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魔法少女は闇が深い  作者: アリス
魔法少女は闇が深い ~おわりの魔法少女編~
173/201

夢の中の声

 ……静かだ。

 靄がかかったように視界が悪い。

 妙なところに立っているのに、何故だか気持ちは落ち着いている。

 うん……そうだ。

 直感でわかる。

 これ……夢だ。

 夢の中で、これは夢だと自覚するのは難しい。

 けれどどうしてか、今ははっきりとわかる。

 わたしは今、夢を見ている。


『……もう、ここに来てはだめ』


 ……誰だろう。

 誰かの声がする。


『この世界……は……もうすぐ無くなる』


 ……?

 なに?

 声が途切れて、聞こえづらい。

 けれど、何かを言っていることはわかる。


『あなたには辛い思いさせちゃうけれど……ごめんね』


 ……何を言ってるの?

 わたしに向かって言ってるの?

 だとしたら……どうして謝るの?


(でも、この声……麻子の声に聞こえる……ような……)



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「華蓮……華蓮ってば!」


 …………ん?

 すぐそばで、わたしの名前を呼ぶ声が聞こえる。

 あれ?

 わたし、何してたんだっけ。

 それに、この声って……


「……う……麻子?」

「よかった……! 大丈夫!?」


 目を覚まし、辺りを見回す。

 ……自分の部屋じゃない。

 そうだった。

 わたし、バイトに来てたんだった。

 それで、着ぐるみ姿で会場に出て……

 終わって、ここに戻ってきて……

 ……ああ。

 ようやく、自分がどうしてこんなところに倒れているのか思い出した。


「……何分寝てた?」

「えっと……2、3分ってとこ」

「なんだ、それだけ……?」

「とにかく水! 水飲んで」


 麻子から、強引に水の入ったボトルを渡される。

 いつの間にか、着ぐるみも脱がされていた。

 ゴンザレス三世の残骸が、無残にも部屋の隅に転がっている。


「華蓮、急に倒れるんだもの。安物の着ぐるみ着るのは自殺行為ね……」


 麻子が、タオルと氷水の入った袋を持ってきてくれた。

 着ぐるみのまま一時間ほど過ごしたわたしは、バテでダウンしてしまったらしい。

 早起きして睡眠時間が短かったこともあり、身体が疲れていたのかもしれない。


「麻子……ずっとここにいたの?」

「いたよ、当たり前でしょ」

「だからか……どおりで夢にまで麻子の声が……」

「え……華蓮、それって……」

「……なに?」

「絶対わたしのこと好きじゃん」

「……あのねえ……」

「冗談は置いといて。ほんとに大丈夫? 気分、悪くない?」

「平気。ちょっと寝落ちしただけって感じよ」


 麻子から貰った水を飲もうと、上を向いた瞬間。

 目に溜まった涙が溢れ、頬を伝った。


「あ、あれ? 華蓮、泣いてる……?」

「え……あ」


 しまった。

 まただ。

 いつものことで、油断していた。


「な、なんでだろ。わかんない」


 麻子から受け取ったタオルで、ごしごしと顔を拭く。


「……ほんとに大丈夫? タクシー呼ぼうか?」

「だ、大丈夫。全然平気。麻子はまだやることあるんでしょ。わたしはひとりで大丈夫だから」


 泣いた顔を見られるのが恥ずかしくて、つい早口になってしまう。

 もう、なんでこんなときまで……

 ほんの短い時間だったのに、また変な夢を見てしまった。

 内容は覚えていないけれど、いつもより声がはっきり聞こえた気がする。

 眠りが浅かったせいだろうか?

 でも、よりによって麻子の声で再生されるなんて……

 気持ちを振り払うように水を一気に飲み干し、空になったボトルを麻子に突き返した。


「げほ! げほ……! と……とにかく大丈夫。水、ありがと」

「まー華蓮がそう言うなら……でも、無理しちゃだめだからね?」

「わかってる。ここは涼しいし……少し休んでるわ」

「そだね。あ、それと……ひとりにはならないから、安心していいよ」

「え?」

「もうすぐ来るって。芽衣ちゃんが」

「……芽衣が?」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 熱中症が軽度そうで何より・・ [気になる点] どこの世界が崩壊するのか、それと声の主は誰なのか・・まだまだ先が流そう。 [一言] 更新お疲れ様です。 芽衣ちゃんが来るという事はイベントは…
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