表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女は闇が深い  作者: アリス
魔法少女は闇が深い ~女神編~
159/201

麻子&華蓮VS女神

「ふーっ……」


 大きなため息とともに、女神の訝しむような視線がわたしたちに向けられた。

 女神はもう、苛立ちを隠そうともしない。

 その小さな身体から、黒い魔力が溢れている。

 女神にとって、華蓮は予定外のイレギュラーな存在。

 そんな華蓮が、女神の目論見を阻害しようとしている。

 女神城に呼ぶことすらしなかった魔法少女が、目の上の瘤になっている……女神にとって、面白くないだろう。


「何故じゃ……? ようやく終われると思った矢先に……」

「終われる……? 何言ってんのよ?」


 女神の言葉に応えつつも、華蓮はわたしの隣で指を動かしながら魔力の感触を確かめていた。

 まるで、間合いでも測るように。


「……汝に話しても無駄な話じゃ」

「無駄?」

「全く……何のために人払いをし、この状況を作り上げたと……」


 目を閉じて苦悶の表情を浮かべる女神に対し、華蓮は突然人差し指を向けた。


「そうやって人を舐めてるから……こういうことになるのよ!」


 バン――と乾いた銃声が響いた。

 あまりに急にぶっ放すものだから、すぐ隣にいたわたしですら反応が遅れた。

 ほぼ不意打ち。

 女神も、いきなり指拳銃で撃たれるとは思っていなかっただろう。

 これにはさすがの女神も反応できなかったはず……

 そう思った。

 しかし、女神は微かに俯いて、目を閉じたまま動かない。

 動く必要が、なかったのだ。


「……!?」


 炎の弾丸が、女神に届く前に弾け飛んだ。

 まるで目に見えない壁に阻まれたかのように、弾丸が凍り付いて散っていく。


(あれって……羽衣姉がやっていたのと同じ……!)


「……思いあがるなよ。取るに足らぬ相手なら……何の問題もないんじゃぞ?」


 ゆっくり顔を上げた女神が、華蓮を睨む。

 その表情は、苦悶から憤怒へと変わっていた。


「やはり汝では力不足じゃな……この程度の魔力、意識せずとも防げてしまう」

「あー……こうなるのね。ほんと、わたしの周りは化け物しかいないんだから」


 苦笑する華蓮。

 やっぱり、羽衣姉の氷魔法は別格……

 華蓮の言うとおり、力を併せないとどうにもならない。


「華蓮……といったか。汝はここにいても巻き込まれるだけじゃ。向こうに戻って、この世界のことは忘れるがいい」

「ここまで好き勝手しておいてよく言うわよ。……わたしはよくても、麻子は違うんでしょ?」

「…………」


 女神は否定しなかった。

 それはもう、肯定しているも同じである。


「……イエスってことね。やっぱりやり合うしかな……ぶえ!?」


 華蓮が首を絞められたような声をあげる。

 これはわたしの仕業。

 臨戦態勢に入ろうとする華蓮の襟を、思いっ切り引っ張ったせいだ。


「な、何すんのよいいところなのに……」

「華蓮、張り切りすぎ。救世主ポジションで高まってるでしょ」

「はあ!? そ、そんなことないし……」


 そんなことある。

 華蓮の部屋には、バトルものの少年漫画が多かった。

 その漫画のような状況に、華蓮のテンションもいつもより高い。

 確かに駆けつけてきた華蓮はかっこよかったけど……そのやる気が空回っては意味がない。

 だったら、この状況でわたしがするべきことは……


「と、とにかくその手を放しなさいよ。まさか、手を引けって言うんじゃないでしょうね」


 そう言って暴れる華蓮の頭に、そっと手を置く。


「……いや、その逆」

「……へ?」

「好きにしていいよ。こっちが合わせる」


 わたしの言葉が意外だったのか、華蓮が目を丸くした。


「……大丈夫なの?」

「もちろん」


 この状況でわたしがするべきことは、華蓮の暴走を止めること……そうかもしれない。

 でも、わたしはその選択を取らなかった。

 その選択には、何の根拠もない。

 でも、さっきの夢でも見ていたかのような妙な感覚。

 あの感覚が、わたしの不安を掻き立てる。

 そんなときに華蓮が来てくれたのは、きっと偶然じゃない。


「じゃ、思いっきりやるけど……」


 華蓮は一度口を閉じると、上を指さして言った。


「わたしが考えてること……わかる?」


 そう言って笑った華蓮を見て、わたしも思わず笑った。


「……察しはついてる」

「おっけー。全く……やっぱり最後はこうなるんだから」

「……そうね。じゃ、今回も大丈夫ってことかな」


 頷いて、気持ちを集中させる。

 もうこれで、三度目だ。

 こういう局面で、華蓮と一緒に魔法少女との戦いに臨むのは。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 華蓮が遅れてやってくるヒーローに憧れているのが可愛い。 それと殺意マシマシの不意打ち射撃とはガンマンにでもなるつもりなのですかね?w あと麻子が華蓮に母性?を発揮しているのが微笑ましい・・…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ