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魔法少女は闇が深い  作者: アリス
魔法少女は闇が深い ~樋本華蓮編~
87/200

二階の攻防①

「……華蓮さん……確かにあなたの魔力はわたしよりも強い。それは認めます」

「だったら、おとなしく……」

「ですが……勝てないなんて言った覚えはありませんよ」

「……は?」

「『電光……石化』!」


 バチッと電撃が走る音と、一瞬の光。

 その眩しさに思わず瞬きする間に、目の前から瑠奈はいなくなっていた。


「! 消えた!?」


 いや、違う。

 高速で移動しただけだ。

 でも……速い!

 目で追いきれないほどの速度。

 わたしは咄嗟に、自分の身体を炎で覆っていた。


「『電光雷轟』!」

「あう!?」


 炎を纏った身体に、衝撃が走った。

 ダメージは殆どないが、一瞬身体が硬直し、痺れを感じる。


「……今のでも、膝すらつきませんか。さすがにへこみますね」


 気付くと、瑠奈は階段から遠く離れた場所に立っていた。


「いったー……へこんでるようには、見えないけど」


 痺れた左腕を回しながら息を吐く。


「……大方、速さに自信ありってことかしら」

「これでも、Bランク最速の魔法少女ですから。速さなら、あなたにも負けません」


 薄暗い空間に、青白い稲妻がバチバチと沸き上がる。

 これが、雷の魔法少女――なるほど、これは厄介だ。

 確かに、わたしよりも速いだろう。

 あのスピードで動き回られては追いつけない。

 しかし、だ。


「でもそれだけじゃ、いつまで経ってもわたしは倒せないわよ」


 さっきの不意打ちでさえ、大した痛手にはなっていない。

 ちゃんと警戒していれば、瑠奈の雷にやられてしまうことはないはずだ。


「いいんですよ、倒せなくても」

「……え?」

「時間稼ぎ……それが、わたしの勝利条件ですから」

「時間稼ぎ……?」


 ここでわたしを足止めすることで、何が変わるのだろう。

 わたしと芽衣を引き離して、時間を稼いで……京香は、何をしようとしてる?

 わからない。けれど。


「じゃ……やることは決まったわね」


 それならば、話は単純だ。

 やるべきことは、ひとつ。

 一刻も早く、芽衣と合流する。

 そのために、わたしがするべきことは。


「どきなさい、瑠奈」

「……いや、です」

「あっそ。じゃ、力ずくしかなさそうね」


 右手に纏う炎の火力を一気に上げる。


「『其の二(メインイベント)』……!」


 速攻で、決着をつける!


「『送り火・大文字』!」

「『電光石化』!」


 またしても、閃光と共に瑠奈の姿が消える。

 残された青白い光を炎が呑み込むと同時に、思わず舌打ちをする。

 右手から放たれた炎の魔法には、何の手応えもなかった。


(くっ……何よあの初動は! 溜めも何もない、それなのに一瞬であれだけの速度に到達している! 助走とか必要ないわけ!? これが雷の力!?)


「『電光雷轟』!」

「『大文字』!」


 雷と炎がぶつかり合う。

 炎が雷を飲み込むが、それでも瑠奈には届かない。

 魔力は間違いなく勝っている。

 だが、瑠奈の自慢のスピードですべて躱されてしまう。


(どうすれば、あの速度に対応できる……?)


 わたしの周りで、バチ、バチと魔法がぶつかり合う音がする。

 しっかりガードしていれば痛くも痒くもないが、これでは埒が明かない。


(くっそー、この広すぎる空間が悪い……! これだけ距離を取りながら遠距離で攻撃できるのは、瑠奈にとって好都合! せめて、距離を詰めることができれば……!)


 わずかに見える瑠奈の姿を目で追いながら、周りで弾ける雷を炎で防ぐ。

 徐々に、目は慣れてきた。

 瑠奈の姿を追っているうちに、おおよその位置は掴めるようになっている。


 ――そう、瑠奈の姿を追うことに必死になっていたから、気が付かなかった。

 この薄暗い部屋の天井に、雷雲ができつつあるなんて。

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