表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女は闇が深い  作者: アリス
魔法少女は闇が深い ~おわりの魔法少女編~
196/201

華蓮はそれでも構わない

「女神。魔王を……アストラルホールに解き放ってよ」

「んな……!?」


 わたしの言葉に真っ先に反応したのは、女神ではなく夢麻子の方だった。


「何を言ってるの!? そんなことしたら……!」

「でも、それしかないでしょ」

「……!」

「夢麻子。あんたがわかってないわけないわよね」

「な、何を……」

「あんたの魔力が尽きたとき……わたしの知る闇麻子は消える。でもそのとき、あんただって無事じゃいられないわよね?」

「……そ、それは……」


 夢麻子は、否定しなかった。

 自分自身のことだ、当然わかっているだろう。

 助かったのが奇跡と言われた交通事故。

 でも実際は、助かっていなかったってこと。

 夢魔法『夢遊病』で生み出した分身で、助かったように見えていただけ。

 当の本人は、ずっと魔法で作られたこの空間にいる。

 だったら、魔力が切れたときどうなるか……そんなの決まってる。

 だから、わたしが願わなくちゃいけないんだ。

 黒瀬麻子を、生き返らせてって。


「魔王を元に戻して、わたしが倒す。マッチポンプだけど……それしかないのよ」

「華蓮……」

「ねえ女神、そういうことだから。魔王を切り離して解放する……できるんでしょ?」

「……ふむ。できる。できるが……」

「できるが……なによ?」

「汝は自分が何を言っているのかわかっておるのか?」

「え」

「せっかく封印した魔王を解き放つ。それはつまり……」


 女神は、真剣な眼差しで言った。

 その眼差しに、一瞬怯んでしまう。

 そのときだけは、アストラルホールを統括している女神の顔だった。


「汝の勝手な都合で、世界を危機に晒すということじゃぞ」

「…………」


 それは……そうだ。

 今は、夢麻子のお陰でアストラルホールには平和が訪れている。

 なのに、もし……もし、失敗したら。

 魔王に勝てなかったら。

 魔王を倒せなかったら。

 世界はどうなっちゃうんだろう。

 そう考えたら、わたしはとんでもないことを言っているのかもしれない。

 我儘で、自分勝手で、傲慢で。

 言っちゃいけないことを言っているのかもしれない。


「わたしは……それでも構わない」

「華蓮!!」


 夢麻子が叫んだ。


「そんなことして……失敗したら、あなたも終わりよ!?」

「勝てばいいでしょ」

「っ……」

「わたしが勝てば問題ない。違う?」

「あ、あのね……」


 呆れたような顔を見せる夢麻子。

 ……というか、若干馬鹿にされてるような。


(……そうよね。当たり前だけど……夢麻子だって麻子なんだ)


 この人を小馬鹿にしたような麻子の顔。

 わたしは何度も見ている。

 久しぶりでも何でもないのに、何故だか懐かしい気持ちになってしまった。


「ふん……不遜な奴じゃな」


 不機嫌そうな声で、女神が言った。


「む……あのねえ女神。これはあんたにとっても悪い話じゃないはずよ」

「はあ? 何故そう思う?」

「だってこのまま夢の世界が崩壊したら……ここに閉じ込められたあんただって無事じゃすまない。あんたも巻き添えを喰らうんじゃないの」

「ああ……そういうことか。じゃが、それは正しいようで間違っておるな」

「は?」

「汝は勘違いしておる。忘れたか? わしの望みを」

「女神の、望み……?」


 女神の望みって……世界を無に帰すっていうあれのこと?

 不死の自分の生を終わらせるために、世界ごと終わらせようっていう滅茶苦茶な……


「……あ」

「理解したか」


 女神が微かな笑みを見せる。


「この夢の世界が崩壊したとき、ここにいる者は消滅する。つまり……ここにいれば、わしの望みは叶うということじゃ」

「…………」

「わかるか。わしにすれば、このままこの世界が崩壊することに利があるんじゃよ」

「…………」


 ……なるほどね。

 だから女神は、自分から夢麻子に何かしようとしないんだ。

 でも、だったら尚更……どうして女神はわたしに夢魔法の話を……

 いや、そんなことどうでもいい。

 女神がわたしの味方じゃないってことは、最初からわかってる。

 わたしの言うことに、素直に応じるなんて思ってない。


「だったら……魔王だけでも力ずくで剝ぎ取るしかないわね」


 わたしはもう一度、指先に炎を灯した。


「……まあ待て。確かにこのままではあの闇女は消失する。じゃが……」


 女神は、静かに首を横に振った。


「黒瀬麻子を蘇らせた結果は、汝の思いどおりにはならないはずじゃぞ」

「……え?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] なんとも一筋縄では行かないほどに様々な柵がありますね。 しかし相変わらず女神はスタンスが分からないですね。 [一言] 更新お疲れ様です。ご無沙汰しておりました。 華蓮の覚悟が決まり過ぎてい…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ