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魔法少女は闇が深い  作者: アリス
魔法少女は闇が深い ~おわりの魔法少女編~
199/201

両サイドの交錯

 わたしは、夢の世界での話を全部芽衣に伝えた。

 芽衣は、口元を手で覆ったまま動かない。

 ……流石にショックだったようだ。

 芽衣にとって、麻子は特別な存在。

 それは、よくわかってる。

 だから、わたしから真相を言うのは心苦しかった。

 でも、芽衣には言わないといけない。

 ミラージュ騒動のとき……わたしは、芽衣に喋るのを躊躇ったことを後悔した。

 だから、隠すことはしない。

 だけど、もし芽衣が泣いちゃったりしたら……


「芽衣……わたしたちは、どうすればいいと思う?」

「…………」

「……そうよね。ごめん。答えなんて、出るはずないわよね」

「……いえ。答えは出てるんですが」

「え?」

「だって、選択肢なくないですか?」


 目線は下のまま、独り言のように芽衣は言った。


「魔王を倒して、麻子さんを戻してもらう。それしか……ないでしょう」

「…………」


 麻子が消えちゃうのは嫌だ。

 麻子が消えるのは、絶対に止めなくちゃいけない。

 それはわたしも同意見だ。

 でも、そうしたら麻子は、今までの麻子じゃなくなっちゃう。

 残るのは闇麻子じゃなくて、夢麻子。

 麻子は、わたしのことも芽衣のことも忘れちゃうわけで……


「……理解は、してるのよね? 麻子を復活させても……その麻子は、わたしたちが知ってる麻子じゃないかもしれないって」

「……っ」

「そうなったら、麻子のことを一番別人だって感じちゃうのは芽衣……あんただと思う」

「……!!」


 芽衣の目つきが変わった。

 やば……余計なこと言っちゃったかもしれない。

 でも、本心だ。

 一度開いた口は、止められなかった。


「あんたのことはわかってるつもり。あんたにとって、麻子がどれだけの存在かってこともね」

「……わかったような口、きくんですね」

「わかるわよ。もう随分一緒にいるんだから。だからこそ、迷いが出るってものでしょ」

「迷い、というか……単純な疑問なんですが」


 芽衣は、口元に当てていた手を降ろして言った。


「闇麻子さんの記憶を残したまま、夢麻子さんを生き返らせる……そう願ったら、ダメなんですか?」

「はあ? そんなの……」


 そんなの……

 ……あれ?

 意外と無理じゃないのもしれない。

 何か反則みたいに聞こえるけど、そもそも何でもありの魔法。

 それができるなら、迷う必要なんて無いんじゃ……


「無理ですよ」

「!?」

「夢魔法で作られたものは、必ず消える。それは、避けようがない運命ですから」


 突然現れたのは、獣耳の上品な女性。

 丈の長いメイド服に身を包んだその女性は、見覚えのある顔だった。


「あんたは……ヴィラ……!?」


 女神直属のメイドである、ヴィラ。

 わたしにとっては、アイスピックで麻子を威嚇していた狂信者のイメージが強い。

 そのヴィラが、どうしてこんなところに……


「……どういう意味ですか。というか……あなたは、麻子さんの夢魔法を知ってたんですか?」


 芽衣が、ギロリとヴィラを睨んだ。

 魔力は失っているはずなのに、肌で芽衣の殺気を感じる。


「……まさか。わたしが知っていたはずないでしょう。それより」


 ヴィラは、芽衣には目もくれずわたしの方に歩いてきた。


「樋本華蓮。あなた……女神様に会ったのですね?」

「……え」

「隠しても無駄です。あなたから、女神様の匂いを感じますから」


 ……いやいやいや。

 そんなわけないでしょ!?

 会ったっていっても、それは夢の中の話。

 この女、何を感じ取っているんだろう……普通に怖い。


「わたしは、女神様に会わなければいけません。連れて行きなさい、女神様の元へ」

「……!」


 そういうことか。

 ヴィラは、女神を探し求めている。

 女神が、今は夢麻子が作り出した夢の世界にいる……そのことを、ヴィラは知らないはず。

 だから、女神と接触したわたしのところに……

 ……ん?

 でも今、ヴィラは『夢魔法』って言っていた。

 それはどうして……


「ちょっと……無視しないでもらえますか?」


 芽衣が、明らかに不満そうな声をあげる。


「……芽衣さん、でしたっけ? 悪いけど、魔力もないあなたは場違いですよ。消えてもらえますか」

「……は……?」


 ……やばいやばいやばい。

 芽衣がキレてるのがわかる。

 芽衣が魔力を持っていたら、今にも暴風が巻き起こるような……

 とにかく一旦落ち着かせないと。


「ちょ、ちょっと落ち着いて。ヴィラ。どうしてあなたが夢魔法のことを知ってんのよ?」

「自分で調べて辿り着いた……ただそれだけのことです。尤も、あなたが夢の世界に行くのを見届けるまでは、半信半疑でしたが」

「……見てたってこと? でも、どうやって……」

「わたしには、容易に壁をすり抜ける知り合いがいますので」


 そう言ったヴィラの背後に、見慣れた姿が現れた。


「……久しぶりぽんね、華蓮」

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― 新着の感想 ―
なんというか思い切りが良いのは芽衣の良い所ですね。ただ華蓮のうじうじ悩みつつも自分なりに進もうとするところが好きです。 モア裏切ったなてめぇ( 冗談は置いておいてお久しぶりです。 また冷えて参りまし…
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