あの時、君が僕の為に作ってくれた味噌汁が飲みたい。
不思議なモノだ。
誰かも分からない女性に、一度だけ作ってもらった
味噌汁が飲みたいと毎日のように思う。
今まで、僕の人生で味わった事のないあの味。
味噌汁なんか、誰が作っても同じだと思っている人がいるが...。
それは違う! 愛情のこもった心に残る味噌汁だった。
僕は7年間、あの味噌汁の味を一度も忘れた事がないほど思い出深い味だった。
僕は、その味噌汁をどんな女性が作ってくれたとはいえ
必ず見つけ出して、お礼を言いたい!
すでに僕は、登山が好きで何度も山に登るほどベテラン上級者になっていた。
それでも、山をなめてはいけない!
何が起きるか分からないからだ。
僕はその日、仲間3人でいつも登る山に行った。
僕を含め、3人共山登りはベテランだったが。
その日は、急に霧が出てきてテントを張って山に一泊するしかなかった。
食料も、こんな事も起きると思い一日分の3人の食料は用意していた。
僕たちは、何の心配もなく辺りが暗くなりテントで3人川の字になって
寝る事にしたのだ。
・・・そんな時、外でなにやら物音がする。
【熊だ!】この山には、熊は出ないと聞いていたのに。
熊が出た! 僕たち3人は、慌てて外に出ると? 熊は一頭だけじゃ
なくもう直ぐ巣立っていくであろう小熊が二頭一緒にいたのだ。
母熊とたいして変わらない小熊が二頭と母熊一頭が僕たち3人に
襲い掛かって来た。
母熊は、僕たち3人の内の一番ぽっちゃりした仲間を襲った。
まるで狩りの仕方を小熊に教えるように、仲間を襲う。
鋭い爪で、僕の仲間は一撃で倒れ込んでしまった。
僕ともう一人の仲間は、それを見て悲鳴を上げ必死に走って逃げたが。
直ぐに、もう一人の仲間が、小熊の一頭に捕まる。
100㌔以上あるであろう小熊に覆い被される仲間。
僕は逃げるのをやめ、小熊に立ち向かった。
その時、もう一頭の小熊が僕の背後から鋭い爪で僕に殴りかかる。
僕は、小熊から一撃を受け意識をなくした。
・・・次に僕が目を覚ますと? 僕以外の仲間2人を少し離れたところ
で食べている所を目にする。
僕は、泣き叫びそうな気持を押し殺して目を閉じる。
どれぐらいの時間が経ったのだろう、次に僕が目を開けた時には
もう母熊と二頭の小熊は何処かに行っていた。
僕は、運よく助かったのだ。
お腹がいっぱいになった熊達は、まだ生きている僕に目もくれず
立ち去ってしまった。
その後、僕たちを探しに来てくれたレスキュー隊の人達が僕を見つけ
僕は病院に運ばれた。
僕の仲間は、無残にも熊に食べ散らかされ亡くなってしまう。
病院に運ばれた僕は、意識が朦朧としておりその時、一杯の味噌汁を
作ってくれた女性が僕の目の前に現れてこう言った。
『何かお腹の中に入れた方がいいわ、さあー私が作った味噌汁よ
食べてみて。』
『・・・あぁ、は、はい、』
僕のその時の記憶は、その女性が作ってくれた味噌汁の
味以外、何も憶えていなかった。
僕は味噌汁を飲み終えるとまた意識をなくしたからだ。
僕はショックだったのか? まるまる3日眠りっぱなしだったらしい。
・・・あれから、7年という月日が経ったにも関わらず。
僕はあの日の事を、忘れることはなかった。
今でも、あの時の事は夢に出てくる。
僕の仲間が、熊に食べられているところを思い出してしまう。
僕はあの日から、山に登る事をやめた。
熊も僕はトラウマになるほど、怖いモノに変わってしまった。
ただあの時、飲んだ味噌汁の味だけは今でも忘れられない。
最後までお読みいただきありがとうございます。




