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魔法少女は闇が深い  作者: アリス
魔法少女は闇が深い ~女神編~
156/201

BAD END……?

「……は? わたしが……?」


 突拍子もない話に、思わず間抜けな声が出る。

 そんなこと、わたしがするはずがない。

 もとより――できるはずもない。


「なにを訳の分からないことを……現に、わたしは京香に勝ったけどそんなこと……」

「いいや。逆じゃよ」

「……逆?」

「もし、あのとき鏡の魔法少女が勝っていた場合……源芽衣は死んでいた。そうなれば汝が怒り狂い、汝の中に眠る闇魔法が暴走すると踏んだのじゃ」

「……!?」


 気持ちがざわつく。

 それと同時に、身体に纏っていた闇が色濃くなっていく。

 同じだ。

 ここに来て、女神と対峙したときと同じ。

 いつもよりも、闇魔法が強まっている。

 そのせいか、わたしの中の『何か』が、靄がかかったように見えなくなっていく。


(なに、これ……? やっぱりこれ……気のせいなんかじゃない……!)


「魔王の力では足りぬのじゃよ。世界を丸ごと闇に沈めることなど……魔王にもできやしない。しかし、汝は違う」


 そう言いながら、女神がゆっくり近付いてくる。

 わたしの足は、それに歩幅を合わせるかのように後退っていく。


「完全なる闇に包まれる世界の行く末は、『無』じゃ。汝なら……それができてしまう」

「……何を根拠に、そんな……」

「闇は、人の心を蝕む。汝も、闇魔法の神髄に気付き始めているのではないか?」

「…………」

「世を恨み、人を恨み……世界を滅する。望んだことがあるのではないか?」

「…………」



『キミは何かかなえたい願いがあるぽん?』

『わたし? わたしは……この世界からリア充を滅する』

『は?』

『そうだね、まずは恋人がいる人全員。それからお金持ち。あと、なんか生活が充実している人……毎日を楽しんでいる人。あ、もういっそ大学生全員とか!』

『……を、滅するのが願い?』

『うん』



「……はは。あんなのは、冗談で……」


 いや……違う。

 全く心に無いことを言ったわけじゃない。

 あのときのわたしは、あれをまるっきりの冗談だなんて思っていない。

 芽衣や華蓮と出会って、いつの間にか心に蓋をしていただけ。

 だって、交通事故に遭う前のわたしは……

 本当のわたしは……


「……っ」


 ズキ、と胸が痛む。

 もう心の奥底に閉まっていたと思っていた、暗い闇。

 それが呼び覚まされるどころか、拡がっていく嫌な感覚。

 得体の知れないどす黒い魔力に、侵されているような……

 いや……得体の知れない、ではない。

 この魔力には、覚えがある。

 これは、芽衣の……正確には、魔王の魔力……


(まさかこれって……魔王の影響? もしかして……芽衣ちゃんも女神も……あんな突飛な行動に走ったのって、まさか……)


 少しずつ、考えるのが億劫になってくる。


(魔王の魔力って……そういう、こと……?)


 心の一部がぼやけて、自制が利かなくなってくる。

 お酒に酔ったときって、こういう感じなのだろうか。

 わからないけれど、落ち着かない。


(そうだ……別に終わったって……)


 気持ちが乱されて、理性が追い付かない。

 脳が、思考を放棄しようとしている。


(いや、むしろもう……だって、わたしもそれを望んでいたはずで……)


「闇属性である汝は、『おわりの魔法少女』。わしが汝を操ったり、汝の魔力を奪っても……その力を引き出すことなどできやしない。滅するのはわしじゃない。汝なんじゃ」


 そう言った女神の足元が、白く光っていた。

 パキパキと音を立てながら、地面が少しずつ凍りついていく。

 その範囲が、徐々に、徐々に拡がっていく。


「凍れ……何もかも」


 このままだと、わたし自身も凍り付く。

 そうならないためには、闇魔法で防ぐしかない。

 でも、この羽衣姉の氷魔法に対抗し得るほどの闇魔法を使ったら、わたしは――


「これで終いじゃ……黒瀬麻子。……すまんな」


 わたしは、目を閉じた。

 瞼に浮かんだのは、すべてが凍った世界。

 海も山も、建物も。

 神樹でさえも、凍っている。

 何もかもが凍てついた氷の世界が、ゆっくり暗闇に呑まれていく。

 この美しい世界が、闇に沈む。


 わたしの戦いは――終わった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 確かに浪人時代は振り切れたのか結構大雑把な雰囲気の麻子でしたけど、それ以前は確かに情報なしでしたか・・メイルとの出会いは浪人後でしたね・・ [気になる点] 最後の部分がどういう状況なのか想…
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