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魔法少女は闇が深い  作者: アリス
魔法少女は闇が深い ~おわりの魔法少女編~
177/201

訪問者②

 ――カタン。

 すぐ後ろで、何かが動く音がした。

 ここはわたしの部屋。

 わたし以外、誰もいない。

 物音なんて、するはずがないのに……


「ひ……っ!?」


 反射的に、飛び退くように振り返る。

 視界の端で、微かに動いた影。

 その姿を見たわたしは、一瞬安堵した。


(な、なんだ……モア……?)


 白くて丸々としたぬいぐるみのような、そのフォルム……

 モアなら、鍵のかかった部屋にだって入ってこれる。

 しかし、ほっとしたのも束の間。

 すぐに息を呑んだ。

 モアじゃ――ない。

 見た目はそっくりだけど、違う。

 覚えのある、この嫌な感じ。

 こいつは……


「……!? まさか……モスト!?」

「久しいですね……華蓮殿」


 姿かたちはモアによく似ているが、口髭を蓄えたその姿……間違いない。

 わたしは一度、こいつに苦しめられている。

 地の魔法によって、真夏の部屋で動けなくされたという経験が。

 あんなひどい仕打ちを受けて、忘れるはずもない。


「随分好き放題暴れてくれたようで……女神の件、存じ上げていますよ」


 低く、圧のある渋い声。

 嫌な記憶が蘇り、すぐに炎を灯した指鉄砲を向けた。


「は、はあ? それはそもそもあんたたちが……いや、てか、今更何しに来たのよ!?」

「今更何しに……ですか。全く……貴女たちも女神も、思いどおりに動かない……本当に困ったものです」

「……? な、何言って……」


 ……ん?

 こいつ今……女神って言った?

 女神様、じゃなくて?

 ――そうだ。

 忘れかけていたけど、思い出した。

 モストって……ミラージュ事件が終わったあとも、わたしたちの前に一度姿を見せたんだった。

 あれは、半年以上前。

 突然現れて何かを言いかけたと思ったら、鏡の魔力と共にすぐに消えてしまった。

 あのときは、鏡の魔力に怯えてそれどころじゃなかったけれど……

 今ならあのとき、どんなことが起きたのか想像できる。

 京香から鏡魔法を奪った女神が、鏡の世界にモストを引き込んだ――そういうことだろう。

 でも、それって……


「あんた……ほんとに何しに来たの? 女神のことを封印したわたしたちに、復讐しに来たんじゃないの?」

「まさか。わたくしは、話をしに来たのですよ」

「いやいや……意味わかんない。出てって。あんたの話なんて、聞きたくない」

「貴女の気持ちなど聞いていません。それに……今から話す内容は、貴女も聞いておいた方がいい」

「は……?」


 モストはひらりと翻ると、勝手に机に座り語り始めた。


「順を追って話しましょう。まず……貴女たちに女神の企みを告げに赴いたあの日、わたくしは女神の手によって鏡の世界に幽閉されました」

「それは……なんとなくわかってるけど」

「わたくしがこちらの世界に戻ってきたときには、すべてが終わっていました。状況を把握するのに、時間がかかりましたよ」

「……なんで? 女神とあんたは、仲間でしょ?」

「そのはずでしたよ。ですが……あの方はわたくしを裏切った。力不足だと、掃き捨てるように……」


 モストの口調が、徐々に荒くなっていく。


「あの方に! 仕えていれば! いずれはこのわたくしがアストラルホールを牛耳っていたというのに……!」

「……あんた……そのために女神の傍に? ……そんな下心を、女神は見透かしていたんじゃないの?」


 一瞬、モストが押し黙る。

 ……図星、だろうか。

 しかしすぐに息を吐くと、モストは再び口を開いた。


「……そもそも、アストラルホールが消滅してしまっては元も子もありません。ですから、わたくしは女神の暴挙を何としても止めたかった。そのために貴女たちの力を利用しようとしましたが……その結果がこれです」


 利用って……いちいち癇に障る言い方をするやつだ。

 やっぱり、こいつのことは何があっても好きになれそうにない。


「今は女神がいなくなり、玉座は空席。わたくしにとっては、都合の良い話です。女神はもう、わたくしを用済みと考えている……そんな女神は、いない方がいいですから」

「…………最っ低」

「ですが、そうも言っていられなくなりました。女神の手掛かりが、出てきたせいで」

「女神の……手掛かり?」

「そう。ですから、わたくしはここに来たのです。貴女は『夢属性の魔法少女』について、何か知っているのではないかと思いましてね」

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― 新着の感想 ―
[良い点] モストは何と言うか清清しい程にクズですね( [一言] 更新お疲れ様です。 しかし華蓮も夢属性の魔法少女に関してハッキリと認知している訳でも無いですし、どう反応するのか・・
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