婚約破棄だ!はい喜んでーー!!
初めまして、ちなこと申します。
初投稿になります、小説自体も初めて書きました。
実はわたしは文字書きではなく絵描きです(もちろん趣味です)。
絵描きということもありどうしても文章より先に漫画のコマが頭に浮かんでしまってそれを文章に書き起こしていたので文字で伝えることの大変さを思い知らされました。
「はい喜んで」と言うセリフを言わせたいが為だけに書き始めた話なので所々意味不明でおかしいところはあると思いますが、初めての小説ということで「コイツ文才ないな」「所詮初心者だな」と生暖かい目で見てくださると嬉しいです( ´ ∀ ` ;
話を書きながらしっかりイラストでキャラメイクもしていたので、そのうち登場人物紹介みたいな形で挿絵で公開できたらいいな、と思っております。
それでは、二番煎じ三番煎じの内容になるかもしれませんが暇つぶしにサクッと読んでいただけるとうれしいです。
「貴様とは婚約破棄をする!!」
「はい喜んでーーーーー!!!!!」
わたしの声が広く煌びやかなホールにこだまする。
やっとこの時がきた…というかこのセリフを言えた…。
嬉しさのあまり思わず思いっきりガッツポーズをしてしまった、貴族令嬢としてはしたない…けどこの時をどれだけ待ち望んだと思うのだ。
今だけは許してください。
なぜ今わたしがこのような状況になったのか、それは…
すっかり日が暮れた夜のネオン街にある一件の食事処兼居酒屋。
中からスタッフの元気な掛け声が聞こえてくる。
いらっしゃいませ!
お待たせいたしました!
ありがとうございました!
当時まだ子どもだったわたしは親と一緒にそのお店に夕食を食べに来ていた…父親はお酒を飲みに来ていたのが(笑)。
賑やかな店内、ふとその一声が耳に入った。
「はい喜んでー!!」
反射的にその声の方に顔を向ける。
どうやら「注文が入ったよー」という声かけに対する他スタッフの「分かったよー」という反応のようだった。
なんてことない声かけだったけど、その時のわたしにはとても魅力的に聞こえたのだ。
『わたしも、あれ言いたい!』
そう強く思った。
その思いは何年経っても消えることはなくむしろ次第に強くなった。
大学生になったら絶対に居酒屋でバイトする、そしてこの一言を言うんだ!!
そんな思いでこの掛け声をする居酒屋を探しバイトを始めた。
我ながらすごい根性だと思う。
しかし念願のバイトを始めて数ヶ月、わたしは不慮の事故で命を落としてしまった…ようだ。
この辺りはよく分からない、多分そうなのだと思う。
だって、目が覚めたらわたしは「わたし」になっていた。
わたしの名はセシリア・マルケス。
ここ、ジャピアーノ国の公爵と呼ばれる地位にいる父を持ついわゆる公爵令嬢、いわゆるかなりのお嬢様です。
齢11歳のいたいけな女の子です。
レースカーテンがふんだんにあしらわれた天蓋付きベッドから身体を起こす。
高い天井のやたら広い部屋、大きな窓から朝日が降り注ぐ。
混乱する頭。
今の自分の状況は分かっている。
だけどこの記憶は何?
居酒屋?バイト??はい喜んで???
その時コンコンと部屋の入り口の扉がノックされた。
「おはようございます、お嬢様」
扉が開くとメイド姿の女性が入ってきた。
彼女はサラ、セシリア付きのメイド。
「おはようサラ、今日はとてもいいお天気だね」
ベッドから降りてサラに手伝ってもらいながら朝の支度をする。
その間もなんとなく頭の中がモヤモヤしている。
服を整え、髪を結ってもらい支度完了。
「今日は昼食後に王子殿下がいらっしゃる日ですよ」
サラが確認するようにセシリアに言った。
王子殿下とはこのジャピアーノ国の第一王子でありセシリアの婚約者である。
婚約者といっても親同士…というか家同士、というか貴族の身分的に必然的に勝手に決められたもの、本人の意思なんて関係ないしこの歳で婚約者がいても何もおかしいことはない。
セシリアは公爵令嬢なので当たり前のように王室もしくはそれに近い身分の方と婚約させられる運命なのだ。
セシリアの父親は実は現国王陛下の腹違いの弟であり、セシリアと王子殿下は従兄弟という間柄、そして同い年でもあることから小さい頃から兄弟のように育ってきたのだ。そんな相手が婚約者でいずれ結婚し子どもを作る…なにそれどんな嫌がらせ?と思うわけなんだけども…昼食後に訪ねてきた王子殿下を一目見てセシリアは全身に電流が走った…気がした。
「こんにちは、セシリア」
にっこり微笑みながら近づいてくる太陽の光を思いっきり浴びてキラッキラに輝く金髪、まるで澄んだ聖水を思わせる碧眼、陶器のような白い肌…典型的な一般受けする王子様ビジュアルを持つ王子殿下、クリストファー・ジル・ジャピアーノ。
そう、コイツ…いえ彼はわたしがちょっとハマっていた悪役令嬢モノ小説のヒーローじゃないか!
そしてわたしはその婚約者、セシリア・マルケス!!
その瞬間、セシリアは全てを察し天を仰いだ。
ここはわたしが以前ライトノベルと言われる読み物で読んだ世界。
わたしはその小説の登場人物でヒロイン…ではなくヒーローである王子殿下とヒロインの恋路の邪魔をする悪役令嬢セシリア。
え?何コレなろう小説で読んだことある展開なんだけど?
なろう小説とは自分が恋愛系小説やゲームの世界のキャラに転生してしまい自分が破滅するフラグをへし折ったり悪役である自分が溺愛されたりする内容の小説である。
ライトノベルもなろう小説もサクッと読めるので暇つぶしにちょいちょい読んでいた。
そう、あの居酒屋バイトのあと帰宅してお風呂に入りながら読んでたりもした。
わたしはその世界に転生してしまったの?そんなことってホントにあるの??夢オチはないの???
目覚めた時よりさらに頭が混乱して挙動不審になっているセシリアを不思議に思ったのか、クリストファーが声を掛ける。
「セシリアどうしたの?」
「い、いえ!なんでもありませんありませんとも!!」
ハッと我に返りクリストファーに反応するセシリア。
ピャッと姿勢を正して上擦った声が出てしまった。
そんなセシリアを見ていつものように柔らかい笑みを浮かべ、お茶とお菓子が準備されたテーブルにセシリアをエスコートした。
その日の夜、セシリアは机に向かい頭の中を整理しそれをノートにまとめる作業を始めた。
元々わたしは日本人の女子大生だった。
だけどおそらく何かしらの事故か何かに合い死んでしまった…のかな?
と思ったら目が覚めたらジャピアーノ国の公爵令嬢セシリア・マルケスになっていた。
この世界は女子大生のわたしが読んだライトノベルの世界に酷似している。
ライトノベルの内容は、ヒロインである田舎の伯爵令嬢がここジャピアーノ国の王子殿下と恋に落ち結ばれるというもの。
しかしそこは恋愛小説、しっかりヒロインのライバルも存在する。
そのライバルは王子殿下の婚約者である公爵令嬢。
その公爵令嬢はヒロインに犯罪まがいの嫌がらせをし、ラストではそれを婚約者である王子殿下に糾弾され婚約破棄、国外追放を言い渡される。
そしてヒロインは王子殿下と結ばれ末長く幸せに暮らしていく…という典型的なストーリー。
「……」
こうやってみると別になんの問題もないように思うかもしれないが、その追放される公爵令嬢こそこのわたし、セシリア・マルケスその人なのだ!!
昼間、婚約者であるクリストファー王子殿下を見て確信したのだ。
わたしはこのままでは国外追放になってしまう!!
「……」
小説の中ではセシリアというキャラは婚約者クリストファーのことが大好きだった。
だからこそその自分からクリストファーを奪おうとするヒロインを憎み嫌がらせをした。
今日会うまでのセシリアも確かにクリストファーにほのかな好意を寄せていた。
しかしどうだ、全てを把握した瞬間この人への好意が瞬殺されたのを感じた。
むしろ嫌悪すら感じた。
それはなぜか、実は女子大生の時のわたしはロン毛男性が大っ嫌いだった。
そしてクリスファーはまさにロン毛!
金髪碧眼キラキライケメン王子といえどもロン毛!!
「…無理」
セシリアは椅子の上で思わず体育座りになり頭を抱え込んだ。
いやまて、王子殿下が無理だと思うなら自分の今後の人生のためにも受け入れなくてもいい方向に持っていけばいいのではないだろうか?
幸い婚約破棄の原因となるヒロインという存在も今後出てくるわけだし、自分に不利がないようになおかつヒロインと無事に結ばれるようになんとか持っていけないだろうか…。
そういえば…小説の挿絵で見た悪役令嬢はそんなに悪役っていう雰囲気ではなかった気がする…。
悪役令嬢によくある吊り目で強気な見た目と違いいたって普通の穏やかな雰囲気のキャライラストだった…てかまさしく今のわたしの見た目そのまま。
ヒロインはヒロインらしくピンクがかった金髪で誰からも好かれそうな雰囲気の女の子に描かれていた。
そう、THEヒロイン…というね。
今後現れる本当のヒロインがその通りかわからないけれども、いくら直前まで王子殿下といい雰囲気を作ろうともヒロインが現れた瞬間、ヒロイン補正がかかって一気にわたしが悪役令嬢にされるのがこの世界の決まりなのだろう。
ならばわたしは何があっても絶対にヒロインに手を出さないように、万が一断罪されたとしても自分の無実を確実に証明できるよう準備するのみだ。
セシリアは、むん!とペンを握りガッツポーズをした。
「そういえば、挿絵の婚約者もまさにさっき会った金髪碧眼ロン毛で初めて見た時無理だわ〜って思ったっけ?」
アハハと乾いた笑いが無意識に出てしまった。
この世界は12〜15歳の間、貴族の子ども達は全寮制の学園に入って貴族社会のマナーやらなにやらを学ぶことになっている。
セシリアは現在11歳、あと数ヶ月で12歳になる。
そして学園の入学式は…実は1週間後なのだ。
ヒロインが現れるのは当然のことながら入学式だ。
入学初日からの対策を立てるにはあまりにも時間がない…ならば入学式の日に小説通りの行動をしなければいい、多分…。
確か…婚約者でヒーローであるクリストファーとは同い年であるため、朝は彼がセシリアを迎えにきて王家の馬車で一緒に登校する。
学園に着くと当然他生徒の注目を浴びる。
2人を見ようと生徒達が押し合いへし合いしているところにいたヒロインが2人の通行を邪魔するように押し出されてしまう。
押された拍子に倒れそうになるヒロインを思わず抱き止めるクリストファー。
見つめ合う2人。
周りが一気に輝き始め花びらが舞い、エンダァァァァと音楽が鳴る…という小説内での表現。
これが主人公2人の運命の出会い、そしてセシリアはそれを鬼のような表情で睨みつけていた。
これがきっかけで2人はお互いに少しずつ惹かれ始めるのだ。
普通なら身分的にもこの後も2人が接触してお互いに惹かれ合うとか現実的にはあり得ない。
だがしかしここは主人公達のためのご都合主義な小説の世界、悪役令嬢から愛しのヒロインをヒーロが守り最後には結ばれるという世界なのだ。
「とりあえず、時間もないし今のわたしに出来ることといったら入学式の日にクリストファー様と一緒に登校しないこと…かなぁ?でもそんなこと出来る?誘われて断るとか無理よね」
うんうんと頭を抱えてしまう。
「じゃぁ学園に着いて小説通りヒロインと接触したとして…別に嫉妬しなければいいんじゃない?だって実際嫉妬するほど王子殿下のこと好きじゃないし、なんなら今や婚約解消喜んで!な気持ちだし」
そこまで呟いてセシリアははっとした。
「そうだこれよ…婚約解消を言い渡された瞬間、はい喜んでー!ってあの小さ頃からずっと言いたくて憧れてたセリフを言ってやろう!!」
なんせバイト始めてやっと言えると思ったのにそのあと間もなく命を落としてしまったようなんだから、不完全燃焼なのである。
「よ〜っし見てろよ15歳の婚約解消イベント!お前らの思い通りの展開にはさせんぞ!!」
セシリアは勢いよく立ち上がり拳をあげて叫んだ。
「お嬢様何を大声出してるんですか?」
部屋の外に待機していたサラにすかさず注意をされた。
気がつけば学園に入学して3年がたっていた。
小説の内容通り、クリストファーとヒロインであるマリア(という名前だったけどその通りだった)は自称運命の出会いというものを果たし、順調にお互い惹かれ合っている様だった。
セシリア自身にもヒロイン補正みたいのがかかって小説のように嫉妬にかられ嫌がらせをしてしまうのでは、と警戒していたけど実際はそんなこともなく2人がいつどこでどれだけ仲良くしていようとも全く無関心でいられた。
むしろ、いいぞもっとやれと心の中で応援していた。
しかしセシリアの周りの令嬢達がそれを良しと思わず同情されてしまい、ヒロインにちょっかいを出す勢いだったのでセシリアは慌てて自分は大丈夫、気にしていないからと彼女達を宥めていたら知らない間に主人公2人以外の他生徒からの好感度が爆上がりしたようだった。
こんな展開は小説にはなかった気がするけど…はて?とセシリアは首を傾げたが、そもそも自分の行動も小説とは違うからそんなこともあるのかな、と思うことにした。
しかし1年前くらいからだろうか?マリアが他生徒から嫌がらせを受けていてその首謀者セシリアである、という噂が学園内に立ち始めた。
そしてその頃から婚約者であるクリストファーがセシリアのことを避け始めた。
とは言っても学園入学後セシリアは必要以上にクリストファーに近寄らなかった。
いくら婚約者同士とはいえ学園ではお互い他の生徒と変わらない立場のいち生徒同士である。
節度は弁えましょう、とセシリアから提案した。
実際ここは貴族子息令嬢しかいない学園で、自分たちは国の王子と公爵令嬢であるから他生徒にそんな気を使わなくてもいいのだが、セシリアの提案をクリストファーは受け入れた。
クリストファーの呼び方も「王子殿下」にすることを許してもらった。
が、これはこうして学園生活3年間の間に少しずつクリストファーと距離を置き、もしクリストファーとマリアが恋仲になっても嫉妬しませんよ〜と周りにアピールするためのセシリアの作戦だった。
そんなこんなでクリストファーとマリアの距離が急激に近づいても全く動じないセシリアを見て、他生徒は「本当にセシリア様が?」と疑問を持つのだがそれでも次から次へと嫌がらせの噂が出ては広がっていった。
ある時は「マリアの持ち物がなくなったと思ったら中庭の噴水の中に投げ込まれてた」、またある時は「階段を降りてたら後ろから押されて転がり落ちた」、「歩いていたら上から植木鉢が落ちてきて間一髪のところで避けた」なんて下手したら傷害罪殺人罪でしょっぴかれる内容のものもあった。
「小説そのまんまなの1日のよね…嫌がらせの内容も」
次々出てくる噂にセシリアは思った。
「わたしやってないんだけどな…誰か他の生徒がやってるの?でも雰囲気的にそんな感じもしないし…はっ!も、もしかしてわたし実は夢遊病とか二重人格とかで自分の知らない内に本当に手を出しているのかも…」
あわわわ…と慌てたふりをするもすぐに素に戻る、そんなわけない。
でも犯人として自分の名前が上がっているのは、心当たりないにしてもいただけない。
ちらっと机の上に置いてあるものを見る。
「一応準備しておいて正解だった、ってとこかな」
そうつぶやくと少しだけ悪役っぽい笑みを浮かべた。
そんな3年間の集大成が今この状況である。
実は今はわたし達3年生の卒業パーティー真っ只中なのである。
パーティーといってもドレスに婚約者や男性のエスコートにと堅苦しいものではなく、現代でいう謝恩会みたいなものである。
しかし一応、国王陛下夫妻や来賓である国のお偉いさん方、卒業生の親は参加している。
そう、セシリアはこれらの人々の前で思いっきり婚約破棄を言い渡され二つ返事で了承したのだ。
セシリアの瞬殺の切り返しに婚約破棄を切り出した本人はもちろん隣にいるマリア、この場にいる全ての人物が呆気に取られた。
「えっ婚約破棄したいんですよね?了承したのになんでそんな反応するんですか?」
セシリアは目の前にいるマヌケ面もとい元婚約者にわざとらしく首を傾げて問いかけた。
その問いにハッと我に返るクリストファーは怒りの表情でセシリアを指差し叫ぶ。
「なにを呑気な!知っているんだぞ、貴様がここにいるマリアに散々嫌がらせをしていたことを!!」
そう言うとセシリアを指差している逆の腕でマリアを抱きしめながらこれまで噂されたマリアへの嫌がらせを一つ一つ言い始めた。
それを聞いた来賓や親達はざわめき始める。
『ホントに小説まんまなんだなぁ…』
目の前でギャーギャー叫んでいる元婚約者のセリフを右から左に受け流すセシリア。
「あの、一生懸命騒いでいるところ大変申し訳ないのですが何ひとつわたしには心当たりないの ですが?」
「嘘をつくな!マリア本人が僕に泣きながら訴えてきているんだ!!」
大きくキラキラした目に涙をいっぱいに溜めて恐怖に震えているマリアをクリストファーは両腕で愛おしそうに抱きしめる。
その様子を表情一つ変えずにセシリアは口を開く。
「証拠は、ございますか?わたしが犯人、もしくは首謀者だという確固たる証拠は」
いつもより少し低めの、少し圧のかかった声でセシリアは尋ねた。
「証拠など…ここにいるマリアの発言が全てだ!マリアの言うことに間違いがあるわけがないだろう!!」
キッパリとそう言い切ったクリストファーにセシリアだけでなくその場にいる全員の頭に「?」が浮かんだ。
この王子殿下は何を言っているんだ?
誰もがそう思った。
一気に呆れ返った会場の雰囲気に気付くことなくクリストファーままくし立てる。
「逆に貴様がやってないという証拠はあるのか?」
「ございますけど?」
またしてもクリストファーのセリフに被せてくるかのようにセシリアは答えた。
そしていつから準備していたのかどこからか3冊の分厚いノート似ようなものをだした。
「これはわたしが学園入学初日から1日欠かさず書き続けた日記です。日々の出来事をそれは細かく書き留めてあります。いつ、どこで、誰と、何をした。マリア様が嫌がらせにあったという日の日記をご確認くださいませ。大体は友人の令嬢と授業の後にカフェテリアで過ごしていたり、先生に頼まれ事をしていた筈なのですが…」
パラパラと日記帳をめくりながら余裕ありげにセシリアは言った。
クリストファーは悔しそうな表情をするがそれでも負けじと声を上げる。
「そんなもの幾らでも後から書けるだろう!貴様に都合のよい証拠にすぎない!!」
「そうですね、たしかにそうです。」
あっさりとクリストファーの意見を認めるセシリア。
しかしニヤリとした表情をクリストファーに向けるとすっと立ち位置を横にずらすと彼女の後ろにいた令嬢3人が現れた。
「王子殿下もご存知だとは思いますが彼女達はわたしが幼い頃から仲良くしていただいている友人達です。実は以前彼女達に日記を書いていることをお話ししたら興味を持ってくださったらしくご自分達も書き始めたとおっしゃっていました。ですからわたしたちが一緒に過ごした日は皆様の日記にも同じようなことが書かれていると思います」
そのセリフに令嬢達もさっと日記を取り出し力強く頷いた。
そして先程のマリアが被害にあった日の日記をそれぞれが見せアリバイを示した。
「あと先生の頼まれごとなどはおそらく職員室にその記録が残っていると思います。というか毎回残しておきましたので」
クリストファーとマリアににっこり微笑む。
ちなみにもちろんこれは偶然ではなく、セシリアが事前に準備しておいたことだった。
悪役令嬢が断罪されるストーリーは大抵証拠はあるのか?みたいな展開になる。
始めこそ決定的な証拠が出てこないもののそこはお約束展開、最終的には悪役令嬢の悪事を暴く証拠が出てくるのだ。
時には悪役令嬢の取り巻き達が証人になったり指示されて悪事に手を貸していたと暴露する者が現れるのだ。
ならばそれを逆手に取ろうとセシリアは日記を書き始め、マリアの嫌がらせの噂が立ち始めた頃にさりげなく友人達に日記のことを話し興味を持たせ彼女達も書き始めるように誘導した。
正直ここまでうまくいくとは思わなかったけども…。
「そ、そんなの!幾らでも口裏合わせられるだろう!!それに貴様が直接手を下さなくても首謀者として他のものにやらせることだって出来る!!!」
表情を硬らせて冷や汗をかきながらもそれでもセシリアを糾弾しようとするクリストファーにセシリアは冷たい視線を向けた。
「ならば逆にお聞きしますけど、もしわたしが裏から指示を出したと言うならばその実行犯となる方はどこのどなたですか?もちろん犯人はわかってらっしゃるからそんなこと言えるんですよねぇ??」
視線をクリストファーの腕の中にいるマリアに移す。
「マリアさん、被害者ならば少なくとも何回かは犯人の方と遭遇してますよね?それはわたしでしたか?それとも違う方でしたか?違う方ならこの学園の方ですか?特徴とかわかりますか?自分の身の潔白を証明するためならばなんとしても真犯人をみつけてみせますから教えてください」
一気にまくし立てるように言うと、マリアはみるみる顔を赤らめセシリアを睨みつけた。
「え?何故わたしはそんなにマリアさんに睨まれているのでしょう。そんな顔してるとまるでマリアさんが加害者でわたしが被害者のように見えてしまいますよ?」
わざとらしく怯えた様子で友人達にすがりつくセシリア。
その様子を見たマリアはセシリアに向かって叫んだ。
「なんなのよ!アンタ悪役令嬢でしょ?それならちゃんと悪役令嬢の仕事しなさいよ!!アタシに嫌がらせをして国外追放なりされなさいよ!!なんで何もしてこないのよ!!なんでアタシが嫌がらせの自作自演しないといけないのよ!!!!!」
マリアの叫びはホール全体に響き渡りそして静まり返った。
「自作自演?」
セシリアがつぶやいた。
「マリアさんはわたしから受けていたと訴えていた嫌がらせをたった今自作自演だと自白したということでよろしですか?それってわたしだけじゃなく王子殿下も騙していたことになりますよね?自分がやったことの罪をわたしになすりつけようとしていたってことですよね?それって…軽く犯罪ですよね?」
セシリアのその言葉にマリアだけでなくクリストファーもハッとした。
罪をなすりつけ冤罪を背負わされそうになったセシリアは公爵令嬢、かたやセシリアを陥れようとしたマリアは伯爵令嬢。
地位的にもマリアが犯した罪は重い、家族を巻き込み爵位剥奪されてもおかしくはないだろう。
そのことに気づきマリアは顔面蒼白になり身体は震え出した。
「王子殿下もマリアさんの訴えだけを鵜呑みにし、事実確認もせず婚約者であったわたしだけを責め立て婚約破棄まで言い渡した。マリアさんの罪に加担したと言ってもおかしくはないでしょうね。まぁもう婚約破棄された身としては赤の他人なので何も思うところはありませんけど…」
片手を頬に当て悩ましげにため息をつくセシリア。
そして顔を2人に向けにっこりと微笑む。
「言われもない罪を被せられ名誉を傷つけられそうになったのですから、わたしも黙ってないでしっかり訴えを起こさせていただきますね」
セシリアはちらっと自分の両親や国王陛下のいる方を見た。
父親は怒りで鬼のような表情でクリストファーとマリアを睨み、国王陛下も呆れた表情だった。
これでどちらが優勢になったかは一目瞭然。
その様子に満足したセシリアはくるりと踵を返すと出口に向かい歩き出した。
そしてクリストファーとマリアの横を通り過ぎる時に口を開く。
「小説通りにわたしを陥れられると思ったら大間違いですよ」
その言葉にマリアは勢いよく顔をセシリアに向ける。
驚きに目が見開いているマリアに対しセシリアは悪役令嬢らしい嫌味ったらしく微笑む。
「でも貴女を陥れようとしているわたしはまさに悪役令嬢ってとこですかね」
そして続いてクリストファーに向かって言った。
「わたしとの婚約破棄ですよね?さっきも申し上げましたが返事は…」
とびっきりの笑顔になるセシリア。
「はい喜んで!!です」
こんな荒削りな話を最後までお読みくださりありがとうございます。
自己満足な投稿になりましたが本人は満足しています(笑)
誤字脱字、気づき次第修正させていただきます。
下手な文章なのは理解していますので、間違い指摘は嬉しいのですがあまり批判罵倒暴言等いただいてしまうと凹みます。
この度は本当にありがとうございました。
次の機会があるか分かりませんが(なんせ絵描きなので)、ご縁がありましたらまたよろしくお願いいたします。