、あたしを魔物に変えると言いたいのね。


「あんた、大人しそうな顔してるけど、性格悪いわね」

「あなたに言われたくありません」


 いきなり、砕けた話し方に変えたのに聖女は一切、表情を変えない。

 覚悟を決めてんのね。


 思ったよりも根性があるじゃない。


「魔物になりたくなければ悪いことを考えるな。信仰心を忘れるな。神様を恨むなって言ってんのね。わかったわよ。でもさぁ、人の嫌がるものを盾にして脅すなんて、聖女のやることじゃないわよ」

「代理聖女をしていた時に好き勝手やっていたあなたに言われたくありません」


 聖女改め、腹黒女は立ち上がって促す。


「今日はありがとうございました。気をつけてお帰りください。それから、エレーナ様の所へ行くことはお勧めできません。この意味はわかりますね」

「わかったわよ。本当に恐ろしい女だわ」


 あたしは吐き捨てるように言ってから部屋を出た。


 腹黒女が言っていたことは本当か嘘かはわからない。

 そんな繊細な力の使い方があの女に出来るわけがない。

 

 エレーナの所に行って慰謝料をもらうか、フワエル殿下を誘惑してやろう。

 そう思った時、胸に痛みが走った。


「あ……っ」


 息が苦しくなり、喉を押さえてその場に跪いた。

 

「ごめ……、ごめんなさ……」


 咳き込みながら謝ると、胸の痛みはなくなって呼吸が一気に楽になった。


 最悪だわ。

 これからちょっと悪いことを考えただけでも、こんなことになるってこと?

 そして、これを我慢して悪いことをした時には――


 魔物の姿を思い出して体を震わせる。


 あたしは絶対に魔物にはならない。

 悔しいけど、エレーナへの嫌がらせや、神様や精霊、他の人間に対して悪意を持つことは控えなければいけないと思った。

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