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29 元聖女代理との再会

「ディオン殿下、ルルミー様の怪我がどんな状態か詳しく調べてもらえないでしょうか。手の怪我が治るどころか酷くなるという理由がわからないので気になります」

「わかった。確認してみよう」

「ありがとうございます」


 並んで歩きながら、私がルルミー様のことを気にする理由を話しておく。


「ルルミー様は闇落ちの一歩手前だったのではないかと思うんです。そのため、闇の力が傷を悪化させているのではないかと思うんです」

「闇落ちするギリギリのところで聖女の任を解かれたということか?」

「はい。精霊から聞いたところ、ルルミー様は精霊に酷いことをしたみたいなんです」

「……ということは、ルルミーが闇落ちの一歩手前で邪神の力が入り始めていた。だから、精霊に危害を加えようとして触れたことで、その部分が火傷をしたということだろうか」

「そうではないかと思います。魔物が結界に触れた時のようなパターンかと思ったんです」


 ルルミー様に流れていた聖なる力を闇の力がのみ込もうとしていた。

 でも、レッテムという聖なる精霊を掴んだことで、レッテムの聖なる力が闇の力を浄化しようとして、火傷のような傷ができてしまったのではないかというのが、私の考えだった。


 傷が治らないのは表面が浄化されただけで、闇の力がルルミー様の中にまだ留まっているのかもしれない。


「……やっぱり、ルルミー様を呼んでいただくことは可能でしょうか。闇の力が悪さをしているのであれば、聖女の誰かが治癒魔法をかければ浄化ができて、少なくとも傷が広がるということはなくなるでしょう。ルルミー様は闇の力に取り込まれたわけではないようですから」

「わかった。だけど、君はそれで良いのか?」

「命にかかわるかもしれませんので、個人的な感情を優先するわけにはいきません」


 厳しい口調で答えると、ディオン殿下は微笑む。


「君のことをお人好しだと言う人がいるかもしれないが、俺はそんな君が好きだよ」

「そ、それは、その、ありがとうございます」


 照れてしまい、その後はほとんど会話らしい会話ができなかった。




*****



「痛いのよ、助けてよ!」


 数時間後、女性騎士に両脇を捕まえられたルルミー様が、私の家へと連れられて来た。

 ルルミー様はイライラしているのか、挨拶することもなく訴えてきたので、一応注意しておく。


「ルルミー様、ごきげんよう。あなたも貴族なのですから、マナーは守ったほうが良いかと思います。挨拶は大事なことですよ」

「マナーって何よ。挨拶すれば良いの?」

「挨拶はとても大切ですよ。それから、私たちはもう同じ立場ではありませんから、そのこともお忘れなきように」

「……何よっ! 聖女だからって偉そうにして!」


 ルルミー様は悔しそうな顔をして言った。


「偉そうにしているつもりはありません」

「まあ、いいわ! それよりも早く治してよ!」

 

 私に上から目線で言われることは嫌だったみたい。

 でも、そんなことを気にしていられないくらいに手が痛いようだった。

 包帯が巻かれた右手からは、やはり禍々しい何かを感じる。


「ルルミー様は神様を裏切ろうとしたのですか?」


 私に問われたルルミー様は一瞬だけ驚いた顔をした。

 でも、すぐに平静を装って首を振る。


「そんなわけないじゃないですか」

「そうですか。では、私の治療は必要ありませんね」

「待って! どんどん悪くなっていくなんておかしいでしょう!? 普通の傷じゃないのよ!」

「そうですね。ルルミー様の傷からは禍々しい何かを感じます。でも、おかしいんです。神様の信仰を忘れなければ、そんな傷があなたに付くはずがないと思うんです」


 正面に座っているルルミー様を見つめる。

 すると、ルルミー様は苦虫を噛み潰したような顔をして、私を睨みつけてきたのだった。


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