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魔法少女は闇が深い  作者: アリス
魔法少女は闇が深い ~樋本華蓮編~
95/200

核心

「『キャンプ……ファイヤー』!」


 炎の球体が、京香を襲う。

 京香にとっては、見たことないであろう巨大な火の玉だ。

 それでも京香は、怯む様子を見せなかった。


「へえ、さっきよりも強い……でもねぇ」


 京香はわたしに対抗するように両手を突き出すと、言った。


「『二面鏡』……」


 ぐにゃりと京香の両手が歪んで見えた。


「なっ……!?」

「『倍返し』!」


 ――ぱりん!


 震えあがるような轟音と共に、業火がわたしの右側を通過した。

 右頬を汗が垂れ、声が震える。


「……冗談でしょ……」


 反射した炎は、さっきと違いわたしには向かってこなかった。

 しかし、威力が違う。

 今度は、遥かに強い魔力で跳ね返ってきた。

 そう……わたしの炎魔法よりも強く。


(倍返しって……まさか、京香の鏡魔法はただ反射するだけじゃないってこと……?)


「危ない危ない。二面鏡じゃなかったらヤバかったねぇ」


 ひらひらと手を振りながら笑う京香。

 まだまだ余裕があるように見える。

 でも、わたしは確かに聞いた。

 わたしが操られかけたときも聞いた、何かが割れるような音。

 それに今、京香の前で反射した炎は、まっすぐ跳ね返ってこなかった。


(もしかして……割れた鏡があったから、歪んだ? そのせいで、まっすぐ跳ね返すことができなかったんだとしたら……)


 ぎゅっと拳を握る。

 今よりも、更に強力な魔力で攻撃することができれば。

 京香の鏡魔法を二枚とも粉砕して、攻撃を届かせることができるかもしれない。

 しかし、それにはリスクもある。

 もし、一枚しか壊せず、跳ね返されたら……それを、避けきれなかったら。

 わたしは自らの炎魔法に呑み込まれることになる。

 そうなったら、わたしは……

 じりじりと様子を窺うわたしに、京香はぬっと片手を拡げて言った。


「邪魔はさせないわよ。こんなまどろっこしいことしてまで、ようやくこの舞台を整えたんだから……この、鏡の魔法でね」

「う……!」

「それにもうわかったでしょ、無駄だって。そこでおとなしくしていなさい」

「……そんなこと、できるわけないでしょ……!」


 こいつ……!

 やっぱり、止めるためにはこいつを倒すしかない。

 他人を操る力……そんな力があったら、何でもできてしまう。

 そんな邪悪な魔法を、こんなやつが持っているから……!



『ようやくこの舞台を整えたんだから――』



 ……あれ?

 なんだろう。

 今の言い方には、何か違和感がある。

 舞台を、整えた?

 それじゃまるで、最初からこうなることが仕組まれていたみたいじゃないか。

 ふいに、芽衣の言葉が頭をよぎった。


『本当に、魔獣は人間を襲っているのでしょうか? もし魔獣が人間を襲い始めたら、わたしも気付くと思うのです。これでも、魔王ですから』


 芽衣は確か、そう言っていた。

 魔獣が人間を襲っているというのは、おかしいと。

 それを聞いたわたしは、どう思った?


『今の魔獣は、人間を襲ったりはしない……だとしたら、ミラージュの存在意義が無いはず。それなら、今のこの状況って……誰かが意図的に、何かをしようとしている……?』


 そう、確かそんな風に考えたはずだ。

 魔獣の暴走は、魔王の仕業ではない。

 だから、芽衣が魔獣の力を借りてアストラルホールへの道を開いてくれたとき、こう考えたこともあったはずだ。


『もしかして……芽衣のほかに、同じように魔獣を従わせている者が別にいる……?』


「……まさか……」


 わたしは、唾を飲んだ。

 ミラージュが作られたのは、再び人間を襲い始めた魔獣に対抗するため……瑠奈は、そう言っていた。

 そして、芽衣はそのことに疑問を覚えていた。

 だからわたしも、何度も疑問には思ったんだ。

 でも、答えに辿り着くことは無かった。

 だって、そんなことがあり得るなんて想像もしていなかったから。

 しかし、今。

 ようやくその答えがわかった気がする。


「まさか……全部あんたが仕組んだことじゃないでしょうね……?」

「……ん?」


 京香の目が、やけに暗く見える。

 もし今思い浮かんだことが、正しいとしたら……今回の事件の発端は。


「あんたが……魔獣を、操っていたの……?」

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