プロローグ
最近、夢を見る。
でも、内容はよく覚えていない。
脳の神経は、夢の記憶を残りにくくしていると聞いたことがある。
もし、毎日夢の内容を鮮明に覚えていたら、脳も混乱してしまうだろう。
だから、忘れるのは自然なことだろうけど……何だか、悪い夢を見ている気がする。
目が覚めると、頬を涙が伝っているのだ。
前には、予知夢のような不思議な夢を見たこともあるし……もしかしたら、何か意味があるのではと思ってしまう。
わたしは魔法少女だから、尚更だ。
……魔法少女。
つい最近、女神の事件でその数は大きく減った。
今でも魔法が使える魔法少女は、たぶん数えるほどしかいない。
まずはこのわたし、樋本華蓮。
天才的な魔法使いである、炎の魔法少女。
……いや、己惚れじゃなくて。本当にそう。
頭脳面だけじゃない。
魔法の扱いに関しても、右に出る者はいない。
……魔力の強さだけで右に出る者はいるけど……まあ、それは置いといて。
それから、妹の樋本華奏。
この子は光の魔法少女。
闇の魔王に対抗し得る珍しい属性を持つが、身体が弱く、闘いには不向き。
わたしが守ってあげないと。
そして、三人目……闇の魔法少女、黒瀬麻子。
わたしのことをからかうような言動はいただけないが、なんだかんだで頼りになる。
でも変態。
おまけに、今じゃ女神を消した史上最悪の魔王とまで呼ばれている。
当の本人は、あまり気にしていないようだが……内心どうなのやら。
共に闘った源芽衣と白雪羽衣は、その女神に魔力を奪われて、今は魔法が使えない。
ミラージュの紅京香や、安曇瑠奈も同様。
他の残党だって同じだろう。
女神の行方が分からない今、周りで魔法が使えるのはこの三人だけということだ。
これまでは、どういうわけか魔法少女同士の争いが絶えなかったけど……それももうおしまい。
わたしが麻子と闘うなんてあり得ないし、妹は言わずもがな。
ようやく平穏な日々が訪れた……とは言い切れないけど、少なくとも今は平穏だ。
今優先すべきは、新しい生活に馴染むこと。
わたしは大学に進学して、一人暮らしを始めている。
周りの環境もがらりと変わり、ついていくので精一杯。
魔法少女なんて、している場合ではない。
でも、平気。
今のわたしはひとりじゃない。
だから大丈夫。
そう、麻子が急に、いなくなったりでもしない限り。
「魔法少女は闇が深い」、第四部を開始しました!
今回は再び、華蓮視点でのお話となります。
第四部は、これまでの総まとめになる予定です。
第三部の終盤で起きていたことは何だったのか、女神はどこに行ったのか……
全てを書く予定ですので、最後まで見守っていただけると幸いです。
「夢」がテーマの第四部、どうぞよろしくお願いします!




