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魔法少女は闇が深い  作者: アリス
魔法少女は闇が深い ~樋本華蓮編~
73/200

芽衣と華蓮は結託する

 魔獣がまた人を襲うようになったから、その魔獣を倒すために徒党を組んだ……瑠奈はそう言っていた。

 しかし、芽衣はそのことに違和感があると言う。

 おそらく、ふたりとも嘘は言っていない。

 何かが食い違っているとしか思えない。


(今の魔獣は、人間を襲ったりはしない……だとしたら、ミラージュの存在意義が無いはず。それなら、今のこの状況って……誰かが意図的に、何かをしようとしている……?)


 そう思ったとき、京香とモストの顔が脳裏に浮かんだ。

 京香の言うことは、一ミリも信用できない。

 あいつの口車に乗せられて、少しでも芽衣を警戒したことは馬鹿だった。


(……京香は、これからどう動くつもりかしら)


 ミラージュの誘いを断った以上、わたしとも明確に敵対したと言っていい。

 わたしや芽衣を、駆除しようとするのだろうか。

 鏡の反射能力で、闇魔法も使う芽衣に勝てる算段があるのだろうか……?


「どうやら、まだ情報が足りないみたいですね……」

「……そうね。でも、やることは決まったわ」


 わたしは目の前にある皿からリンゴを摘まむと、豪快に齧ってから言った。


「あいつらを……ミラージュを追えば、麻子に辿り着けるんだから」


 にっと笑うわたしを見て、芽衣は目をぱちくりさせた。


「昨日も思いましたけど……華蓮さんって、切り替え早いですよね。頼りになるというか、危なっかしいというか」

「そう? でも、芽衣もそう思わない?」

「……ま、今は他に手掛かりもないですからね」


 機嫌を直してくれたのか、芽衣も悪戯っ子のようににっと笑った。


「わたしも協力します。ミラージュとやらの魔法少女を、探しましょう」


 ふたり顔を合わせて頷く。

 やることは、決まった。

 わたしたちは……ミラージュを追う。

 そして、麻子に辿り着くんだ。


「あ、でも……芽衣は気を付けなさいよ。ミラージュはあんたを敵視してる。襲われるかもしれないんだから」

「わかってます。ちゃんと戦いになったら、生け捕りにしますよ」

「生け捕りて……」


 捕まえた魔法少女を拷問して麻子の居場所を吐かせようとする芽衣を想像して、身震いする。

 何故だろう、今ならそんな姿が容易に想像できてしまう。

 さっきの果物ナイフ持った姿……あれ、冗談ってことで良いんだよね?


「そういえば華蓮さん」

「は、はい! なんですか!?」

「……なんで敬語なんですか。華蓮さん、明日がチェックアウトの日ですよね? どうするんですか?」

「あ……」


 そうだった。

 今日は東京に来てから三日目。

 予定では、明日の朝にはここを発つことになっている。


「そうね……本当はこっちに残りたいんだけど……」


 思わず口ごもる。

 本当は、麻子を見つけるまで東京に残りたいのだが……妹の華奏には、明日帰ると伝えている。

 間が悪いことに、明日の昼から両親が出張で家を不在にするのだ。

 だから、わたしが帰らないと華奏は家にひとりになってしまう。

 それに、これ以上ここに滞在するお金もない。


「……ごめん。わたし、一旦家に帰る。また、すぐに戻ってくるからさ」

「大丈夫ですよ。ひとまず、こっちは任せておいてください」

「うん……無茶はしないでよ芽衣。戦うときは一緒に、だからね」

「わかってます。頼りにしてますよ、華蓮さん」


 微かにほほ笑む芽衣を見て、ほっとした。

 やっぱり、今の芽衣は魔王なんかじゃない。

 むしろ、麻子のこと好きすぎまである。


 ……それじゃ、わたしが思い違いをしているような気がすると思ったのは何なのだろう。

 わたしが腑に落ちない違和感は、芽衣のことじゃない。

 何か大事なことを見逃しているような、もやもやしたこの気持ち。

 わたしは、何を間違えている……?

 ……いや、もしかしたらただの杞憂なのかもしれない。

 そう思ったわたしは、芽衣と一緒におしゃべりしながら東京最後の夜を過ごした。

 思えばこのときが、東京に来てから一番楽しい時間だったかもしれない。

 芽衣の用意してくれたリンゴは、本当に美味しかった。


 しかし、次の日。

 事態は急変することになる。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 華蓮が今まで考えていた以上に現実主義者で驚きました。そして直感にも優れていると・・頼りになりますね。 芽依は麻子がいなくなって過敏になってるまでありますね・・見た目だけなら小動物で可愛らし…
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