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魔法少女は闇が深い  作者: アリス
魔法少女は闇が深い ~樋本華蓮編~
93/200

開戦の号砲

「ウチからすると……お前の方が理解できないけどね」

「……何ですって?」

「知らないわけないよね? 魔王を倒したときのご褒美。魔王を倒すと、何でも願いを叶えることができるって話」

「そりゃ、知ってるけど……あんた……そのためだけに、芽衣を……!?」

「だけ? 何言ってんの?」

「んな……!?」

「こんな大きな理由、他に無いでしょう。あの魔王ひとり仕留めるだけで、何でも願いが叶うのよ。それなら、なんだってすると思わない?」

「だから! 今、その魔王は芽衣で……芽衣は、普通の女の子なんだから……!」

「普通の? 冗談でしょ。魔王は魔王よ」

「……っ!」

「あの魔王は、ウチが潰す。邪魔するなっていうのは、そういう意味よ」

「……どっかで聞いたような台詞ね、それ」


 わたしは、目の前にいる京香にかつての自分を重ねていた。

 確かに、芽衣は魔王の力をその身に宿している。

 と、いうことは。

 芽衣を殺した者は、願いを叶えることができるということだ。

 それは、わたしもわかっていた。

 だから、冬に芽衣と戦ったとき……正確には、麻子と芽衣をアストラルホールから現実世界に連れ帰るとき、その考えは一瞬頭をよぎっていた。

 今ここで、芽衣を殺してしまえば。

 華奏の病気が治るんじゃないかって。

 だけど、わたしはふたりを病院に連れて行くことにした。

 いくら華奏のためとはいえ、芽衣という『普通の』女の子を殺すなんて選択肢、わたしには無かった。

 しかし、京香は違う。

 芽衣を倒して己の願いを叶えることに、ためらいはない。

 本来、京香ひとりでは芽衣を倒す手立てなど無かったはずだ。

 わたしぐらいの魔力を持つ人間ひとり操ることもできないのなら、芽衣を操ってどうこうすることも不可能のはず。

 だからこそ。

 京香は、芽衣に勝てる『駒』を用意する方法を思いついた。

 芽衣に勝てる存在……光の魔法少女を操って、魔王を討伐するという方法を。


「……いや……待って」


 そこまで考えて、わたしは思わず口に出した。


「だとしたら、願いを叶えることができるのはあんたじゃなくて華奏になるはず……やっぱりこんなことする意味ないじゃない!」

「馬鹿だねぇ。ウチは操れるんだよ?」

「えっ……?」

「操って、光の魔法少女にウチの願いを言ってもらえばいいだけでしょ」

「は……はは」


 自分でも何故だかわからないが、乾いた笑い声が漏れていた。

 これ以上、話しても無駄だ。


「……なるほど。もういいわ」


 わたしは指鉄砲の狙いを京香に向けた。

 人差し指の先に、炎を灯す。


「その口……閉じた方が良さそうね」


 ――バン、と乾いた音が響き渡った。

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