そして彼女は舞い戻る
「…………?」
何が起きたのか、わからなかった。
確かにわたしは、京香が反射した業火に呑み込まれたはず。
それなのに、わたしは何にも感じなかった。
熱さも、痛みも、苦しみも。
何も感じない。
おそるおそる目を開けてみる。
しかし、目を開けたはずなのに何も変わらなかった。
目の前に拡がっている光景が……真っ暗な闇だったのだ。
あれ? なんでだろう?
これってもしかして、死後の世界?
死んだら無になるってやつだろうか?
いや、そんな感じじゃない。
むしろ、安心するような、この感覚。
この暗闇には、覚えがある。
これって……まさか。
「なるほど大富豪ね……面白い例えだわ」
「そうぽんか? そんなに上手い例えとも思わないけどぽん」
「だってさ、これで『闇属性』が二人になったわけでしょ? ジョーカーが二枚ってことはさ……」
少しずつ、闇が晴れていく。
その隙間から、微かに見えた人影は。
「大富豪じゃ……無敵だと思ってさ」
「ま……麻子!!!」
「や、華蓮。待たせてごめん」
「黒瀬麻子……!? どうして!?」
京香にとっても想定外の登場だったのか、これまでに見せたことの無いような表情を見せた。
「本当に……本当に、麻子なの!?」
「どう見てもそうでしょ、華蓮。よく……頑張ったね」
「っ……! 麻子、あんた一体今までどこに……!」
今すぐ麻子の元に駆け寄りたいが、京香の『万華鏡』で大幅に強化された炎魔法と麻子の『黒幕』が混ざり合い、近付けない。
麻子の『黒幕』に守られていなければ、強すぎる魔力に圧し潰されているところだ。
「話はモアから聞いて、華蓮。多分、今の華奏ちゃんを止められるのは華蓮だけだから」
「え、え!?」
「華蓮、こっちに来るぽん!」
「モ、モア……! あんたも随分遅い登場じゃないの、ばか!」
「ば、ばか!?」
「モア……お前か。裏切った、ってこと?」
怒りに身を震わせている京香が、モアをギロリと睨んだ。
「裏切ったとは人聞きの悪い。最初から、仲間になるなんて言った覚えは無いぽんよ」
「いや……言っただろうお前は!」
「あれ、そうだったぽん? それは失礼。失言だったぽん(笑)」
「……舐めた真似を……!」
「モ、モア……一体何が、どうなってるの……?」
魔力を使いすぎて倒れそうになりながらも、何とかモアのもとへ駆け寄った。
「すまない、華蓮。予定どおりとはいかなかったけど……まだ間に合う。こんなことになったのは、ぼくのせいでもあるんだぽん」
「え……?」
「始まりは……『最強の魔法少女』が誕生したことにあったんだぽん」




