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魔法少女は闇が深い  作者: アリス
魔法少女は闇が深い ~樋本華蓮編~
75/201

光の魔法少女

「……なんで……?」 


 誰もいない部屋で、呆然と立ち尽くしているとき。

 後ろから急に声をかけられた。


「樋本華蓮殿」

「ひっ!?」


 急に低い声が部屋に響いて、思わず悲鳴が漏れる。

 しかし、振り向いた視界の先に飛び込んできたのは……見覚えのある姿だった。


「……モスト!?」


 ミラージュの魔法少女と一緒にいた、モアによく似た異世界生物。

 どうして、こいつがここにいる?


「いやあ、驚きましたよ。あなたたちが姉妹だと知ったときは。よほど優秀な血筋と見える」

「……は……?」


 モストの声が、耳にこびり付くように聞こえて離れない。

 心臓の音が、やけにうるさく聞こえる。

 何を言っているんだ、こいつは?

 言葉の意味が分からない。

 でも、状況が悪いということはわかる。

 最悪なことが起こっているという、予感。

 華奏が……なんだって?


「華奏殿には、勝手ながら協力を依頼させていただきました。もちろん、姉である華蓮殿も一緒が望ましかったのですが……」

「何を……何を言っているの!?」


 流暢に、淀みなく、当たり前のように話すモストの話を制止した。


「あなたが何を言っているのか……全然わからない! 華奏は!? どこにいるの!?」

「おや? お気付きになられていませんでしたか?」

「は……?」

「すぐに気が付かなかったわたくしが言うのもおかしな話かもしれませんがね。モア殿と麻子殿と、それに芽衣殿が揃ってあなたの家に招かれたとき。既に事は始まっていたのですよ」


 モストはにこりと笑みを浮かべていた。

 でも、全く笑っているように見えない。

 無表情の笑顔を、貼り付けたような顔。

 矛盾しているようだが、本当にそう見えるのだ。


「どういう……こと」

「華奏殿には、見えていたんですよ。麻子殿の頭の上で寝そべっている、モア殿の姿がね」

「……えっ?」


 わたしはようやく、事の重大性に気付いた。

 わたしが魔法少女になったとき。

 モアは確か、こう言っていた。


『異世界生物であるモアを認識した時点で、この世界との歪みが生まれ、魔法少女となる――』と。


 そして同時に、麻子が家に来たときの会話を思い出した。


『ね……なんか妹ちゃん、じっとこっちを見てなかった?』

『あ、わたしも思いました。なんか麻子さんのことじっと見てるなって』

『やっぱり? もしかして……妹ちゃん、わたしのこと、好き?』

『自意識過剰も大概にしなさいよ! 不審者に見えただけでしょ!』


 あのときわたしは、ただの麻子の自意識過剰だと思っていた。

 でも、違ったんだ。

 麻子もわたしも、間違えていた。

 あのとき華奏は、確かに麻子の方向を見ていた。

 でも、麻子を見ていたわけじゃない。

 麻子の頭の上にいた、モアを見ていたんだ。

 どうして、気が付かなかったんだろう。

 どうして、華奏の変化に気が付かなかったんだろう。

 華奏におみやげを頼まれたとき……あの子は確かに、何かを言いかけていた。

 まさか、華奏は……


「どうやら、ご理解いただけたようですね」


 頷きながら、わたしの耳元に近付いてくる。

 やめろ。来るんじゃない。

 次にモストが言う言葉が。

 わたしにはわかっている。


「華奏殿は、魔法少女になっているのですよ。ひと月以上も前に、ね」


 目の前の景色が歪んで見える。

 声が思うように出ない。

 華奏が? どうして?


「いやあ、あんな逸材に気が付かないとは……わたくしもモア殿も、未熟さを反省せざるを得ませんね」

「モスト……あんた!」


 すぐ横にいた丸くて白いボディを鷲掴みにしようとするが、ひらりと躱されわたしの手が届かない高さに行ってしまう。

 態勢を崩しながらも、わたしは声を荒げて言った。


「あんた……どういうつもりよ! 華奏まで巻き込んで……わたしの妹を戦いに駆り出すつもり!?」

「そのとおりです。いや、駆り出すどころではありませんね。彼女は、光属性をもつ魔法少女なのですから」

「光……え?」


 光属性。

 光属性って……なに?

 思考が停止しそうだ。

 これ以上考えることを、わたしの脳が拒んでいる。

 それでも、わたしは思い出していた。

 つい最近属性が判明したという、Aランクの魔法少女。

 固有属性である、光属性と言われる魔法少女。

 それって……


「そうです。華奏殿は、固有属性である光属性の魔法少女。闇属性の天敵……つまり、わたくしたちミラージュの救世主となるべき存在なのですよ」

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