エピローグ
『……ぃよおおおおおおし! 更新! 世界記録更新です!』
2Dモデルを手に入れたメイルが左右に大きく動く。
――メイルがこのアドベンチャーゲームのRTAを走り始めてから、もう一年近くになるだろうか。
毎回、こんなクソゲー二度とやるもんかと暴言を吐き台パンして配信を終えていたが、数日も経てばけろっとして再挑戦。
そんなことを何度も何度も繰り返し、とうとうメイルは記録を塗り替えた。
コメント欄に、祝福の声と驚嘆の声が溢れかえる。
『よかった……! これは神! 神ゲーでしたね!』
クソゲー呼ばわりから一転、掌大回転で大はしゃぎするメイル。
とはいえ、これまで何度も何度もやり直すほどこのゲームにのめり込んでいたのだから、本人にとっては紛れもなく神ゲーだろう。
『間に合ってよかった……実は、見てくれている皆さんに大事な話がありまして。……引退……いや、そこまでは……結婚? 全然違うのです』
画面の中のメイルがぎゅっと目を閉じる。
『メイル、しばらくお休みをいただこうと思うのです。せっかく見てくれる人が増えている中で言い辛いんですけど……大事な大事な試験を控えているものでして。頭のいいお姉さんがふたりいるので、勉強を教えてもらえることになったんですよ。え? いやいや勉強だけです。そんなセンシティブなことは何もないです。断じて』
メイルが眉をしかめる。
『引退するわけじゃないので、試験までの間も時々は配信しようと思ってますし……無事に試験が終わったら、これまで以上に活動するつもりなのです。なので、ちょっと会える機会が減ってしまいますが……見守っていただけたらな、と。え、いやそんな泣くほどでもないでしょう黒の魔法少女さん……ちょっとお休みするだけですし……特に……あ、いやなんでもないですけど……』
画面の中のメイルは、にこにこ笑っていた。
『それじゃみんな、今日は長時間の配信に付き合ってくれて……ありがとうございます。みんな……おつめるなのです』
何度も何度も見たエンディングが流れる中で、最後に声が聞こえた。
『あ、最後に……ひとつ、言っておきたいことが』
そのあとに聞こえた言葉は、聞き覚えのある言葉だった。
でも、声色が違うのは……気持ちの変化ということだろうか。
『わたしのこと……見つけてくれて、ありがとう!』
― 第一部・完 ―
「魔法少女は闇が深い」、これで第一部完結です。
最後まで読んでくださった方々、ありがとうございます。
このお話は一旦ここで完結しますが、続編の第二部を
書きたいと思い現在計画中です。
本作を少しでもお気に召していただけたら、ブックマークや
☆評価をいただけると大変嬉しいです……!
感想やアドバイスも、いつでも大歓迎です。
改めて、読んでくださって本当にありがとうございました!